18話 家族の行方
バータビーの村に到着したのは夕方のことだった。
冒険者たちは各自馬車を降りて村へ入っていく。
リオネさんが中心で動くみたいで、さっそく村長と話していた。
「アイラも来たんだな」
マルフたち四人組が近づいてきた。
「この村、故郷なんだよね」
「そうだったのか。じゃあ絶対に守らねえとな」
「一緒に頑張ろうね」
「おう!」
と、その前に。
私はみんなに断ってからグループを離れた。
モフランを連れて村の中を歩く。
……懐かしい景色だな……。
朽ちかけた民家ばかりだけど、確かに私はここで暮らしていたんだ。泣きまくる弟の面倒を見たり、野菜を抱えて川に洗いに行ったり。みんなどうしているんだろう。元気に暮らしていればいいけど。
「もしかしてアイラちゃんか?」
振り返ると、近所に住んでいたおじさんが立っていた。
「お久しぶりです」
「やっぱりそうだったか。冒険者になったとは知らなかった」
「それしか食べていく方法がなくて……」
「うん、弟たちのために自分から出ていったと聞いている。君の家族も出ていってしまったが……」
「どうなったのかは誰も知らないんですか?」
「噂だから確実ではないんだが」
おじさんは慎重に言う。
「西の方の町で暮らしているそうだよ。君のお母さん……シーノさんは酒場の人気者になっているとか」
「お母さんが? 変な仕事じゃないですよね?」
「ああ、シーノさんが厨房に入ってから料理の評判が一気に上がったそうだよ。それでけっこう稼いでいる……という噂だ」
事実であってほしかった。確かにお母さんは料理が上手だった。少ない食材でもおいしくしようという努力をいつもしていた。私はちっとも真似できなかったんだけど、その才能を活かして稼いでいるんだ。なんだか嬉しい。
「なんという町だったかな。……ええと、ゾルバとか言ったかな。気になるなら行ってみるといい」
「ありがとうございます!」
久しぶりに家族の情報が入ってきて気合いが入った。みんなのところに帰りたい気持ちもあるけど、私はこのギルドにようやく居場所を見つけた気がしている。モフランもいるし、冒険者は続けたい。
……まずはモンスターの群れを倒してから考えよう。
私はおじさんにお礼を言って、自分の家を見に行った。
「ひええ、これじゃもう暮らせないなあ……」
「モフ……」
私の家は屋根が崩落し、ほとんど木材の残骸になっていた。壁も崩れていて、とてもじゃないけど家とは呼べない。
「これでも思い出いっぱいあるんだけどな……」
「モフ! モフッ」
モフランがぴょんぴょんといつもより高く跳ねる。
「心配しないで。落ち込んでるわけじゃないよ」
「モフ?」
「もう家族はここにいないんだ。私の人生も上手くいき始めたし、みんなそれぞれの場所で活躍しようとしてる」
私は拳を握った。
「モフラン、この仕事は絶対に成功させるよ。ギルドの冒険者がたくさん来てるから、ここでアピールすれば評判は確実に上がる。底辺抜け出していこう」
拳を出してみる。
「モフッ!!!」
モフランがジャンプしてぶつかってきた。超反発を抑えてくれているのか、吹っ飛ばされたりはしない。
この戦いを突破して評判を上げ、堂々と家族に会いに行く。これが今の私の目標。
そのためにも、必ず生き延びる。戦果を挙げる。やるぞ。




