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1-4 封印

 ジークベルトは側近、将校等を集めて軍法会議を開いていた。


テーブルの中央には巨大な魔鏡が置かれている。この魔鏡には同盟の証として指輪を国の様子が映像として送られてくるようになっている。

これも先代の偉大なる魔導士の手によって作られた物だ。


「陛下、映像が入ります」


ヨハネスは魔鏡を覗き込んだ。

二人きりの時は砕けた雰囲気で話すヨハネスも、このような場面では立場を弁えた振る舞い方をする。


「よし、映してくれ」


ヨハネスが魔鏡に触れると映像が浮かび上がった。

城の内部は崩壊し、焼け焦げてすっかり原形をとどめてはいない。人の姿は全く無かったが、代わりに様々な小動物が動き回っている。


「何だ? あの動物たちは? 一体どこから入り込んできたのだ?」


ジークベルトは眉間に皺を寄せた。


「それに人々の姿も全く見られないのが気になりますね。国王や女王を含め一切人影すら見当たりません」


側近の一人が言った。


「確かにそうだ……。映像を他の場所に切り替えてくれ」


「はい、ではこの国の中央広場に映像を切り替えます」


映し出された映像を見て、皆が眉をひそめた。


「こ、これは……」

「なんて酷い……」


美しい町並みは破壊の限りを尽くされ、焼き尽くされている。そこには無数の人々の死体が折り重なるように倒れていた。中には小さな子供の姿まである。

さらに獣の身体を持つ獣人が無数にうごめいていた。


「!」


ジークベルトはあまりにも凄惨な光景に言葉を失い、ヨハネスは視線を逸らしている。


「陛下……どうされるおつもりですか?」


白髪交じりの軍曹が問いかける。


「わ……私にはこの国を、民を守らなければならない責務がある。恐らくもうこの国には生き残った人間はいないだろう」


ジークベルトは顔を上げた。


「よって私はこの国を封印し、何人たりとも出入り出来ないようにする! 全てはこの国、そして近隣の国を守る為に!!」


そして視線をヨハネスに移す。


「ヨハネス……出来るな?」



「はい、勿論です。陛下ならきっとそう言うと思っておりました」


 封印の方法は簡単だ。


『マリネス王国』にある≪マーヴェラスの指輪≫を破壊すれば良い。

ヨハネスは魔鏡の映像を切り替え、指輪を映し出した。この指輪は結界で守られており、『マーヴェラス』の魔力を持つ人間しか破壊する事が出来ない。


「ゆくぞ」


ジークベルトは立ち上がると、映し出された指輪に念を送る。


「我が名、ジークベルトが命ずる。指輪よ、その身を自らの意思で砕くのだ!」


その直後。

ピシッピシッと指輪に亀裂が生じて弾け飛ぶと同時に魔鏡からの映像も途絶えた。


ヨハネスは魔鏡を確認した。


「『マリネス王国』……完全に外界からの遮断完了しました……」


ドサリと椅子に座り込むジークベルトは激しい自責の念にかられていた。

自分はとうとう妻の国を見捨ててしまった。

そして、まだ会った事が無いレイリアの婚約者まで見捨ててしまったのだ。


荒い息を吐いてテーブルの上で拳を握って俯くジークベルトを見てヨハネスは声をかけた。


「陛下の行いは正しいです。誰一人この国の人間は陛下を責める事はありません。今は封印致しましたが、いずれ解決策が見つかった時には、再び封印を解けば良いのですから」


「その通りですぞ!」


「陛下! 我々は貴方に何処までも付いて行きます!」


軍法会議に集まった人々は皆口を揃えてジークベルトの英断を褒めたたえるのだった。


「……ありがとう、皆」


ジークベルトが周囲を見渡した時、扉がノックされた。

警備の兵士が応対するとジークベルトの側に歩み寄る。


「陛下、報告があります」


「どうしたのだ?」


「レイリア様の目が覚めたそうです。」


「何? 本当か!?」


ジークベルトは立ち上がった。


「皆の者、会議は一度終了する。ご苦労であった!」


そして足早に会議室を出るとレイリアの部屋へと向かった――



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