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第九話 ポーと『龍』。

このあたりから、徐々にバトルものっぽい匂いがしてきます。

でもガチガチのバトルが始まるのは……です。

わたしはバトルものも好きですが、そこに至る過程も大事にしたいのです。


では、どうぞ。

               3




 清正の居城にある闘技場で、プランタはなんだか照れ臭そうにしている。

「見せてよ、いつものを」

 とペイズにせかされて、プランタはぐるりと見渡した。

 軽く息を吐いて、一度閉じられてから開かれた目の色が、変わる。

 伸ばされた人差し指と中指を真っ直ぐ前に突き出すと、指先に炎が現れ、次には矢よりも速く的を射る。


 おお、と歓声が上がる。


「いまのがファイヤー・アローという魔法です」

「これができるのはぼくたちの学年ではプランタだけなんですよ」


 闘技場には清正、清秀、朝雲を含めて十八人ほどの白家の者と、八体の式神がいた。

 ペイズの発言を受けて、隣にいる者と何事か話している。

 決して悪いことは言ってはいないと、その目から判断できた。





 ポーたち五人は、一度家に帰って昼ご飯を食べてから、またペイズの家に集まった。

 食べ逃したケーキをぺろりと平らげて、


 遅くても二時にはなんて言っちゃったけど、四十分以上早いな、どうする? 


 とボンザは意見を求めた。

 遅刻は悪いけど、早いのは……でも早すぎるのも……、とミーナが悩みだした。

 それじゃあ小説を読んで時間をつぶしてからにしようとボンザが言った。

 二十分後、呪いの言葉を、今度は五人で揃えて言った。


 着いた先は深夜と同じ祭壇のある部屋だった。

 一人だけいた、陰陽師だと思われる男が、慌てて五人の応対をした。

 三人は、今度は白家の重鎮であろう五人を連れてやってきた。

 来てもらって早々にこんなことを言うのは無礼だとは思うが、お互い時間が惜しい。

 ついてきてくれ。

 今回は貴公らの秘めたる力を知りたい。

 そうそう、貴公らの身に秘められたる力のことを、わしらは『龍』と呼ぶことにした。

 黒家が虎ならわしらは龍じゃ。

 よかろう? 

 時間が許せば盤上遊戯についての説明もしたい。

 すまぬが、よいか? 

 

 五人は了承した。


 闘技場へ行く道すがら、五人は深夜では闇に隠れていたせいで見られなかった城の豪華さに驚いた。

 異国の文化に精通してはいないが、自分たちの知る城とはまったく違った建物に、あちらを見て驚き、こちらを見て感心した。

 それに、うわ、おお、へえ、ほお、と言っている五人の少年少女に、自然、白家の者たちの警戒心はひとつふたつと解けた。





 的はあっという間に炭になった。


「見事な術じゃ」


 清正が手放しで褒める。


「でも」

 とプランタは言う。

「これができるのはこの中ではぼくひとりだけで、ペイズとミーナちゃんはファイヤー・ボール、ボンザとポーはファイヤー・クローっていう魔法になるんです。アローよりボール、ボールよりクローが難易度は下がります」

「よい。十分じゃ。それに、貴公らの持っている不思議な力は、これから明らかにするのじゃ。それで今回の目的は果たせるのじゃ」

「大将軍様、不思議な力って、魔法術のことじゃなかったんですか?」

 清正に、ペイズは訊く。

「うむ。違うのじゃ。たしかにプランタの炎は不思議な術じゃった。しかし、ここ二年の御前試合、盤上遊戯で敵方が見せた術とは、また違っておるのじゃ。おそらく、プランタの術は大いなる武器として役に立つではあろう。あろうが、おそらく、それだけでは勝てぬのじゃよ」

 五人は軽い衝撃を受けた。清正が続ける。


「朝雲、準備を」

「仰せのままに」


 朝雲の指示で、その部下らしい数人が五人の前に、正方形の枠組みの中に砂を敷いたものを用意する。


「これはホムラ国に伝わる、砂占術といってな、本来はよわい十二になる男女が行う、その者が持つ力を砂に示して、戦場いくさばであるいはまつりごとで、いかように働くのかを知るための、儀式なのじゃ。わしも清秀も、わしらの先祖様たちもやったものじゃ。やり方は簡単じゃ。心の内で我の力を示せ、と繰り返し、雑念を排除し、立てた人差し指を敷かれた砂の中央にそっと置くのじゃ。すると砂が動き、その力を記す。砂が文字を描くのじゃ。どうじゃ、簡単であろう。それでは、ひとりずつやってみてくれ。我の力を示せ、雑念を排除、人差し指を中央に、じゃぞ」


 一番に前に出たのは、ボンザだ。


「大将軍様、順番に決まりはないのですね」

「うむ」

「じゃあ、おれからでいいな」


 四人は肯く。

 ボンザは楽しみで仕方がないという顔をしている。

 深呼吸をし、言われた通りに人差し指を砂の中央にそっと置いた。


 砂が、意思を持っているかのように動き出す。

 これにはボンザも驚いたが、怖がっているのではなく胸を躍らせているといった表情をした。


 砂が動きを止めた。


 もちろん、ボンザには何と書いてあるのか読めなかった。

 朝雲が歩み寄って、見た。


「剣。大将軍様、つるぎと出ています」

「ボンザ、貴公の龍は剣。盤上遊戯では剣を用いて戦い、我らを勝利に導いてくれ」


 剣はボンザの一番得意とするところ。

 自信も満々に、はい、とボンザは返事をする。


 そうして、四人も順番に砂占術を行った。


 プランタの秘めたる力、龍は付与。

 対象に力を与える、もしくはその者が持ちたる力を増幅する力で、先ほど見せた魔法術とも相まって、中衛が適任だろうと、清正は思った。


 ミーナの龍は歌と出た。

 その通りに歌で味方の能力の強化、敵の能力の弱体化を図る力だ。

 ミーナも歌を歌うことはあるが、得意というわけではないので、自信なさげに恥ずかしがっていた。


 ペイズの龍は非常に珍しいもので、金塊だった。

 その名の通り、無から金塊を出現させる力だ。

 盤上遊戯では傭兵を雇うことができ、金塊であれば特上の傭兵を雇うことができるのだ。

 自軍の傭兵は盤上に一体のみの制限はあるが(そして一試合につき二体までという制限はあるが)、その者が倒れればまた次の傭兵を雇うことができる。

 しかも傭兵が盤上にいる間は、雇い主であるペイズは盤外にいられるので倒される心配はない。

 さらに、特上の傭兵は一体でも猛者二人を同時に相手して引けを取らないという強さなのだ。

 これには白家の者たちはやんややんやと褒めたたえた。

 自分の力の凄さを理解できてはいないのだが、ペイズは鼻を高くして、手を振って応えた。


 最後に、ポーの番が来た。


わたしはけっこう引っ込み思案な性格なので、

ボンザのような活発というか積極的な性格の人に

少し憧れます。いや、憧れるは言い過ぎかも。

でも積極的はよくて消極的が悪いって考え方は危険だと思います。

みなさんはどう思いますか?  


では、またお逢いしましょうね。

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