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蒸気船の船着場  作者: 田中 遊華’s
2025-04-01
4/5

ナゾンプトン伯爵と秘密の館

私の名はナゾンプトン伯爵。

生まれは1844年のイギリスだ。

死んだのはここだよ。うん、今でいう練〇区。

なんだねその目は、その『いや19世紀のイギリスとかいつの話だよ』って感じの目は。

私だって聞きたいさ!

館を作るぐらいこの国は好きだがなんか殺されて何度も除霊されかかったのだ!

いいかね、私はすでに死んでいる。

わかっているとも、すでに私は幽霊だ。

ちなみに君の足元にあるシミは私の血でできたんだ。

壁の手形も私のだ。

成仏しないのか?だと?

できるものか!私は今、最高に楽しい娯楽を得ているのだ!

見たまえ!この屋敷を!

そうだ!

築140年!風呂とトイレが3カ所!やたら多いゲストルーム!最寄り駅から徒歩約11分!

地下?

まあ…あるにはあるが…

あそこは私でさえ何が出るのかわからんぞ!

まあ、何人送ったかは覚えているがね。

8人ぐらいだったかな。

近づくのも見るのも結構だが、おすすめはしない。

どれが誰かなんて見分けはつくまいよ!

なに、たまに呻き声的なものが聞こえたりするだけの些細なことだ。

なんだね?その目は…

まあいい。

この屋敷は私の手足、そして君はここに住まうつもりらしいからな。

少し話をしてやろう。

君が、ここを取り壊す前にな…


「ここどこ~?」

あれは雨の日だった。

何年前か忘れたが…

学生服…の女の子…

確か、ジェイケィと呼ぶのだろう?

ジェイケィは道に迷って…すこし呼びにくいな。

ジェイクと呼ぼう、かわいくはないが私の口になじむ。

ジェイクは雨の中、傘を忘れ、そして導かれるようにこの館に来た。

「えー…なんか怖いんだけど…」

雨宿りのためとはいえ、誰の物かもわからない館に足を踏み入れる気はなさそうだった。

しかしだね、この日の雨はちと厄介だ。

強い風が庭の木々を揺らし、ボロボロの窓がガタガタと震える。

私は善意で彼女が気づかぬよう門を開けた。

「はぁ…?えー…」

彼女はそれでも躊躇っていたが、雨は段々と強くなってくる。

ジェイクは渋々、それはもうものすごく渋々でこの館に入ってきた。

「あー…おじゃましまーす?」

ようこそ、私はナゾンプトン伯爵!雨が止むまでゆっくりしていくといい!ちなみにすべてセルフサービスだ!

なんだね。

客人に挨拶するのは当然だろう。

まあ、彼女は華麗にスルーしたが…

「カビくさい…」

無礼だよね。すごく!無礼ではないかね!

確かに私も入り難い雰囲気だがそれでもカビだぞ!カビ臭いなんて!酷いと思わんかね!

だから思いっきり音を立てて扉を閉めたやったよ!

「きゃっ!」

可愛い声が聞けて私の溜飲も下がるというものさ!はっはっはっ!

まあ、私はその辺寛容だ。

いや、ひどい連中は結構ひどいのだ。

すぐ火をつけたり、壊そうとするからね。

ともかく!

私は雨が止むまで彼女を楽しませることにしたのだ。

私の大好きな謎解きとクイズでね!

そうだとも。

今、君が読んでいるこのノート。

実はだね。

これは今、まさに今!書いているのだよ!

ジェイクもこのノートを手に謎を解いたのだ。

さあ!ページをめくり給え!

君もジェイクと共に謎を解くといい!


といっても、ジェイクは雨に濡れ、かわいそうだったので、暖炉に火をつけてもらうことにした。

ということで、私はノートにいくつかのメモを書き足した。

『キッチンにマッチがある』

『薪は積んであるのがいい感じに乾燥している』

『雨が止むまでここにいるといい』

もう本当に…

君にも見せたいよ…

彼女の顔だよ!

