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生きたい

私の名前はイロイダ・ベネッチィア。


私は人生で、たくさんの人から必要とされてみたかった。


それが私の人生の目標だった。


そのための努力を惜しまなかった。


別に好きでもない魔法を、ひたすら練習し、必要とされるために自分を磨き続けた。


……だが、その結果がこれらしい。


私はこの「ペルソナ」という男に殺されるみたいだ。


理不尽だ。


悔しい。


私の努力は何だったんだ。


私も、デウス様のようになりたかった…。


「さよなら」


ペルソナが、無表情のまま手をかざす。


「……」


私は目を閉じる。熱がじりじりと肌に近づくのを感じた。


ペルソナという男は、私に容赦なく炎魔法を撃った…。


直線的なビームが真っすぐ伸び、そのまわりをぐるぐると赤い炎が渦巻く。


空気が熱で揺らぎ、ゴオオッと地鳴りのような音が耳を打つ。


「さようなら…私…」


そのとき――。


「ヤ、ヤメロォー!!(棒)」


「うわっ!!」


「諦めちゃダメダ!!」


突如、声が割って入り、視界の隅に誰かが飛び込んでくる。


「あ、あなたは……隣の席の!」


「なんであなたが…」


「あなたは僕を助けてクレタ! だから次は僕が君を助けるヨ!」


「なんで! あなたも死ぬわよ!!」


「それも悪くナイ!」


「なんで…どうして…私なんかの為に…。無愛想で、特技もなくて、平凡で、価値がなくて、私が死んだって誰も悲しまない! そんな私を、なんで助けるの!!」


「君は僕を助けてくれた! それに僕は君が死んだら悲しいよ…」


「……」


「ありがとう…」


「そうね! まだ諦めるには早いわね!」


「うん!!」


「意見がまとまったようだね。それじゃあそろそろ追撃してもいいかな?」


「頼めばやめてくれるの?」


「そうだね、言い方が悪かった! 殺すよ!!」


そう言うと、ペルソナはまた炎のビームを撃ってきた。


シュウゥゥ……と熱風が体に押し寄せる。


は、速い! 死んじゃう!


「くっ!!」


そう思った時、私は誰かに押し倒されていた。


「――あぶねー!!」


目を開けると、彼が覆いかぶさるようにして私をかばっていた。


「大丈夫?」


「う、うん……」


ちょっと恥ずかしい…。


「おい! ペルソナ!! 交渉しヨウ!」


「交渉?」


「ああ、お前の望む物を何でも渡すから見逃してクレ!!」


「それは君たちの命さ!! ――と言いたいところだけど、そんな意地悪なことは言わないであげるよ」


「本当に何でも渡せるのかい?」


「ああ!」


「なら、私は君が欲しいね!」


「エ?! ボク!?」


「ああ、勇敢に女の子を守る。実にかっこいいと思ってね」


「そ、それはダメ! それならせめて私にして!!」


「なんでも渡すのではないのか?」


「ソウダヨ、僕は大丈夫だから」


「でも!」


「ペルソナ! 命は保証してくれるんダロ?」


「もちろんだ! なんならちょっと借りたらすぐ返すさ!」


「だってさ?」


「でも、やっぱり私達を殺そうとした人を信じるなんて無理だよ!」


「でも交渉に乗らなければ僕達はどちらも死ぬんだよ?」


「だけど!」


「わかった! なら僕を信じてよ!」


「え?…」


「やっぱり僕なんか信じられない?」


「……そんなことはない!!」


「なら、決まりだね」


「その言い方はずるいよ…」


私はそのまま、ただ呆然とペルソナに連れて行かれるみのるの背中を、見つめていた。

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