14話「紡がれぬ想い」
天運の檻・14話になります!
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私にはかつて妻と息子がいた。
医師として毎晩、多忙な日々を送る私にも二人は変わらず愛し、誇りに思ってくれていた。
私も医者の前に家族の一人だ。
夫として家庭を支え、父として家族を守る義務があった。
そのためであれば全てを投げうってでも自分の責務を全うする。
―そのはずだった。
ある日、息子が病を患った。
病は重く、瞬く間に息子を衰弱させていった。
私は息子を救うべくあらゆる治療法を試してきた。
だが、その甲斐も虚しく息子は他界した。
深い悲しみに暮れた。
だが、それは妻も同じ。
そして私は医者だ。
息子と同じことが繰り返されぬよう私と妻は同じ病を患う者を救うために奮闘した。
症例は極わずか、そして治療法も確立されていない病だ。
他の病やケガであれば全てこの手で救えてきた。
だがそれではダメなんだ。
あの日、息子を失った時ほど自分の無力さを呪った日はない。
だからどんなに時間をかけてでも救うと決めた。
それから何年経っただろう。
絶え間ない時間を費やして、ついに私はその病に対する治療法を確立したのだ。
これで息子と同じ病を患った者を救うことができる。
そんな希望が芽生えた矢先、一本の電話が私のもとへ寄せられる。
―堺先生、今すぐ病院へ来ていただけませんか?実は…先日、奥さんの診断を行ったところ…息子さんと同じ…―
外が嵐に見舞われる中、急いで車を走らせた。
妻にも息子と同じ病が発症したのだ。
だが、私には治療薬がある。
妻を救うことができる。
二度と妻に苦しい思いをさせることはない。
しかし―
―出来事はいつも突然降りかかる―
大雨による洪水。
それに伴い発生した土砂崩れ。
土砂は車ごと私を飲み込んだ。
気が付いた頃には大破した車から放り投げだされていた。
両足と両目の感覚がない。
あるのは上半身に感じる激しい痛み、そしてあたりから聞こえてくる激しい雨音。
医者であるが故に自分の状態は誰よりも理解できていた。
―助からないと。
妻のもとへ向かう矢先にこの有り様。
無念と悔しさが残る中、意識が徐々に薄れていく。
そんなとき、何者かの足音が聞こえてくる。。
「まさかまだ生きているとは。…運の悪い男だ。」
男はそう口にした。
すでに意識も混濁し、動くこともできない。
そんな私が最後に振り絞って口にした言葉は…
「救わなきゃ…いけない……人が…いる……」
私は妻を救わなければならない。
ここで私が命を落とせば、妻の治療はできない。
それは妻の死を意味してしまう。
すると男は私の腕に何かを施した。
何かはわからないが、身体中に異変が起こる。
男は”救いたければ自分で救うといい”とだけ言い残し去っていった。
そこで私の意識は途切れた。
目が覚めた時、私は事故で潰れたはずの両目と両足が癒えていることに気が付く。
だが、自分のことよりも大事なことが私にはあった。
私は急いで妻のいる病院へ向かった。
無我夢中で院内を駆け、妻のいる部屋へ。
だが到着した頃には、妻はすでに息を引き取っていた。
気がつけば日はすでに電話があったあの日から数日経過していた。
そしてガラスに映った自分の姿を見た時、私はようやく自分の身に起きたことを完全に理解したのだ。
白黒反転した瞳、自在に動かせる骨格、人の肉を引き裂くことなど容易なほどみなぎる力。
話に聞くこれが―
「無人…なのか…?」
そう。私は妻を救うためその身を捧げ、怪物へとなったのだ。
だが、妻は助からなかった。
医者として命を救う道を選んだ私でも、最愛の家族すらも救うことができなかったのだ。
妻を抱きしめながら、後悔の念、そして悔しさが溢れ涙を零す。
「それが……私が救えなかった者たちだ。」
堺が歩に向かって言う。
歩は堺の過去を聞いて言葉にならない哀しみの表情を浮かべる。
「わかったか?君が奪おうといている者にも、君と同じ悲しみを背負う者がいるということを。」
歩は堺の過去を聞き、言葉を失った。
胸に重くのしかかる悲しみの余韻が、まるで手で押さえつけられるように広がる。
「…何が…言いたいんだ。」
堺の瞳が、静かに歩を射抜く。
