14話 成功を積み重ねよう
翌日、早朝に目が覚めた私はモフランを連れてギルドに向かった。
「おはよう、アイラちゃん」
「は、早い……!?」
ササヤさんはもうギルドの正面広場に立っていた。
「早寝早起きがわたしの主義だからね」
「それにしても早すぎますよ」
「アイラちゃんだって早いじゃない」
「言い出した側ですから遅刻はまずいと思って」
「真面目だね。信頼できる」
えへへ。
「さて、それじゃあ今日はどんなクエストを受けようか?」
「ボードを見てみましょう。モフラン、ちょっと待っててね」
「モフゥ」
モフランを正面広場に待たせて、私とササヤさんはギルドに入った。
クエストボードにはたくさんの依頼書が貼り出されている。
「ところで、残念なお知らせをしなければならない」
「な、なんでしょう?」
「Sランクの冒険者がクエストに同行すると、ランクがほぼ上昇しないんだ」
「そういえば聞いたことあります」
「だからアイラちゃんの昇級を手伝えるわけじゃないんだよ。悪いけど」
「いえ、いいんです。ササヤさんの戦い方を見ていろいろ勉強したいので!」
「本当に真面目だ。じゃあ、モンスターの特徴も説明しながら戦うとしよう」
すごい余裕だ。
「モフランは一対一が強いので単独討伐クエストがいいですね」
「そうだね。その方がわたしも解説しやすい」
「じゃあ、これなんてどうでしょう」
私は依頼書を指さす。
ヴィランコルノ。凶一角獣の別名もある馬のようなモンスターだ。ランクはA。
「いいよ。一人で戦う時のために立ち回り方を教えてあげよう」
もう最初から余裕が違うよね。負けるってまったく思ってなさそうだもん。
私は依頼書を受付に持っていった。
今日もメイさんが応対してくれた。一瞬不安そうな顔をしたけど、ササヤさんと一緒だとわかると安心した様子だった。Sランクの冒険者はそれだけ信頼されているんだ。
「では、お気をつけていってらっしゃいませ」
「頑張ってきます!」
☆
ササヤさんが大きい馬車を取ってくれたので、モフランも余裕を持って乗せることができた。
「すうー、はあー」
「モフモフ」
「…………」
どうすればいいの、この空気。
ササヤさんはさっきから、モフランに顔を埋めてスーハーしている。
「ふう……やはり毛玉ちゃんのもふもふ感は最高だね」
ササヤさんは満足そうに座り直した。
「ササヤさんは、あんまりランクとか気にしないんですか?」
「どうしてだい?」
「だって、私もモフランもFランクですよ。ササヤさんとはとんでもない差があります」
「気にしたことないなあ」
あっさり。
「戦う相手ならいろいろ考えるけど、アイラちゃんやモフランちゃんとは戦うわけじゃない。だったらランクなんてわたしにとってはどうでもいいものさ」
簡単に言うけど、そういう考え方ができる冒険者はあんまりいないと思う。そこがササヤさんのすごいところであり、変わったところでもある。
「アイラちゃん、あんまり卑下しちゃ駄目だよ。冒険者なんて何がきっかけで覚醒するかわからないんだから。今さっぱりでも、急に伸びることはある。その日のために成功を積み重ねていこう」
「……はいっ!」
やっぱり私はいい人に出会えたみたいだ。
「モッフ、モッフ」
モフランが私にすり寄ってくる。嬉しいかって? それは、もちろん。




