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17話 お互いのことを知る

 ササヤさんと一緒に帰ってくると、ギルドがざわめいていた。


「なんだろうね」


 クエストボードの周りにたくさん人が集まっている。リオネさんやマルフたちもいる。


「やあリオネ。何かあったのかい?」

「うむ。バータビーという村にモンスターの群れが迫っているらしくてな。これから一団を結成して迎撃に向かうという話になっていたところだ」

「えっ」


 バータビーは私の生まれた村だ。もう家族は出ていってしまったけど、故郷であることに変わりはない。


「それ、私も行っていいですか?」


 生まれ故郷の話をする。


「そうか。それならアイラも来ていいぞ」

「ありがとうございます!」

「わたしも参加していいかな?」

「もちろんだ。ササヤがいてくれれば一気に戦力が安定する」

「現地ではどう動く?」

「普段組んでいる者たち同士で動いてもらうことになりそうだ。急に連携を取れと言われても難しいだろうからな」

「ふむ。だったらアイラちゃん、わたしと一緒に行動するかい?」

「い、いいんですか?」

「もちろん」

「じゃあそうします!」


 もっとササヤさんと組んで戦いたいと思っていたところだ。


「バータビーは木の防柵が巡らせてあるくらいで守りは弱い。急ごう」

「参加される方は記帳していってくださいねー」


 受付嬢のメイさんが呼びかけている。参加者はかなりの数になるみたいで、カウンターの周りはしばらくごった返していた。


 一大作戦ということで馬車もたくさん用意された。

 マルフたちとは別の馬車になってしまったが、ササヤさんとは相変わらず一緒に行動できている。


「故郷にはどれくらいいたんだい?」

「十三歳まで。税金の取り立てが厳しくて、このままだとみんな飢え死にするって状況だったので少しでも稼げたらと思ったんですけど」

「現実は甘くなかったか」

「せめてテイム上限が1じゃなかったらもっと早く家族を助けられていたかもしれません」

「そうかもしれないけど、モフランちゃんには会えなかっただろうね」

「モフ?」


 モフランは不思議そうな顔をしている。


「ふふっ、気にしないで。あなたに会えてよかったと思ってるよ」

「モッフ!」

「こら、馬車の中で跳ねちゃダメでーす」

「モフ……」


 まあ、感情を表現する手段が限られてるからね。


「ササヤさんは二十一歳でしたっけ。冒険者になって長いんですか?」

「わたしは十六の時にギルドに登録したよ。実家では剣を習っていたし、戦うのが自分に一番向いていると思ったのさ」

「アスバナっていう国でしたっけ?」

「生まれはね。両親が見聞を広めるために海を渡って、物心ついた時にはもうこの国にいた。だから祖国の言葉の方が逆にわからないんだよ」

「でも、服装はアスバナのものですよね?」

「そこはお母さまの趣味さ。昔からこういう服ばかり着せられていたからアイラちゃんのような格好はしっくりこない」


 緑の羽織に黒の袴。ギルドにいると存在感が際立つ。


「ヴィランコルノの時は一瞬すぎてわからなかったんですけど、雷属性をメインで使うんですよね?」

「そうだね。魔法適性の中にはさらに属性適性というものがあるんだ。わたしは雷属性に特化しているから何種類もの属性は使いこなせないんだよね」

「私も氷属性だけですよ」

「でも魔力量が多いそうじゃないか。わたしより長期戦ができるんじゃないかな?」


 確かに、簡単に力尽きることはないはずだ。


「わたしは刀を媒介にして発動させるから、何も持っていなくても発現させられるアイラちゃんがうらやましいよ」


 Sランク冒険者がFランク冒険者をうらやましがる。普通ならまずありえないことだ。ササヤさんの考え方って本当に柔軟。


「そうか、閃いてしまったぞ。山で遭難しても、モフランちゃんに〈氷塊〉を与えていれば飢え死にすることはないんだ」


 なるほど、属性吸生のことか。私の氷属性をモフランに食べさせるという発想はなかった。


「でも私が死にますよね」

「モフランちゃんに運んでもらおう」

「運べるかなあ」

「モフ?」


 うーん、途中で転がり落ちそう。


「上手くバランス取ってね」

「モフッ」

「まるでこれから遭難するみたいだね」

「イメージしておくのは大切ですから」

「いい心がけだ」


 ササヤさんはくすくす笑った。

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