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天運の檻  作者: じょじょ
第4章・無影衆編-生死廻廊

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12/19

12話「無影衆」

天運の檻・12話になります!


リアクション、コメントなどくれたら嬉しいです!

危険等級認定審議。

国内で確認された術式発現者には速やかに危険等級が設けられる。

危険等級は血液採取による精密検査を除けば、国衛局が開発した等級検知器を用いておおよその危険等級が予測できる。

しかし、血液検査や等級検知器を用いても最終的な危険等級を登録するのは国衛局本部での審議が必須となる。

そこで開かれるのが、危険等級認定審議だ。

国衛局本部の会議場に集う国衛局上層部。

円卓状の席に次々と座る国衛局上層部たち。


「これより、瑞野みずの あゆむの危険等級認定審議を行う。」


その中心にいる他の上層部と比べると若い容姿、そして穏やかな風貌をした男性が口にする。


国衛局長官

有瀬ありせ 朧一ろういち(43)


他の上層部が一斉に口を閉じる。

有瀬は報告書を読み上げ、今回の無人執行任務について他の上層部と共有する。

報告書の内容を読み終えると、上層部の一人が発言する。


「運を高める術式か、その効果は触れた対象にも適応可能なのですか?」


国衛局・機密管理部局長

獅壕院ししごういん 晋之助しんのすけ(62)


術式は血縁に関係なく多種多様な能力を持つ。

だが術式にもいくつか共通点が存在していた。

それは”自身あるいは触れた対象、もしくはその両方にしか効果を適用できない”ということ。

米里よねさと 未紗みさの未来視や亜里子ありね かすみの分身は、自分を対象とした術式であり、逆に龍河岡りゅうがおか しょうの劣化は触れた対象のみ適応可能な術式だ。

術式の効果、そしてその効果が自身や触れた対象にも適応可能かどうかで術式の脅威は大きく変化する。

晋之助の問いに有瀬が報告書に目を移しながら答える。


「報告には触れての術式発動は”確認”されていないみたいだ。あくまで確認されていないだけだがね。」


「仮に触れた味方の運も高めることが可能なら、かなり強力な術式ですね。」


「そんな術式があってたまるか!」


声を大にして発言する裕福な体型をした人物。

その人物の声が会議場に響き渡る。


「どうする、その者が徒党を組み我ら国衛局に歯向かってきた場合、運を味方につけた術式発現者の軍勢が押し寄せるぞ!」


国衛局・中央統制部局長

勝倉かつくら 陸也りくや(67)


勝倉の発言に周囲の上層部を賛同の声が徐々に広がっていく。

すると有瀬に発言の申し出をすべく挙手する人物。

国衛局指定の黒スーツを上品に着こなした品性漂わせる人物であった。


「勝倉局長、瑞野は元々私の部署にいた。

 仮に術式が触れた対象に適応可能だとしても、そのような事態になることは考えにくいと思います。」


国衛局・公安管理部局長

鳳焔寺ほうえんじ すすむ(55)


