エルフの少女
その時、どこからか声が聞こえた。
「だ、誰かいませんか〜…」
ガキの声だった。怯えて震えたような声だった。だから僕は声の方へに向かった。
「すみませーん、異世界から来たんですけどいろいろ教えてもらってもいいですか?」
「へ!?」
僕が急に後ろから話しかけると、びっくりして転んでしまった。
「いてて」
「あ、ごめん」
「ていうか、人間!?」
よく見てみると、このガキ耳が長い。も、もしや、こ、これは
「エルフじゃん!?」
「なんでこんなところに人間が? いや、それはひとまず置いといて、助けてください!」
しかも女か、まぁエルフの男出てきてもあれだしね。
「実は森で迷ってしまって…」
「それにしても僕、異世界から来たのに驚かないんだね」
「勇者、ですよね?」
勇者? まぁ確かにクラスメートすぐ死んだし、僕は走ってどっか行ったし、これシナリオ無視しちゃった感じ?それは普通にやばくね?
「まあね」
ここはそういう設定にしておこう。
「なら助けてください。私のようなエルフが、人間に助けを求めるなど図々しい事は百も承知です」
「ですけど私はまだ、こんなところで死にたくないのです」
「どんな環境でもいいです。何でもします。だから私をあなたの仲間に入れてください」
そう言ってこのエルフはひざまずいて必死にお願いしてくる。
「へ?」
「家に帰りたいとかじゃなくて? 仲間にしてほしいの?」
「はい、家に帰ったところでまた働かせられるだけです」
「さっきから結構疑問なんだけど、エルフと人間の関係性ってどんな感じなの?」
「本当に簡単に言うならエルフが下で、人間が上です」
「本当に簡単だな」
「あ、あとついてきたいんだっけ? 別にいいよ」
「え?! いいんですか? しかもそんなすんなり」
「まぁ面白そうだしね」
「ありがとうございます!」
一度はシナリオから外れたんだ。ここで戻っておかないと。
ていうかなんで僕が普通に女子と話せているかと言うと、それはここが異世界だから。
ここの世界の女子の思考回路が単純だから。前の世界の女子は、行動一つ一つが計算されている。
そんな気がして、あまり好きじゃなかった。別にそれがだめなわけじゃない。それはそれで面白い。
でも僕はあまり好きじゃなかった。本当に純粋な心を持っていたとしても、それを信じられなかった。
だけどここは単純だ。簡単に洗脳ができそうな感じ、実に素晴らしい。何より可愛い。
「そういえば名前は?」
「名前はありません。働くためだけに育ってきたので」
「そっか」
この世界もいろいろ大変そうだね。それにしても、やはりこの純粋さ。とても美しい。やっぱり異世界人はいいね。
しかもエルフで美人。まぁでもまだガキだけど、まぁそういうヒロインがいてもいいよね。
「それならさ、一応この世界で生きてきたわけじゃん」
「はい」
「魔法とか知らない?」
「魔法ですか、何度か見たことはありますが、使い方などは詳しくは知りません」
「ちょっと知ってるんだ?」
「はい」
「基本的な知識ならば少しお話しできます」
「じゃぁお願い」