「言っただろう。私は君を救いたいのだと。
君は私と同じだ。他者を救うためにその身を捧げ、執行隊にいるのだろう。」
歩は小さくうなずく。
胸の奥で、堺の言葉が痛みとして響く。
「だが、どうする? 他者を救うと決めた矢先、己の大切なものがその手から零れ落ちたら。」
その問いに、歩の心臓が跳ねる。
目の前に浮かぶのは、良奨、明、蒼、未紗。もしも彼らを守れなかったら――そんな恐怖に、思わず息が詰まる。
「……そんなの……わからない……」
歩の声は震え、視線は床に落ちる。
堺は歩の姿を見据え、かつて人間であった自分の弱さを重ねるように、僅かに顔を曇らせる。
「私は…妻を、息子を救えなかった。
君に同じ思いをさせたくはない…。だが…君なら選べる。」
歩の目に、迷いの色と決意の芽が交錯する。堺は、静かに深く息を吐く。
「これから先、君に待ち受けるのは…人間と無人、その両者による命の奪い合いだ。
奪われる命をゼロにすることは不可能だろう。だが…少なくすることはできる。」
言葉に詰まり、堺の視線は一瞬遠くを見つめる。
そして歩に向かい、口にする。
「……執行隊を辞めるんだ。」
歩は息を呑む。
衝撃と困惑、そして心の奥に静かに芽生える何か。
これは敵の情けか?
それとも、自分がまだ相手に値しないからか?
否―堺の声には、確かな重みと真実があった。
救えなかったときの失望は誰よりも知っている。
かといって目の前にいる少年の命を奪う選択よりも堺は救うことを考えていた。
それが歩に執行隊としての道を諦めさせること。
「悪いが私も無人だ。同胞を失う選択はとれない。
君が私の話を聞いてもなお、抗い続けるなら……君にはここで死んでもらう。」
堺は糸で槍を形成する。
そして歩の胸に狙いを定めながら歩の問いを待つ。
そのときだった。
―死なねぇよ。―
背後から聞こえる声。
振り返るとそこには明が立っていた。
明のシャツには血痕が付着していた。
それを見た堺は明と対峙していた少女無人に何が起きたのかを察した。
「…”早音”はどうした。」
「あ?あのガキの無人か?…ご想像に任せるぜ。」
「……そうか。」
堺は静かに殺気を放つ。
そして指先から血を流しながら糸を生成する。
その糸は血を纏いまるで赤い糸となり周囲に展開される。
―異術・血染糸!!―
凄まじい殺気を放つ堺を見て歩は、堺が本気の異術を発動したと震撼する。
堺の殺気に応じて明も戦闘態勢に入り、流源を開放する。
両者による凄まじい戦闘が行われる。
明は堺の先ほど以上の硬度をほこる糸を回避と流源を纏った刀で受け流しながら立ち回る。
そして堺の攻撃の隙を見計らい、両腕を切り刻む。
「明さん…!…待ってください…!!」
歩が明を呼び止める。
明の刃が堺の命に届きそうなことが怖かったのだ。
すでに歩は理解している。
堺がただの凶悪で人を喰らうため怪物なのではないと。
考えることは同じ。
ただ立場が人か無人かだけ。
命を奪いたくないという堺が歩に向けた気持ち。
それは歩も堺に対して同様の気持ちを抱いていたのだ。
だが、明は歩の声に応じずに戦闘を繰り広げる。
堺も勢いを抑えることなく明に襲い掛かる。
―血染糸・憎愚槍!!―
血染糸が槍状に変形し、広範囲に放たれる。
その槍の数と速度は先ほど診療室で相まみえた時とは比べものならないほどだ。
明は自身に直撃する限界まで堺の攻撃を引き付ける。
そして全ての攻撃が自身に襲い掛かろうとしたとき―
―龍河一刀流・蛸蒼渦連刃!―
斬撃を四方八方に放ち、迫りくる攻撃全てを弾き落とす。
予測困難な動きをつくり、堺に接近する明。
その動きに翻弄され全身を切り刻まれていく堺。
距離をとり無人の再生によって傷を癒していく。
歩はそんな堺の様子を背後から見つめる。
歩の脳裏には先ほど堺が口にした問いがよぎる。
―だが、どうする? 他者を救うと決めた矢先、己の大切なものがその手から零れ落ちたら。―
もしかしたら、答えが見つからない自分に人を救うことなど大層なことはしてはいけないのかもしれない。
そう思い始める歩。
そんな歩が思い出したのは、かつて自分が国衛局員の一人だった頃、無人に襲われ命を落としていった友人たちだった。
自分によって大切な存在だった。
だが、救いたくても救えなかった。
そんなとき、自分はどうしたか?