邁は冷静に口にする。

だが、勝倉は邁の発言を聞くと挑発的な態度を出し始めた。


「少しばかり執行隊に甘いんじゃないか?鳳焔寺局長。

 ご子息が犯した罪に対する贖罪しょくざいのつもりかな?」


「聞くところによると、ご子息は日本最悪の術式発現者集団”国略こくりゃく”にいるとか。」


国衛局・中央統制部支部局長

柳黒やなぐろ とたる


勝倉に続けて発言する薄ら笑いを浮かべた男性。

柳黒の発言を機に周囲の上層部も邁に反発的な意見が飛び交い始める。

そんな中で無言を貫く邁。

すると有瀬が口を開く。


「少し…話が逸れてしまったね。話を戻すとしようか。」


再び歩の危険等級認定の話題に戻す有瀬。

上層部の中では危険等級Aとの意見が多数を占めたが、中には危険等級Sにすべきとの意見も少なくはなかった。

すると突如、会議場の扉が開かれる。


「ちょっとお偉いさん方、俺もその話に入れてもらえないっスかね~」


「君は…」


「なぜ、君がここに…!!」


会議場に姿を現したのは、あきらだった。

明は会議場前にいた国衛局員の制止を振り切って無断で会議場に入り込んだのだ。


藤白露ふじしろくん。君には仮放免処置が下されていたはずだ。

 それを承知の上でこのような行為をしていることを自分でわかっているのかい?」


有瀬は冷静に明に問う。

しかし、明はそんな有瀬の発言にも臆せず話し出す。


「えぇ、承知の上っスよ。」


「なるほど、それじゃ聞こうじゃないか。君の意見を。」


周囲の上層部がざわつく中、明は笑みを浮かべながら堂々と口にする。


「俺からは2つ。まず今回の任務での歩の功績から俺の罪を免除すること。

 …そして、瑞野 歩を危険等級Bの術式発現者として認定すること。」


ー!!!ー


周囲が明の発言に驚愕する。


「バカなこと言うな!!貴様!!自分の立場を理解した上での発言か!!」


「幾度も隊律違反を犯しておきながら罪の免除を申し出るなど傲慢にもほどがあるぞ!!」


上層部はさらに怒りの声や罵倒を明に浴びせる。

すると明が上層部に背を向けた状態で口にする。


「アンタらが歩の活躍で判断すると決めたんだろ?