読み進めるたびに目を見開き!顔を青くし!恐怖と混乱が脳と心を支配していく!

最高だと思わんかね?

「や…やだ…!」

ジェイクはそういって扉を開けようとするが…

そう!開かない!

私が必死で外から押さえていたからね!

意外と力が強くてびっくりしたよ!

正直…屈辱的だが…

私がもう少しだけキッチンへの扉を開けるのが遅かったら…そのまま逃げられてたね…

「もう…やだ…なんなの…」

私はね、無理難題を押し付けたいのではないのだよ。

楽しく遊ぼうと言っているんだ。

雨が上がるまで…ね…

「そうだ!ケータイ!」

便利な時代だよね。

「圏外?!待ってよ…繋がらない…」

だが、ここには電波が入らないしWi-Fiもない。

だって幽霊には必要ないからね!

しかし、このまま脱線されても困る。

ということでノートを書いて音を立てて置くのさ。

さして大きな音ではないが…緊張した人間にはこれが案外有効なのだ。

「また…お化けノート…」

お化けノートってなんだね。

しかし…気に入った!

いいぞ!

お化けノートを見たまえ!

私は大体君の味方だ!

「『暖炉で体を温めたまえ』『外に出たくば謎を解くがいい』…えぇ…」

乗り気でないのは問題だが、そのままでは風邪を引くぞジェイク?

そういう私の老婆心が通じたのか彼女は誘導されるままキッチンへ向かうわけだ。

他の扉?

頑張って押さえたとも。

全部チェックするんだもん。

キッチンといってもこの館はパーティ会場としても使える。

それだけ大きなキッチンがあるのだよ。

「えーっと…」

いい兆候だ。

困ったらお化けノートを見る。

いいぞ。

頑張って書いた甲斐があるというものだ。

「マッチ…マッチ…マッチ…」

ふむ。

まだ緊張しているようだ。

目先の目標を口にすることでより大きな問題を考えないようにしている。

ふるふる震えているのは少しかわいそうだが、素直に従っていればよかっただけなのだよ。

そこだ!

ほらもうわかりやすい!

シンクのど真ん中!

「あ、あった。え…3本しかないの…」

3本も!だ!

館を燃やすだろ!

やめたまえ!私の遊び場を取り上げるのは!

予備があるだけ優しいと思え!

あ、ジェイク!

待ちたまえジェーイク!

ノートを置いていくなあ!

まあいい。

あとで届けるとしよう。

さて…

私はこの隙に館の模様替えをするとしよう。

無論、彼女の見た景色は変えない。

先ほど一々タックルして開けようとしてきたゲストルーム、そこに謎を用意しておこう。

私はエンターティナーだからね。

雨が上がるまで、彼女を楽しませることとしよう。

何度もいうようだが、私は無理難題を押し付けたいのではない。

謎解きを介したコミュニケーション!

それがしたいだけなのだよ!

だから解かれることは問題ではない!

寧ろ!解いてもら…

なんだ?

ジェイク、今なんて言った?

「こっちかな…こっち?急にマッチって言われてもなぁ…」

ジェェェェイク!!

マッチ使ったことないなら先に言えぇぇ!

仕方ないここはお化けノー…

ないじゃないか!

ジェイクのバカ!現代っ子!

仕方がないので私はキッチンへ飛び込みノートを拾い上げ、大急ぎでマッチの使い方と暖炉の使い方を書き上げたのだ!

イラスト付きで!

それをそっと彼女の隣へセット!

「ノートどこだっけ…?」

大慌てで部屋の支度へと戻ろうとしたが、ふと立ち止まる。

なぜノートが気になる…?

「お、あったあった。あれ?マッチのこと書いてある。」

なんか慣れてきてないかね君。

「へー…」

私の予感は正しかった。

いや、予想しておくべきだったかもしれない。

そう!

彼女はあろうことかノートに火をつけようとしたのだ!