「俺は―」
歩は意を決した表情を見せる。
明と堺の闘いは互いに勢い衰えることなく続いていく。
堺は傷を再生させながら明の驚異的な戦闘能力に驚きを隠せないでいた。
無人である自分と対等に渡り合うだけでなく、体力の消耗すら感じさせない。
おまけに明自身は傷を一切負っていないのだ。
そう、自分が放った攻撃は全て明に届いていなかった。
底の知れない明を前に僅かだが、焦りを見せる堺。
堺が明から距離を取り、掌に力を込める。
すると大量の血染糸が大きな渦のような形となり、掌に圧縮されていく。
「!!!」
それを見た明が表情を変える。
そして急加速して堺のもとへ走る。
堺がこれから放つ技の脅威を察したのだ。
―血染糸・憎愚夜!!!―
圧縮された糸が堺の前方一帯に広がり、絶え間ない血染糸が浴びせられる。
その血染糸は硬くも糸の如くしなやかに動き周囲の物体を切り刻んでいく。
明は迫りくる無数の攻撃に対し、自身の流源を全身に纏いだし構える。
―術式発散・最大出力――
その時だった。
突如、背後から胸を貫かれる堺。
それと同時に放った攻撃も勢いが衰えはじめる。
血を吐きながら堺が振り向いた先には―
「き…み……か…」
歩が刀で堺を貫いたのだった。
刀を堺の身体から抜く歩。
堺はうまく傷を再生できないことから、自分の核を損傷したことに気が付く。
「なぜ…核の位置が…」
「狙ってやったんじゃない…俺の術式です。」
歩は術式によって運が高まった状態だった。
それも拘束された時から術式を発動し続けていたのだ。
運は自分の起こす行動によって消費される。
だが歩は今この瞬間まで拘束されていた影響で運を一度たりとも消費していなかった。
そのために最大限に運を貯めた状態で堺に攻撃することができたのだ。
「俺の能力は…運を味方につけられるんです。」
「なるほど…」
力なくその場に倒れる堺。
堺は歩の表情、そして迷いのない攻撃から先ほど自分が尋ねた問いの答えが出たのだと悟る。
「それで…君の答えを…聞こうか。」
歩は静かに倒れる堺を見つめる。
そして自分の答えを口にする。
「俺は…大切なものを”守る”ために闘う。」
救うためじゃなく、守るために闘う。
それが歩の答えだった。
全ての命を救う。
それは途方もなく苦しい道のり。
救いは誰しもが求める。
だが、全ての者に手を差し伸べることは不可能だ。
仮に多くの者を救えても自分が本当に愛する者を失う危険が伴う。
堺がそうであったように。
多くを救えなくてもいい。
救えない命に心を裂かれるより、今自分の手が届く場所にいる大切な者を守り抜く。
そのために闘う。
そう歩は決めたのだ。
歩の答えを聞き、堺はかつて妻を救えず涙を流したあの日のことを思い出す。
なぜ、自分が本当に救いたいものはこの手から零れ落ちるのか。
なぜ、自分が望む方向へと進んでくれないのか。
そんな想いを心に抱えながらも身体に抱える本能が己を動かしていく。
涙を流し、冷たくなった妻の身体を抱きながら、喉元を食らいつく自分。
妻の血肉が身体に流れ込み、己の身体に宿った異能。
自分が犯した罪を贖うべく救うことに徹してきた日々。
そんな長きにわたる時を経て、堺の前に立った少年が口にした答え。
それらが堺の瞳に涙を溢れさせる。
「そうか……私は……”救い”という言葉にすがり続けていたのだな…」