 俺からすれば、自分で決めたことを都合よく変えるアンタらの方が傲慢に思えるね。」


「なんだと!?」


明は臆せず己の態度を崩さないで発言する。


「君の処置に関してはそのつもりだよ。

 だが…瑞野 歩の危険等級は君が判断することじゃないはずだよ。」


有瀬が冷静に明に諭す。

だが、明は国衛局のトップである有瀬相手にも臆せず口にする。


「歩の術式が不安ならとりあえず危険等級Bにすればいいじゃないっスか。

それで能力が触れた対象にも使えるんなら等級を繰り上げればいい。俺のようにな。」


「本来、危険等級に繰り上げという制度はないのだ!」


「そうだ!逐一繰り上げをしては、国民に対する我々国衛局の信頼問題にもつながる!」


「……うるせぇーな。…今はオマエらに話してんじゃねぇんだよ。」


明が周囲の上層部を睨みだす。

その凄みに周囲は怖気づく。

そして明は揚々とした態度から、真面目な態度に切り替わり上層部に向けてこう言った。


国衛局オマエらの中に歩の等級を上げて、自分たちの管理下にしたいやつがいんだろ?」


「な、なに!?」


「術式の問題じゃねぇ、歩が今回の任務で知ったことに問題がある。そうだろ?」


何やら事情を知っている者やうろたえる人物がいるのを見て、明は確信する。


「やっぱな。……”無影衆むえいしゅう”って何なんだ。」


明の問いに晋之助が口にする。


「藤白露くん、それは君ら執行隊の権限を大きく逸脱している。」


無人むとの執行は俺たちの役目だ。

 無影衆ってのが何なのか知らねぇが、それが無人に関わることなら俺達にも知る権利があるだろ。」


「過去に起きた君の事情を鑑みれば、私たち国衛局への信頼を疑う気持ちもわからなくはない。だが―」


「よく言うぜ、だからアンタの元からわたるは去ったんだよ、晋之助さんよ。」


会議場に緊張が走る。

明の態度に周囲の国衛局員が制止に入ろうとするが、有瀬が片手を上げて静止を促す。


「済まない、藤白露くん。君の意見はもっともだ。

 私もね、この社会に対する君たち術式発現者の立ち場に疑問を感じていてね。

 だからこそ、私が国衛局を変えなければと思っているんだ。」


「な!?何をおっしゃっているのかご理解しておられるのですか!?有瀬長官!!」


「この者は我々にとっても信頼ならない!そんな者に国家機密情報を開示しては……!!」


「相手の信頼を得るにはまず、こちら側から相手を信頼するのが定石だよ、勝倉局長。」


有瀬はそう口にすると晋之助に指示をして、とあるデータを明に見せる。

そこには、無影衆の情報が記されていた。


無影衆。

原初の無人である”無神むこう”を信仰する無人集団。

詳細は不明な点が多いが、これまでにも一定数の無人の口から発言が確認されている。


「国衛局の情報網を掻い潜る手段を持っている謎の集団だ。

 国民に知れ渡れば混乱を招くと思い、機密管理部には公にすることを禁じていたんだ。」


有瀬はその選択が間違いだったことをその場で詫びる。

そして執行隊にその情報を開示する許可を明に委ねる。


「そんで歩の危険等級はどうするんっスか?」


「あぁ、君の提案通りまずは危険等級Bとして認定しよう。」


「話が早くて助かるっスよ、有瀬さん。」


明は有瀬の配慮に礼をする。

だが、有瀬の決定に異議を唱える上層部。

そんな中で背を向けて明は会議場を出る。











国衛局本部の廊下を歩く明。

すると蒼が明に声をかける。


「また面倒ごと起こしたんですか明さん。」


「起こしてねぇよ、上とちょっと話してただけだ。」


蒼は明の奔放さに呆れつつもそれが歩を想ってのことだと理解していた。

執行隊本部に向かう道中、二人は小声で周囲に悟られないよう口にする。


「あの手紙は2課が回収してます。どうしますか?」


「問題ない。その方が動きやすい。」


「一人じゃ無謀ですよ。俺も行きます。」


「お前は残れ。信頼できるヤツは内部にほしい。あ、あと歩には内密にな。」


「どこに行く気ですか?」


「ちょっと有識者に会ってくる。」


そう言うと明はエレベーターに乗り込む。

蒼はその場を離れ歩のもとへ向かう。

だが―

その二人の様子を監視カメラ越しで見つめる一人の人物がいた。



―藤白露 明、やはり厄介な男だ―











歩の部屋へ到着する蒼。

歩は兄弟無人との戦闘で負傷したことで未紗と治療を受けていた。

発現した術式の影響か、一日しか経過していないにも関わらず、すでに傷が癒え始めている歩。


「歩、君に伝えておきたいことがあるんだ。」


蒼は明から聞いた歩の認定された危険等級の件について説明した。

歩は自身の危険等級がBであることを知り、執行隊に所属している限り自由な行動が許されるという僅かな安心と同時に蒼と未紗に対して申し訳なさを感じていた。


「二人の方が…多くの人たちを助けてきてるはずなのに……」


歩は改めて社会の不条理さを痛感する。

そして自分がつい半年前まで、その社会の基盤を築き上げた国衛局の局員であったことに頭を悩ませる。


「ありがとう歩。けど心配いらないよ。

 数年前、国衛局のトップになった有瀬長官のおかげで少しずつだけど、術式発現者の立場は改善されているんだ。」


蒼は歩を安心させるように口にする。

そして蒼は少し悩んだ挙句、歩に無影衆の情報を話す。











その頃、エレベータで執行隊本部の最上階へと向かう明。

最上階へ降りると、一際厳重な装置によって守られた部屋に入る明。


「邪魔するっスよ~」


中はガラス張りの窓から東京の街一帯が見渡せるほどの見晴らしが広がっていた。

周囲には家具もほとんど置かれておらず、人が住むには不便な印象が漂う。


「ほう、珍しい客が来たもんだ。」


明の前に姿を現す白髪の老人。

見た目は老齢であるものの、スーツ越しに見える鍛え抜かれた肉体が彼の弱々しさを否定する。

しかし、その声や振る舞いには温厚さや紳士を感じさせる。

明は老齢の男性を見つけると部屋におかれたソファーに深く腰を下ろす。


「相変わらずの流源っスねー”境島きょうしま”さん。」


危険等級S

境島きょうしま 皇斎おうさい(?歳)