『caution!ノートを破ったり燃やしたりしたら呪うからな!』

慌てて彼女の破ろうとするページに書き込み、火がつくまで見守ることにした。

「こんなの書いてあったっけ?」

今書いたの!

そのノートぐらいなら別に無くなってもわけないが、同じことをまた書くのがめんどくさいのだよ!

もう少し!仕掛け人に配慮しなさい!

ついでにキャビネットも倒そう。

古い新聞も入れておけば雰囲気的にも正解だろう。

「なに!なんなの!!」

よしよし。

その新聞を使いたまえ。

読んでも意味はないぞ適当に書いたからな。

「変な漫画…」

読まんでいい!

「これを丸めて…マッチが…えい!」

これで一安心…

「あ、消えた…」

なぜ暖炉に入れない!

バカかね!?

「もう一本あるよね…っしょ!」

よし。

ようやく火がついたな。

私は仕掛けに戻るから!

薪は入れすぎるなよ!かと言って少なくてもダメだからな!


さて、1時間ほど経ったかな。

私の仕掛けは終わり、ジェイクの体も温まった頃だろう。

うん。

布団もね、拘ったのだよ。

古いカーテン風。

このためにカーテンを引きちぎって腕がプルプルしている。

ということでゲームを始めよう。

まずは!

鍵のかかっているらしい扉が音を立てて開く!ガチャーン!

ジェーイク…ジェーイク…!

起きろよ!

私が面倒見ているとは言え!火の前で熟睡するな!

いいよ!じゃあシャンデリア落とすもん!

「なに?!なんの音!」

危なかったね!

起きなかったら別の手段を使うところだったよ!

そして再びゲーム開始の合図となる鍵がガチャーン!

「いいか。」

よくなァァァァァァァァァァァァァァァい!

くそ!ノートだ!ノートぉ!

『夜明けまでに謎を解かなければ、君は地下の化物の餌だ!』

「地下?えぇ…いいじゃん帰らせてよ…」

ダメです!

せっかく仕掛けたんだから楽しみたまえよ!

『このままでは君を不法侵入で訴える』

なんとつまらない脅しだろうね。

それが効いているのがまたつまらない。

「さっきのって鍵が開いたんだよね…どこの部屋だろ…」

素晴らしい!

素晴らしいか?

まあともかくゲームスタートだ。

親切心から館の地図もノートに書いてあげよう。

「えっと…ここがエントランスで…廊下があって…?右に行くとキッチンで…左が…なんか部屋か。」

うんうん。

ちなみに開いたのはここを出て突き当たりのホールだ。

「火…消したほうがいいかな…?」

そのままでいい!いいから!

「あ、でも燃え尽きたら消えるか。」

結構危険な思考だが、この館に限り問題ないと断言しよう。

なんなら消えないよう私が薪を足しておこう。

「えーっと…あれ?こんな扉あったっけ?」

なかったよ、私が作った。

「えい!」

タックルで開けるな!

普通に開けたまえよ!

「うわっ!開いてるの…?」

ほら言わんこっちゃない!

怪我はないかね?

なさそうだ。

「ここが…ホール?」

どうだね!

割れた窓ガラスから隙間風が通り、風がボロボロのカーテンを揺らす!

薄暗いだろう…だが、ここで!

「えっ!なになになになに!」

燭台に火をつける!

蝋燭の不規則な炎がより一層影を濃くするのだ!

さぁ!探索したまえ!

ふふふ…そうだろう…

怖くて前に進めまい…

「これ…あー…やめとこ。」

やめんでいい!

『このホールが真実への入り口であり、出口だ。よく探せ。足元も影の中さえも。』

よし!

今回の肝はホールだ。

ホールに始まりホールに終わる。

つまりだ、ホールを最初に見せておき、他の部屋で謎を解き、ホールへ戻る。

そしてホールから別の部屋へのアクセス権を得る!

これを繰り返し、最後は脱出!雨も止んでるしサイコーだね!ってやつさ!