医者でありながら息子を死なせたこと。
治療法を確立させながらも妻を救えなかったこと。
無人となり本能のまま妻を喰らったこと。
過去を”救い”という言葉で誤魔化し続けたこと。
そして―
己の過ちに耐え切れず、神に救いを求めたこと。
堺は瀕死の身体を起こし、部屋の奥へと歩きだす。
その様子を見た明が一瞬刀を構えるも、歩が制止する。
すでに堺は己の再生を止めていた。
それを見た歩は堺がすでに自分の身を諦めていることに気が付いたのだ。
部屋の奥にある机から”あるもの”を歩に投げ渡す堺。
「そこに……少ないが…我々の…情報が記してある……」
「これは……無影衆の…!!」
堺から投げ渡された紙には無影衆の構成員についての情報が記されていた。
そして堺は机に置かれた妻と息子の写真を見つめ、かつての家族との記憶を思い出しほほ笑む。
堺に背を向かれた歩たちにはその表情はわからない。
だが机に落ちる一滴の涙を歩たちは見逃さなかった。
すると歩の身体に糸が集まりだす。
堺の異術で生成した糸だ。
その糸で歩が負った傷を抱合する堺。
「ありがとう…堺。」
歩が堺に礼を述べる。
堺は無言で礼を受け取る。
だがその表情は最初に遭った頃とちがい、穏やかな表情へと変わっていた。
歩は堺をこれ以上苦しめないよう刀を握り、執行をやり遂げようとするが―
「グッ…!!」
堺は己の胸を貫く。
そして胸から核を取り出す。
すでに核は損傷していたが、その核を堺は自ら破壊した。
歩は机の前で倒れる堺を見て驚く。
「君のおかげで……救われ…たんだ……そんな…君に…命を…奪わせる……ような真似は……させない…さ…」
激しく血を吐き、身体の崩壊が始まる堺。
これまで不運にも最愛の者を救えずに絶望に打ちひしがれた堺。
そんな堺が歩と出会い、救われたのだ。
歩は堺を静かに見守る。
堺と出会い自分が心に決めたことを胸に刻む歩。
「君の……名を……聞いていなかったな……」
それを聞いて歩は笑顔で答える。
「瑞野 歩だ。」
堺は自分を救ってくれた者の名を聞いて穏やかにほほ笑む。
明は静かに刀を鞘に納め、堺のもとへ向かう。
そして堺の前に立つと堺の目線に合わせ、肩に手を置く。
「さっきのガキの無人だが、安心しろ。生きてる、動けなくしているだけだ。」
「そうか…。……ありが…とう…」
そして最後に消えかかる身体の中、明そして歩を見て堺が安堵した表情を浮かべる。
「…君らと……出会えて…私は……”幸運”……だ……」
塵となる堺。
明は「俺らもだ」と言い、立ち上がる。
「よかったんですか、無人化のこと聞かなくて。」
歩が明に尋ねる。
明は過去に同期を無人化させた張本人である無人を探している。
その手掛かりになると思い無影衆を追い求めた。
だが―
「堺は俺が追う無人じゃなかった。…”アイツ”とは違う無人化の方法を試したんだろうな。」
明が堺の机にある資料などに目を移しながら口にする。
そこにはあらゆる患者の病気に関する資料ばかりだった。
堺は一貫して救たかったのだ。
無人化はそのための一つの手段にすぎなかったのだろう。
「俺が追う奴は、人を実験か何かの道具としか思っていないような無人だ。…堺と違ってな。」
闘いを終えた二人は堺の机から他の資料を読み漁ったが、特に無影衆の手がかりになるようなものは見つからなかった。
