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2-4 労働に汗を流す姫 1

 朝食を食べ終えるとユリアナはレイリアを連れて敷地内にある物置へと向かい、戸を開けて中に入った。小屋の中には様々な農耕器具が置いてあるばかりか、野菜の種や肥料等も沢山用意されている。


「レイリア、まずはそこにあるスコップと鍬を持ってついていらっしゃい」


ユリアナは自身のスコップ、鍬を持つと指示した。


「う……お、重い……。ねえ、重くて持てないのだけど!」


レイリアは言われたスコップと鍬を持とうとしたが両方とも重すぎて、とても持てたものでは無かった。


「あら、そうなの? 困ったわねえ……。あ、それならいい方法があったわ」


ユリアナはレイリアのスコップと鍬を握りしめると、祈りを込める。すると2本とも一瞬眩い光を放った。


「何をしているの?」


するとユリアナは先ほどのスコップと鍬をレイリアに手渡した。


「さあ、持ってごらんなさい」


言われた通りにスコップと鍬を持ってみると驚く事に先程とは違い、軽くなっている。


「え! 何故こんなに軽くなったの!?」


「そのスコップと鍬に質量変換の魔力をかけたのよ。これなら貴女も持てるでしょう?」


「そうね……。と言うよりは魔法でこんなに便利な事が出来るなら、わざわざ畑なんか作る必要ないんじゃないの? 料理を出せる魔法だってあるはずでしょう?」


「いいえ、それでは鍛錬になりません」


「否定しなかったって事はあるのよね? 勿体ぶらないで教えなさいよ!」


(ああ……また私はおばあ様に酷い事を言ってる)


けれど、この口からついて出て来る言葉をレイリアは止める事が出来なかった。


「いいですか、レイリア。人間は苦労しなければ成長しません。何かを成し遂げるにはどんなに辛くてもそれをやり遂げなければならない事もあるのです。これは貴女の精神力を鍛える為に必要な事なのです」


あまりにも真剣な眼差しのユリアナを見て、レイリアは黙って頷くのだった。



その後、レイリアはユリアナに畑の耕し方を教えて貰いながら太陽が真上に上るまで一生懸命畑を耕し終えた。

ふと、レイリアはある事に気がついた。


「ねえ、季節はもう秋から冬になろうとしているのよ? 今更畑に植えて育つ種なんかあるの?」


「大丈夫よ、ここは外界から閉ざされた空間だと言ったでしょう? 魔力によって1年中快適な季節になっているのよ。だからどんな種を植えても必ず育ちます」


「ふーん、まさかそこまで便利になってるとはね~」


「では、まずジャガイモ・トマト・キャベツ・そして麦を植えましょうか?」


ユリアナはそれぞれ袋から種を取り出して蒔き始めた。

レイリアもそれに習って同じように蒔く。そして土をかぶせて畑の側にある井戸からポンプを引いて、ペダルを踏んで水を撒いた。


「この種は私が特別に魔力を注いで作った特殊な種です。1週間もすれば収穫出来ますよ」


「1週間!? それは確かに早過ぎるけど……。それまでの食糧はちゃんとあるのでしょうね?」


「ええ、大丈夫。氷室には野菜や小麦粉が備蓄されているから問題ありませんよ。それではレイリア、これから昼食を作りましょう」


「ええっ!? 疲れたから少し休ませてよ!」


「そんな事を言っていたら食事する事が出来なくなりますよ」


そう言われてしまえば、レイリアは大人しく従うしかなかった――


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