「影って何…?私の影?うん?」

そう!すごく簡単だが燭台の光を受けて君の影が入り口に差し掛かっている。

入り口の影だ!

「ドアノブに鍵かけるの…?」

いいじゃんか!

意外と気づきにくいところだろ!

「L4?」

そう、地図を見たまえ。

今、部屋番号を書いておいた。

忘れてて申し訳ないね!君が奇想天外すぎて忘れてだんだよ!

「あっちか。」

おや、意外に素直。

君はもう少しここを探索するものだと思ったよ。

まあ、多少ズレても問題はない。

「開いた。お邪魔しまーす…」

ようこそ!我がコレクションルームへ!

壁掛けの肖像画は私が描いたものだ!

穴があくまで見たまえ!

「音楽室かな?」

んなわけあるかい!

楽器どころかピアノもないだろうが!

「誰だろ…えーと…ルビリア…セリンスロ…パーシヴァル…アルデント…」

右側に並ぶは5人の肖像!

謎と答えは一つだぞジェイク!

「うーん…普通に見えるけどなあ…」

まだ!出題してない!

後ろ!ええい!

こうなればこの熊…いや象の置物で…ガッシャーンだ!

「なに!?」

像は見らんでいい!

「なんか書いてある…?」

『目を見よ。その目、穴のあくまで。』

これが第一問だ!

「目を見るの…?」

ふふふ悩んでいるな…大いに悩むがいい!

「あ!」

わかったかね!

「このルビリアって人だけ女だ!」

女て…

もうちょっとお上品に言いなさいよ。

「よーし!」

近いな。

だがそれでは穴のあくまで見ていないぞ!

部屋をよく探すのだ!

「なんか…照れるな…」

ノート!

『穴のあくまで見るのはただ見つめることじゃない。』

ついでにちょっとあっためよう。

「なっ…なんか変だな…体熱くて…」

バカタレ!

ノートだ!ノートが熱いのだよ!

いいもん!

熊の像も落とす!

「あん!もう!」

なんで怒られなきゃいかんのだね。

確かにルビリアの肖像画の出来はいいがそんなにかね?

「なんだろ…」

そうとも。

破片の下にはそう!

お化けノートだ…

君のポケットから取り上げた。

丸まっていたのも伸ばしてな!

「えーっと…『穴のあくまで』『見つめることじゃない』?」

そう!君の視線の先!

馬!羊!山羊!牛!鹿!象と熊はさっき壊した!

「なんだろ…?あ、この羊さん可愛い…持って帰ろ。」

ダメだろうが!

別に関係ないけど!

人のもの取るのはダメだろ!

「それで…これは…えーっと?うん?」

もういいよ白状するよ。

『穴のあくまで』。

つまり悪魔でってことなのだよ。

悪魔といえば山羊。

山羊の置物にルーペが付いているからそれで適当な肖像画の目を見れば終わりなのだよ。

「わかんない!」

はい。

レベル設定高くて申し訳ございませんでしたね!

しかし、ノートでヒントを出すのは芸がない…

ここはホールに…いや、ここで仕掛けに細工だ!

どんなトラブルもアクシデントも楽しませてこそだ!

そうと決まればノートに書き込みアーンド落下!

「うわっ!またノートか…」

この先に廊下へ新たな絵をドーン!

ついでにブラックライトもポーン!

「えー…『この部屋だけが全てではない』?」

そうだ!

君のせいで!

君の察しが悪いせいで!

全てではなくなった!

「うーん…さっきの部屋かな?」

はい。

廊下です。

「なんだっけこれ…」

絵に気づけよ!

デカデカと書いているだろうが!

ちなみにそれはブラックライトだ!

「お!光る!懐中電灯?じゃないよね。」

おや?ブラックライトもご存知ないな?

壁には何もないぞ。

多分だが。

「これ…なに…」

おやおや。

おーや?

これは…血だね。

消し忘れたかな。

結構前だからなあ…この辺使ったのは。

「ペンキ?」

不思議だね!怖くなったね!