歴史上5人しか登録されていない危険等級Sの術式発現者の1人にして、無神むこうを執行したとされる”執行隊最強”の異名を持つ人物。

明は境島から放たれる膨大な流源を感じ取り、僅かに苦笑いを浮かべる。

境島は明の向かい側に置かれた椅子に座る。


「たしか前に君が来たのは……あぁ…思い出した。”あの日”だったね。」


明は境島の発言で10年前に尋ねたことを思いだす。

そして暗菜あんなわたるあおい、そしてれいが脳裏に浮かぶ。


「先日、歩が執行した無人について話たいんっスよ。」


「瑞野 歩だね、報告は耳に入っている。……話したいのは無影衆のことかね?」


境島は明がここに来た目的を的確に見抜く。


「残念だが、私が国衛局という鎖で繋がれている以上、国衛局かれらの得ている情報と大差ないよ。」


「無影衆の中に”無人化”できるヤツがいる。」


「ほう…無人化……以前に話していたね。…詳しく聞こうじゃないか。」


二人はより一層真剣な表情で会話を進める。

明は境島に歩から聞いた手紙の内容を説明する。


「なるほど。つまりその兄弟無人は、無人化した弟の核を兄に半分移植していた。ということかね?」


「そんな感じっスね。」


「無人の核を”移植”………となれば医学的な知識が必須なはず。」


「医者ってことっスか?」


「確証はない。だが、臓器移植が可能な医者は今じゃ限られるはずだよ。」


境島の助言を聞いて、明は医者に目星をつける。

部屋を出る際に境島が明に声をかける。


「気を付けることだ、おそらく連中は社会的に大きな立場を持つ者だろう。

 …でなければ国衛局を掻い潜ることなどできないはずだからな。」


「大丈夫っスよ、俺もここで死ぬつもりないっスから。」


部屋を出て扉を閉める明。

エレベーターで下の階へと向かう道中、明はかつて境島に尋ねた時のことを思い出していた。



―境島さん、変異ウイルス以外で”無人化”することってあるんっスか?


―聞いたことがないね。なぜそんなことを…?―


―少し気になったんっスよ。…無神の遺伝子と無人化……何か関係があるような気がして…―


―ふむ、無神の遺伝子か。だが無神は私が執行した。少なくとも生きたサンプルは存在しないはずだよ。―


―じゃ……どうして無神の生体サンプルを国衛局が保持してるんっスか?―


―なんだと…?……明くん、それはどこで知ったのかね?―


―機密管理部っスよ。―


―……。…となると深入りするのは危険だ。いいか、この話はくれぐれも内密にするんだ。―


―言われなくてもそうするつもりっスよ―



「国衛局…一体何を知られたくねぇんだ…」



そう一人でに嘆く明。

エレベーターの扉が開くとそこには歩が立っていた。

歩は傷口に包帯を巻きながらもすでに動ける程度までには傷は癒えていた。


「俺も行きますよ。明さん。」


それを聞いた明は蒼が歩に危険等級の件だけでなく無影衆のことについても話したのだと察する。


「はぁ…やめとけ。ここから先は危険が大きすぎる。

 それにこれは俺の問題、お前は関係ねぇよ。」


「それでもです…!無人が本来と違うケースで誕生してるなら、それは執行隊として阻止しなきゃいけないはずです…!!」


「だーから、それを上の連中がやめてほしいんだって―」


「俺は行きますよ。」


歩の眼を見つめる明。

彼の意思は揺るがなかった。

その真っすぐな気持ちに明はどこか懐かしさを覚えていた。


「ケガしても俺のせいにすんなよ?

 次、隊律違反バレたら後がねぇんだから。」


そう言うと二人は本部を出る。

歩の背中を見つめる明。

明の脳裏には、かつて同じ屋根の下で苦楽を共にしてきた玲と歩の姿が重なっていた。

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