だが、その資料に”無人が人を喰らわなくても生き延びる方法”を探っていたことが判明した。
二人は堺の人間性を噛みしめる。
地下施設を出ようとする二人だが、出口で立ち止まる明。
「どうかしました?明さん。」
「あぁ、先に行っててくれ。地上で国衛局の奴らに事情を伝えておいてくれ。」
そう言って歩が階段を上がるのを確認する明。
明は先ほど堺と闘う前に対峙した少女無人のもとへ向かう。
少女無人は両手足を拘束された状態で部屋の隅にいた。
明はその少女無人を見て先ほど堺が口にした彼女の名を思い出す。
「お前、早音って言うのか?」
静かに睨みつける早音。
明は拘束を解く。
その行動に驚いた表情を見せる早音無人。
「どうして……」
「殺意のねぇ敵は見ればわかる。…その身体、アイツに治してもらったんだろ?」
明は早音との戦闘で彼女が堺を慕う気持ちを察していた。
堺がどんな無人だったか知った今、明はこの少女もまた堺によって”救われた”者の一人であると理解したのだ。
そう、早音はかつて堺の息子や妻が患った病を発症していたのだ。
堺はかつて人間の頃に確立させた治療法を試し、早音は治療したのだ。
だが、身体が病弱な早音はその後もあらゆる重い病にかかり続けた。
そして堺は早音本人の了承を得て、無人化を行ったのだった。
「アイツが救った命は奪う気になれねぇ。」
早音を背に口にする明。
早音は明が堺のもとへ向かったことを知ると明に尋ねる。
「先生は…?」
「……。」
無言を貫く明に早音は堺の最期を悟り涙を流す。
そんな早音の涙を拭きとる明。
「…お前は生きろ。生きて、堺が救ってくれたその命を無駄にすんな。」
そう言って明は早音を無理やりにでも立ち上がらせる。
早音は無言でうなずく。
堺が救ってくれたこの命、無駄にすればそれこそ堺のこれまでの行為を否定することになる。
だからこそ、生きなければならない。
泣き止んだ早音を見た明の表情が僅かに緩む。
―突如、空気が凍り付く。
部屋の通路から流れ込む風が早音を襲う。
その風とともに黒い人影が早音に刃を向ける。
だが、刃は早音の首を斬りつける前に明によって阻まれる。
早音が自身に刃を向けた人物を見る。
前髪を下ろした黒髪に見え隠れする光の消えた瞳、そして着崩したスーツを身にまとった細身の男性。
その男は無表情ながらも殺意を放ち続けながら明を見る。
「藤白露、邪魔をするな。」
「それはこっちのセリフっスよ。
コイツに生きろって言った俺の邪魔をするんっスか、悪木さん。」
危険等級B
悪木 桂士(29歳)
「それは無人だぞ。お前、無人を助けると言うのか?」
「事情があるんっスよ。刀をしまってくれれば話を―」
「必要ない。」
悪木がきっぱりと発言し、静かに手を横に伸ばす。
すると悪木の影が揺らめき始めた。
「藤白露、”俺たち”は無人を執行するためにきたんじゃない。」
悪木の発言を聞いて明が疑問を抱く。
だが、悪木が術式を発動し始めたことで明の刀を握る力が自然と強まる。
悪木の術式は”影”。
自身の影を操作することができる。
操作した影は一定時間実体化し状況に応じてあらゆる形へと変形ができる。
悪木は影を刃の形に変える。
そして両手に刀と影の刃を持ち、明に向かって冷たい口調で言い放つ。
「これより藤白露 明、瑞野 歩を”国家機密情報の虚偽拡散罪”として執行する。」