「わっ!変な絵。」

悪魔の絵なの!

頭が山羊なの!

「あれ…なんか書いてある…?」

そうだとも。

これこそ土壇場で仕込んだギミック。

ブラックライトを悪魔の絵に当てると六芒星が浮かび上がり!

正解の絵にも出るというわけだ!

すごいぞ!

よく作った!

「まあいいや。行こ。」

そっちはホールはもういいって!

鍵かけちゃうからな!

「やっぱやめた。」

あ!そう!

疲れるよ!本当に!

「あ!わかった!そういうことね!」

よし…ようやくか…

「これで照らすんだ!」

謎解きにとっては小さな一歩かもしれないが、彼女にとっては大きな一方となるだろうね…

うん…

「この絵だ!」

そうだとも。

パーシヴァルの肖像画に六芒星を書いておいた。

ブラックライトで浮かび上がり!そこを山羊の置物のルーペで見るだけでいいのだ!

「よーし!」

よーし!

よーし…?

まて、ジェイク。

なぜ絵を見つめる。

「あ、違うや。」

賢い!

賢いぞジェーイク!

「えーっと…と?多分これだよね?」

そうだ!

この像の中から選ぶのだ!山羊を!

さっき見ただろ!

「うーん…えー?」

おいおいおいおい!

見ただろうが!絵を!

「どれだろ…」

もう総当たりなのねそうなのね!

とても残念ですが!?

「お…なんか出た。」

もう山羊から出たとかそういうのさえわからないのね…

「これで見ればいいのか!」

よし!やる気でできたぞー!

「よーし…」

実はルーペ逆だが黙っておこう。

もう正解でいいよ!

「何も…?起きない…?」

と、油断した瞬間に絵がガッシャーン!

ちなみに手動だ!

「うわぁぁぁぁ!」

あぶなぁぁい!

「っと…」

セーフ!

驚かしすぎるのも考えものだね。

だがこれでいい!

落ちた絵の裏にはなんと!

最初のキーアイテム!

ハートの鍵だ!

「かーえろ!」

終わってなァァァァァァァァァァい!!!!

ノート!ノート!

投げってやる!

「いて!」

終わるわけないだろ!大体!

雨も止んでないんだぞ!

「もうノートはいいでしょ…」

そう言いつつ読んでくれる君が好き。

「うんと…?『謎はまだある』?『もう一つの鍵を探せ』?」

ここで鍵をガチャン!

素晴らしい誘導だと思わんか!

「まだやるの?」

まだやるんだよ!

まだ一問しかやってないでしょうが!

仕方ない…

心が痛むが…良心の呵責を利用させてもらう!

「なに?」

助けてー。

「たす?」

たすけてー!

「助けて?」

助けてー殺されるー!

「気のせいかな?」

ここですかさず謎の幼女を投入!

『おねちゃん誰?』

「え?私?」

見逃さなかったぞ。

見逃してないぞ私は。

お姉ちゃんと呼ばれてちょっとニヤついたの見逃してないぞ!

可愛いやつめ!

ノートの代わりにこれで行こう!うん!

「ノートになんか書いてあるかも!」

クソッタレ!

ノートと幼女の2人分動かすのか…

骨が折れるなんてレベルじゃないが!?

「えー…『次の謎はホールから始まる』と。」

やるんだけどね!

とりあえずホールに行きたまえ!

次の問題が終わる頃には雨も止んでるだろう!

止んでて欲しいなあ!

「あ!そういえば、お名前聞いてなかったね。」

聞くなァァァァァァァァァァ!

想定外すぎで設定なんてしてるわけないだろうが!

く…だが名乗らないのは…

は!

そうだ…!

いいぞ!

このナゾンプトンに妙案ありだ!

『わからない…』

そう!

名前なんてない!

が!

謎を解けば幼女の名前は判明し!

それが脱出の鍵になる!

