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第七話 ポーと採決。

渦巻に飲み込まれ、たどり着いた先が見知らぬ場所で、

いきなり戦ってくれと言われても……というのが普通のリアクション。

そしてポーたちは普通の少年少女。果たして。


では、どうぞ。

「なんでそんな目に」

「しっ。声が大きい」

 とプランタはボンザをたしなめる。

 そして五人は顔を寄せ合った。


「自分たちの運命を左右する盤上遊戯。しかもそれはぼくたち召喚者の働きが勝ち負けに大きくかかわってくる。となれば、ぼくたちが断ったら、白家の重要な秘密を知ったぼくたちを野放しにすると思うかい?」

「しないだろうね」

「だろ。そして、なぜこの、窓のない部屋に通されたか。それは万が一にも逃げられないためにだよ。きっとこの周りには剣を持ったホムラ国の騎士たちがいる。たぶんだけど確実に。ぼくたちが断ったら、一斉に斬りかかってくるつもりなんだ」

 ペイズの返事を受けて、プランタは言った。

「それじゃあわたしたちはいやおうでも引き受けなきゃいけないの?」

 と言うミーナは青い顔をしている。

「おれは引き受けてもいい。でも、自分たちの思い通りにならないなら殺すってやり方は気に入らない」

「本当に殺されるの?」

「わからない。だからかもしれないって言ったんだ。でも可能性は否定できない」

 ボンザはやはり乗り気だったのだが、ポーは不安になる。

 プランタは難しい顔をして、続ける。

「でも、向こうも必死で、とても困っていることもたしかだ。だからぼくたちに大将軍ともあろう人が、頭を下げてまでお願いしてきたんだ」

「それはそうだよね。ぼく、大人に、それも大将軍なんて呼ばれてる偉い人に、頭を下げてお願いされるのなんて、初めてだよ」

 ポーの心は揺れた。

「召喚者は不思議な力を持ってるって言ってたよね。つまり僕たちが魔法術を習っているって、知ってるのかな?」

「どうだろう」

 ペイズの問いに、プランタは首をひねる。

「単刀直入に訊いてみようぜ。おれたちが断ったらどうするのか。盤上遊戯でおれたちはどうすればいいのか。あ、あと、おれちょっと調べたんだけどよう、おれたちの時代には白家はもういないらしいぜ。いや、血は続いてるのかもしれないけど、大将軍とか、そういう仕組みっていうか制度っていうかは、なくなってるらしい。ということは、ここがホムラ国で、大将軍がハクなら、いまがいつの時代なのかってのも、気になるよな」

 ボンザは自分の知識を見せることができて上機嫌になる。

「でもそれは伏せておいたほうがいいよ」

 プランタが言う。

「どうしてだ?」

 ボンザは説明を求める。

「ぼくたちの世界では白家がなくなってるなんて知ったら、清正さんたちはどう思うと思う? それに、ぼくいま気が付いたんだけど、ここは僕たちの世界なのかな? つまり、ぼくたちが生きている世界と同じ世界、同じ時代のホムラ国であるっていう可能性は、いま、ボンザが消してくれたよね。となると、ここは過去の、ぼくたちの世界の、過去のホムラ国なのかもしれない。ぼくたちはタイム・スリップしてしまったのかもしれないでしょ。それか、みんな、パラレル・ワールドって知ってるでしょ? ぼくたちはあの渦巻きを通って、ぼくたちの世界のもうひとつの、裏側、みたいな世界に迷い込んでしまったのかもしれない。どちらにしろ、もしくはどちらでもないにしろ、ぼくたちがぼくたちの世界に戻るためには、陰陽師の朝雲さんの力を借りて、もう一度、あの渦巻きに吸い込まれなくちゃ、いけないんじゃないかな。そのためには、協力するしか道はないんじゃないかな」


 プランタの言うことを、みな真剣に聞いていた。


「おれは協力してもいいと思ってる。困ってる人に助けを求められて、それを突っぱねるなんて、男のすることじゃないからな」

 ボンザが言う。

「ぼくも協力するのは、いやってわけじゃないけど、戦うのに斬られても死ぬことはないって、どういうことなのかな?」

「な。わかんないことだらけだな」

 ポーの発言に、ペイズが答える。

「ミーナちゃんの苗字との関係性も、知りたいよね」

「それは待って。それはわたしが頃合いを見て尋ねるから、いまは訊かないで」

 ペイズは話しているうちに少し落ち着いたようだった。

 でもミーナは、口調はやわらかかったのだが、意外と思えるほど強く止めた。

 ペイズはうん、と肯いた。


「じゃあ、決を採ろう。協力してもいいと思う人は挙手しよう。賛成の人」

 言い出したボンザはさっと手を上げる。

「もしもぼくたちが反対しても無事に元の世界に帰してくれるって言うなら」

 とプランタが条件を付けて手を上げる。

「ぼくも、別にいいよ。剣術と魔法術の実践だと思えばいいわけだからね」

 とペイズも手を上げる。

「わたし怖いけど、わたしが力になれるんだったら」

 とミーナも手を上げる。

 みなの視線がポーに集まった。

 じっと見る四人。

 見られているポーは視線を痛く感じていた。


「わかった。わかったよ。ぼくも賛成する。盤上遊戯で白家の人たちを助けるよ」

 半分はやけくそで、ポーも手を上げる。

「よく言った、ポー。それでこそ男だ」


 先ほどまでのひそひそ声をやめて、ボンザはポーの頭をぐしぐしと撫でた。


「やめてよ、ボンザ」

と言いながらポーは笑って、みなも笑顔になった。

 こちらから声をかける前に、朝雲が襖を開け、意見はまとまりましたか? 

 と訊いてきた。

 はい、と五人の声は揃う。


ポーたちは白家のために戦うと決めました。

不安なことだってあるでしょう。剣術や魔法術を学んでいるとはいえ、

まだ十歳。小学五年生の歳という設定です。


さあ、これから、です。



では、またお逢いしましょうね。


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