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2-5 労働に汗を流す姫 2

 初めての食事作りは散々な物だった。

包丁の握り方から、皮むき、野菜の切り方をはじめ、かまどの使い方。

何とか1時間以上時間をかけて作り終えたのは野菜のスープだけであった。


「あんなに時間をかけて作ったのに、これしか作れなかったわ……」


レイリアの声には悔しさが混じっていた。


「大丈夫ですよ、レイリア。包丁だって持つのが初めてだったのですから、でも味はとっても美味しいですよ」


テーブルにはレイリアが作ったスープとユリアナが焼き上げたパンが乗っている。


「レイリア、パンは暫くの間私が作るので貴女は色々な料理が作れるように頑張るのですよ」


「そうね……。悔しいけど、パンなんてまだまだ私には作れそうにないものね」


ユリアナの作ったパンはそれはそれはとても美味しかったのであった。


「ねえ、ところで私はいつになったら魔力や剣術の鍛錬を始めるのかしら?」


「そうですね。この生活に慣れて時間が取れる様になったら鍛錬を始められるでしょうね」


それは耳を疑う台詞だった。


「何ですって? 私の命がかかっているかもしれないのに、何をそんな呑気な事を言えるのよ!」


ついに怒り出すレイリア。


「落ち着きなさい、レイリア。貴女はいずれサバトスを探す為に旅立たなければならないと言いましたよね? きっと様々な国を旅する事になるはずです。時には何日も、何週間も誰にも会わず、荒野を行く事になる日があるかもしれません。そんな時自分で自分の事が出来なければ旅を続けることが出来ますか?」


「そ……それは……」


口ごもるレイリア


「まずは生きる為に生活に必要な事柄を学ぶのです。まずはそこから始めなければなりません」


ユリアナの言葉はあまりにも正論だったので、レイリアはそれ以上言う事が出来なくなっていた。


「わ、分かったわよ」


不貞腐れたように言うと、レイリアは食事を再開した……。




――食後


 レイリアは食事が済んだ後の片付け方を指導してもらうと、次に待っていたのは薪割り作業だった。


この敷地内にも数本の木が生えている。ユリアナの話では、ここに生えている大木は切り倒しても、どういう仕組みになっているのかは不明だが、翌日には元通りの姿に戻っているそうだ。まさに驚きである。

ユリアナは斧にも質量変換の魔法をかけてくれたので、何とか斧を持つことが出来た。ユリアナは一番細い木を探し、その木を切り倒すように言った。


「もう、何でこんな事までしなくちゃならない訳!」


レイリアはヒステリックに喚いている。するとユリアナが冷静に諭す。


「いいですか、薪が無いと困るのは貴女ですよ。どうやって火を起こすのですか? 火が無ければ料理も作れないし、お湯を沸かす事も出来ないのですよ。貴女には火を作り出せる魔法が使えませんよね?」


「く……」


仕方が無いのでレイリアは斧を振り上げるしかなかった――

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