完璧だ…

さすが私だ…

「じゃあ…なんて呼べばいいかな…」

そんなに重要かなあ?!

そこ悩むかなぁ?!

謎では大して悩まないくせにさぁ!

『なんでもいいよ。私しかいないから。』

「じゃあ…プリンで!」

センスぅ!

なんでプリンなのよ!

もういいよ!

プリンちゃんと一緒に行けよ!

「ホールかぁ…ちょっと不気味なんだよなあ…」

『ここは幽霊が出るの。』

「えぇ…だ!大丈夫!私がついてるからね!」

なんか別の何かが始まってないかね?

「幽霊なんて私がやっつけちゃうから!」

あんまり適当なこと言わせてはダメだろうな。うん。

さーて、探索の時間だが…

また扉探してるよこの子…

「さっきここに鍵があったんだよねー。」

だからなんなのだよ。

同じネタをやるわけないだろう!

ええい、ノート…いや、誘導は幼女にしよう。

『あそこ…何かあるよ…』

「え!どれ?」

そう!

部屋の中央!

ちょっと歩くとすぐ気づく場所に!

あるのだ!

箱が!

そして二つの鍵穴!

一つは先ほどの鍵!

もう一つはこれからだ!

「本当だー!私、入り口しか調べてなかったからなあ。」

なんでだろうね!

「すごいよ!えらい!」

ちょっとボディタッチ多くないかね?

日本人ってこんなでしたかね?

「よーし!多分ここにさっきの鍵を…」

いいぞ!

なんだね!

急に勘が良くなったな!

ノートに書き始めてたよ!

『もう一つ、必要みたい。』

「探さなきゃ…ね?」

なんだね今の間は…

まさか…

「壊れたりしないかな…」

バッカじゃないの!

こうなれば大急ぎで箱と床を接着!

離れんぞ!

「びくともしないなぁ…動かせそうだったのに…」

でしょうねぇ!

『鍵、探すの?』

「そーだね…めんどくさいけど…」

今なんて言ったよ!

めんどくさいだと!

私の…渾身の仕掛けを…めんどくさい!

ぶち殺されても文句言えんぞ小娘ェ!

「どこに行けばいいんだっけ…?」

ノート!?

油断したらこれだよ!

「お、書いてある。『鍵は鏡合わせ。』?鏡なんてあったっけ?」

ものの例えだってわかんないかなぁ!?

鏡合わせ!

つまり、さっきの部屋の反対にあるの!

キッチンの隣にあるの!

しかし…幼女に誘導させるのも不自然だ…

『鏡はないけど…お姉ちゃん、鏡合わせって何?』

これだ。

彼女に気づかせればまだなんとかなる…

「あーっとね…こう…左右が一緒というかね…こう右の端っこと左の端っこ?みたいな?」

フワッフワね!フワッフワねジェイク!

「そうか!」

そうだ!

簡単だね!

「これが2つに…」

割れるわけねぇだろ!

なんですぐ物理的になるの!

やめてよ!ほんとにさあ!

「だめだ…斧とかないかな…?」

ないよ!

ないよな…

ない!

ええい…幼女!

『あ…危ないよお姉ちゃん…!』

ここでうるうるの目をひとつまみ。

「ご、ごめんね!怖がらせちゃったね!」

さてどうする…?

正直、地図見れば終わるんだが…

シンプルすぎてヒントが出しにくいな…

『この部屋じゃないんじゃないかな?』

「うーん?どうなんだろう?」

『私の知っているお屋敷じゃないんだ。多分お部屋の順番とか変わってるんじゃないかな?』

これが精一杯です…

受け取って…ください…

「うーん…」

やっと地図開いたね!

長かったね!

「ここがさっきの部屋で…」

すいませんその隣です。

その!左隣です!

わかりやすく端っこにしたのに!

『じゃあ鏡合わせなのかな?』

もう進めていいかな!いいかな!

「一回行ってみよっか!」

らしくなって来たじゃないの!いいよいいよ!

部屋違うけど!

