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13話 水浴びの時間

 テイマー向けの小料理屋が街外れにあったので、そのまま街の外周に向かって歩く。

 大きな水路があるので、ここでモフランを洗ってあげよう。


 水辺に降りられるようあちこちに階段があるので、そこを通って水路に近づく。


「モフラン、汚れちゃったから洗ってあげるね」

「モフ……」


 モフランはちょっとうしろに下がった。


「濡れるの嫌なの?」

「モッ……」

「大丈夫。優しくしてあげるよ」


 ね、と笑うと、もそもそ戻ってきてくれた。


 ここもテイマーがよくやってくるので、共用のブラシや桶などが置かれている。


「はい、入って~」

「モファ」


 モフランを水桶の中に入れると、ブラシで汚れた部分をこすった。

 さすが毛玉だけあってブラシの通りが悪い。

 毛を引っ張らないように優しく洗う。


「モミュウ~」


 ん? 聞いたことない鳴き声を出しているぞ。


「気持ちいい?」

「モッ」

「よかった」


 スープの汚れはしぶとくて、全部綺麗にするにはけっこう体力を使った。

 ついでに全体を軽くブラシで洗ってあげる。

 これも引っ張らないように気をつけてやったらかなり時間がかかった。

 今日の私は半袖シャツにショートパンツなので、だいぶ濡れたが気にならない。


 桶の水を替える。


「お水飲む?」


 モフランがぴょんぴょんした。


「モギュッ、モギュッ、モギュッ」


 なかなかの勢いで飲んでいる。

 私は靴を脱いで、水路に足を降ろした。


「あ~、ひんやりする~」


 水の流れが最高に気持ちいい。

 この街は年中暖かいので、いつでも水浴びが楽しめる。


「モフ」


 ぽわぽわしているとモフランが横に来た。


「ゆっくりするのもいいでしょ」

「モッ」

「それもあなたがいてくれるおかげだよ」

「モフ?」

「わからないの? 強さに自覚ないタイプかあ」


 モフランらしいけど。


「…………」


 私たちはしばらくぼんやりする。

 これからのことを考えていた。

 まずは私のランクを上げることが最優先だ。Fランクを脱出すれば、もう底辺と言われることもないだろう。


 そのためにはランク差を考えずに強力なモンスターをどんどん倒していくのがいい。とはいえモフランの防御力が活かせない相手は選ばないようにする。


 私とグレートムーンには大きな差があったけど、モフランとの相性がよかったから勝てた。ああいう勝ちを積み重ねていきたい。


「よし、そろそろ行こっか」

「モフゥ」


 私は足を乾かしてから靴を履いた。


     ☆


 中央広場を通りかかるとササヤさんとリオネさんの姿が見えた。


「こんにちは!」

「やあ、アイラか」

「わーい、毛玉ちゃん吸わせて」

「駄目です」

「ケチ」


 ササヤさんって本当に気さくだよね。


「お仕事の帰りですか?」

「ああ。例のグランパーをようやく倒したところでな」


 陸棲のタコ。


「地形が悪くてなかなかの強敵だったねえ。リオネが逆さまに釣り上げられている光景は愉快だったよ」

「こ、こらっ、ばらすんじゃない!」

「リオネさんでもそういうことがあるんですね……」


 圧倒的な強さでみんなの憧れになっているリオネさん。

 それでも、苦戦する時はする。

 よくないんだけど、ちょっと安心した。人間やめてなくてよかった。


「私もまだまだ修行の身だ。ギルド最強などと言われても、自分ではまったくそう思えないな」


 向上心のかたまりだ。


「そもそもササヤの方が強いだろうし」

「勘弁してよ。最強の看板を背負わされるのは大変なんだから」


 二人は苦笑しあった。


「ともかく、今回は助かった。また何か頼むかもしれないが、その時はよろしく」

「楽なクエストを持ってきておくれ」

「それなら一人で片づけているさ」


 リオネさんは手を振ってギルドに入っていった。


「さて、アイラちゃん。わたしはまた休暇に戻ろうと思うんだよ」

「そうなんですね。ゆっくり休んでください」

「休暇ということは時間がたっぷりあるんだよ」

「今まで忙しかった分、のんびりしてください」

「休暇っていうのは何をしてもいいんだよね」


 ……これは? もしかして。


「えっと、じゃあ……クエスト手伝ってくださいって言ったら、来てくれます?」

「いいよ」

「やったぁ!」


 微妙に回りくどかった気もするけど、ササヤさんってそういう性格っぽいからな。


「今日はお休みって決めてるので、明日一緒にクエストを探すのはどうでしょう?」

「それでいいよ。わたしも帰ってきたばかりだし」

「では明日の朝、またここで合流しましょう!」

「承知した。楽しみにしているよ」


 ササヤさんは羽織の袖に両手を入れて歩いていった。


「モフラン、明日はすんごく強い人と一緒に戦えるよ!」

「モッ! モッ!」


 モフランは重くなってドスドス跳ねた。


「自分の方が強いって?」

「モフ!」

「ふふっ、自信満々だね。じゃあその力、見せてもらうからね!」

「モフッ!」


 休日を満喫した私たちは、意気揚々と宿屋に帰るのであった。

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