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アノは指名する




 長々と説明やら宣誓やらがやっと終わった。


「では、これより王位指名の儀を行う」


 会場がしんと静まり返った。


「ではまず、エイデン家、アノ」

「はい」


 指名された私は立ち上がった。


 もう一度ブルー様を見る。


 私を見る青い瞳の奥の感情は読み取れない。


 まったくもう。


 私は息を吸った。


「エイデン家アノは第7皇子ブルー様を次代の王へと推挙いたします」


 私がそう言い放つと会場が一気にざわついた。


 本当は騒いだらいけないのだけれど、それだけ衝撃だったということなのでしょう。


 中でも第二側室の一団が悪目立ちしている。思わず立ち上がっている者までいるもの。


「待ってくれ、アノ」


 そう声を発したのはディングル家代表のカンジャインだ。


「準備会議で一番反対していたのはアノではないか。あんな人の道から外れた者に、この国を任せられないと」

「そうですね、カンジャイン」


 私はにこりと微笑んだ。


「でも、今は違うのです」


 そう言って私はとぼけた顔で成り行きを見守っている当人、第7皇子のブルー様を見た。


「おほん。次にビイデル家、ホンライン」


 先ほどのカンジャインと私の会話も本来はしてはいけないことだ。


「ビイデル家、ホンラインは第7皇子ブルー様を次代の王へと推挙します」

「なんだとっ」


 またカンジャインが声を発した。


「お静かに願います」


 さすがにカンジャインが注意された。


 同様に第二側室の一団も注意を受けていた。


「次にシーノック家、ウィスキン」

「シーノック家、ウィスキンは第6皇子デルフィン皇子を次代の王へと推挙いたします」


 ぐぬぬって声が聞こえてきそうだわ、カンジャイン。


「次にディングル家、カンジャイン」

「ディングル家、カンジャインは第5皇子ツゥレヒ皇子を次代の王へと推挙します」


 カンジャインがそう言ってどかっと椅子に座った。


「3人の推挙を集めた者はいない。これより合議の時間とする、意見のある者は」

「どういうことだっ」


 カンジャインが立ち上がって言った。


「準備会議で反対していたではないかっ」


 カンジャインが私とホンラインに向かって叫ぶように言った。


「ええと、ではどちらか」

「では、私が」


 ホンラインが手を上げて指名された。


「ビイデル家は単純な話だ」

「何?」

「戦技披露の儀だ」

「あれはあくあまでも参考に過ぎない儀式だ」

「そうだな。しかしあの時のブルー殿の戦技には驚かされた」

「だから、関係ないと」


 カンジャインが抗議するのをホンラインが手で制した。


「王に戦技は必要ない。確かにそうだろう」


 ホンラインが3人の皇子を見渡して言った。


「しかし戦技について理解があるかは大事だ。特にビイデル家にとってはな」


 確かに兵団を仕切るビイデル家にとっては大事なポイントだろう。


「そしてあれだけの戦技。あれを身に着けるのには一朝一夕では叶わぬ。日々の鍛錬が。地道な鍛錬が必要だ。それを続けられる精神性をビイデル家は尊ぶのだ」


 そう言ってウィスキンは私を見た。


「たとえ「悪皇子」と呼ばれていても、だ」


 そう言ってウィスキンは座った。


「ではアノ様」

「はい」


 私はゆっくりと立ち上がった。


 ブルー様を見つめる。


 この状況になってもあの余裕。それが忌々しい。


「ブルー様は「悪皇子」と呼ばれています」

「そうだ。そんな者に任せられないと、アノも言っていたではないか」


 カンジャインの言葉に私は小さく頷いた。


「私も準備会議まではそう思っていました」

「何だと?」

「そう。真実を知るまでは」

「真実だって?」


 そうよ、カンジャイン。私もあなたも騙されていたの。いえ、私達だけじゃないわ。一部の者を除いて、皆、あの忌々しいブルー様に欺かれていたのよ。





挿絵(By みてみん)


ブルー皇子オフショット。

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