その時は幼女で偶然開ければオッケーよ!

「鍵かかってる…」

しかしすぐ誘導しては味気ない。

『さっきの鍵じゃないかな?』

これよ!

「えい!」

えい!じゃない!いいかね!すぐそうやって体当たりするのやめたまえよ!もう何度目なのよ!

物理はダメなの!

抑える方の身にもなりなさいよ!

『ね、ねえ、さっきの鍵は?』

「あ!そうだね!」

鍵より先に物理を試すっておかしいと思わんのかね?

本当に。

「ダメだ…全然形が違うや…」

で?物理かね?

いいだろう。

私も全力で押さえよう。

全く、雰囲気重視で強度を考慮しなかったのがこんな…こんな形で仇になるとは…

「やっぱり鍵を分けるんだよ!」

もうやだこの子…

ジェイクのバカ!物理的!現代っ子!

よういいよ!

幼女で答え教えるもん…!

『あ!隣の部屋は空いてるみたいだよ?』

「待って!」

待たなくていいよ。

正直、降参したい。

「危ないからね…何があるかわからないし…!」

そのリアクション、最初にすべきじゃないかね?

というかだよ。

私が君に危害を加えたかね?って話だよ。

ノートを投げつけた?

あれはジェイクが悪い。

「大丈夫かな…」

おかしいなあ新鮮だなあ…

「これは…テーブル?」

気を取り直して最後のクイズだ!

遺憾ながら最後になりそうなクイズだ!

『兵隊さんが書いてあるね。剣と盾?』

「なんかルールがあるのかな。でも変な並び…」

そうだろうね。

円卓の淵に沿うように描かれた兵隊のイラスト!

剣!

剣!

盾!

剣!

剣!

盾!

剣!剣!

⬛︎!⬛︎!

剣!盾!

そう…

最後の問題とは知ってれば余裕のアレだ。

⬛︎2つに当てはまる組み合わせを選んでもらう。

ちなみに間違えると複雑化する。

法則に従って進むからね。

正直、今が1番簡単だ。

正解すれば!

最後の鍵!王冠の鍵を手に入れられるだろう!

『あ、ここで答えるみたい。』

無駄に頑張ったようにも思えるが、ダイヤルで剣と盾を選べるのだ。

決まったら赤いボタンを押す。

さあ!解いてみるがいい!

「ちょっと離れてて…燃やすから。」

どっからマッチ出したのよ?!

最初か?!

これなら3本も渡すんじゃなかった!

クソ!

どうにかして止めなければ…!

「えい!あ…」

よし!折れたな!

私の勝ちだな!

ジェイク!

君の頑張りすぎだ!

素直に解けよ!

「でもなんだろうなこれ…見たことある気がする。」

え…?

知ってんのこれ…

嘘だろ…

君こういうの好きじゃないと思ってたよ…

「アレだよ、ひよなっち数列!」

フィボナァァァァァァァァァァチ!

地獄のフィボナッチくんに謝れ!謝れぇ!

「確か、1と1で2、1と2で3、2と3で5だっけ…」

まあいい。

自力で数列にたどり着いたという部分は褒めるべきだろう。

ちなみに壁に打ち込まれたビスがこの数列になっていたのだ。

ヒントが無駄になるのは少し寂しいが、ここは彼女の閃きを褒めるとしよう!

だが!

これを解くには少しばかりコツがいる。

といっても、ここまで来ればほとんど解けたようなものだがね!

「これに当てはめると…(1)(1)(2)…?」

そうだよ?

(1)(2)で剣?」

そうだよ?

「違うかー。あってると思ったんだけどなあ?」

合ってるよ!

この現代っ子め!

すぐ諦めやがる!

まずいな…どうしよう…

「どうしよう…」

ノートに書いとくか…?

「ノートにあるかな?ん?『2つで1つ』?」

ここですかさず幼女!

『数列と別の法則を合わせるんじゃないかな?』

いけるか?

「いけるかな?」

なんで足踏みしているだろうね…?

