春風
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春の訪れを告げる桜が街を淡いピンクに染めるころ
大学二年生の桜井遥は、友人に誘われてサークルの新歓イベントに顔を出していた。
「ねえ、遥。あのイケメン、新入生らしいよ!」
親友の美咲がそっと耳打ちしてくる。
遥が視線を向けると、そこには長身で爽やかな笑顔を浮かべる男の子がいた。
黒髪を無造作に整えた彼は、周りに囲まれながらも、どこかのんびりした雰囲気をまとっている。
彼の名前は相沢陽向。
新入生で、同じ文学部に所属しているらしい。
遥は興味を持ちつつも、ただ遠くから見つめるだけだった。
「桜井先輩ですよね?」
それから数日後、図書館でレポートを書いていると、突然声をかけられた。
顔を上げると、そこにはあの陽向が立っていた。
「あ、はい。えっと…相沢くん?」
「覚えててくれたんですね、嬉しいです!」
無邪気に笑う彼に、遥は少し頬を赤らめた。
話を聞けば、彼も文学が好きで、特に詩を読むのが趣味だという。
意外な一面に驚きつつ、二人は自然と会話を弾ませた。
それからというもの、図書館で顔を合わせるたびに言葉を交わすようになった。
陽向はいつも明るく、気づけば遥の方からも彼を探すようになっていた。
「先輩、今度の土曜、時間ありますか?」
ある日、陽向が少し照れくさそうに尋ねた。
「え、あるけど…どうして?」
「実は、行きたいカフェがあるんです。
一緒に行ってくれませんか?」
彼の誘いを断る理由なんてなかった。
迎えた土曜日。
二人は駅近くの小さなカフェでスイーツを楽しみ、
他愛もない話で盛り上がった。
陽向は笑うたびに、目を細める癖があった。
それが遥には可愛く思えて仕方なかった。
帰り道、夕暮れに染まる並木道を歩いていると、ふいに陽向が立ち止まった。
「桜井先輩、実はずっと言いたいことがあって…」
鼓動が早くなるのを感じながら、遥は彼を見つめる。
「俺、先輩のことが好きです。
もっと、そばにいたいんです」
春風が二人の間を優しく通り抜ける。
遥は微笑んで、一歩彼に近づいた。
「私も…陽向くんといると楽しいよ。
これからも、一緒にいてくれる?」
陽向の顔がぱっと明るくなり、
次の瞬間、彼の手がそっと遥の手を包み込んだ。
桜が舞う中、二人の距離はもう、春風よりも近かった。
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