「えーっと…(2)(1)(3)(2)(3)(5)(3)(5)(8)?」

そうだ…その調子だ…2桁目に入ればなおのこと見えるはずだ!

「そうか!」

そうだ!

「剣剣盾の順番だ!」

数学って美しい!

ふざけるな!別解じゃないか!

奇数と偶数だろうが!

フィボナッチのアホ!

「だから盾と剣だよ!」

ここで正解にさせないのもなあ…

まあ、認めてやろうじゃないの…

『あ!箱が出て来たよ?』

「冠の鍵と…カード?」

気を取り直して…

そうだ!

それこそ最後の鍵!王冠の鍵だ!

これとハートの鍵でホールの箱が開くぞ!

ついでに雨も止んだ!

「これ写真だ…フランシェスカ?この43ってなんだろ?」

さあよく写真を見たまえ!

君の言うプリンちゃんは1943年の人物でした!

というホラー展開だ!

「この写真…もしかして…プリンちゃん?」

『そうみたいだね。』

「じゃあこのフランシェスカって…プリンちゃんの名前なのかな!」

いいね感動的だね。

ついでに数字に気づいてね。

「よかったね!フランちゃん!これで帰れるよ!」

はい、わかってましたよ。

こーなるってさ!

『まだ、出られないよ…ホールの箱を開けないと…』

もうあとは気楽だよ。

カーテンコールのようなものだ。

彼女がホールの箱を開け、館を出るだけだ。

「あれ?鍵じゃない?」

と見せかけて最後のギミックだ!

カタカナシリンダー!

正しい7文字に揃えると、中の鍵が取り出せるぞ!

といっても、簡単だろうが。

『文字を揃えるみたいだね…7文字?』

「そうか!じゃあフランちゃんの名前を入れればいいんだね!」

そのためにカタカナで書きました!

どうせよめないだろうから!

「やっと外に出られるよ…じゃあ帰ろうか!」

暖炉の火は…気づいてないな。

消すと暗いのよね。

「さあ!」

『ごめんなさい。私はあなたと行けないの。』

「ど…どうして?」

私はこの館に囚われた幽霊…いや、この館そのものだ。

「館そのもの…?」

だからこうして君たちの前に現れ、遊んでいるのだよ。

「遊び?」

そう。

無限とも言える時間の中で、君と遊べたことは極彩色に彩られ、確かに私の記憶に残るだろう。

「よ…よくわからないんだけど…また、会える?」

それは無理だろうね。

生者が死者に囚われてはいけない。

代わりと言ってはなんだが、写真と置物は持って帰るといい。

「なんか…変だね…涙が…」

君のその純粋さは大好きだ。

できればこれからも君のままでいて欲しい。

さあ、お別れだ。

「待って!まだ話が…」


これがことの顛末だ。

いかがだったかな?

ジェイクは数少ない生還者になった。

君の目的はわかっているよ。

私を殺したいんだろう?

君の恋人を殺した私を…

だがね、はっきり言って君の言いがかりだ。

私が彼女を殺したのは地下を見たからだ。

『そして…こここそがその地下だ。』

『いい表情をする。言ったはずだ、館は私の手足だと。君がノートを読んでいる隙に準備をさせてもらった。』

『バケモノは空腹らしい。といっても、私だがね。それではご機嫌よう。君は記念すべき100人目だ。多分だがね。』


私の名はナゾンプトン伯爵。

もちろん本名ではないし、そんなものはとうに捨てた。

私はこの館の主人であり、この館そのものだ。

だからこそ、館を見たらそれは招待だと思ってくれたまえ。

遊ぼうじゃないか。

何、私は無理難題を投げつけないのではない。

謎を出し、解くことでコミュニケーションを取りたいのだよ。

さぁ、どうぞお入りなさいな。

この館のルールは1つだけ。

コミュニケーションだ。

触れてほしくない部分が人それぞれあるように…

解いてはいけない問いもあると言うことだ。

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