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第二十八話 盤上遊戯 ~智~

第一戦、負けてしまった白家の戦士たち。

でもまだ終わってはいません。

わたしたちも、つらいことがあってもまだ人生は続くのです。

白家の戦士たちは第一戦を終えて気になったことがありました。

それは何なのか? 


では、どうぞ。


               7




「ごめんなさい。ぼくのせいで」

 ポーがうつむく。

「いや、ポーに落ち度はない。入れ替わりをさせられなかったわしのせいじゃ」

 清正がかばう。

「それに、過ぎたことを悔やんでもやり直すことはできぬ。それならば、これからどうするかを考えようぞ」

 清秀が言う。

「そうだぜ、ポー。さっきはもう一押しってところまでいったんだ。次は勝てるさ」

 ボンザが励ます。

「それにしても、あのギンってやつ。普通、女の子を狙うかな」

 ペイズが怒る。

「それもそうだけど、一振りで三人を薙ぎ払ったあの剣技。ただものじゃないね」

「そうなのだ。やつが一番の曲者なのだ」

 プランタに豪山が答える。

「それに、女子とはいえ盤上に立てば戦士。決して卑怯ではなく、立派な作戦なのです」

 朝雲が付け足す。

 そして言う。

「大河めが同じ作戦で来る可能性も、否定はできません。ギンを早々に戦いに引きずり出さねば、また二の舞になってしまいます。前衛に出てくれればありがたいのですが、もしも中衛に控えたならば、犠牲は覚悟して、槍の陣での戦いを提案します」


 槍の陣とは攻めの陣。

 槍の穂先のような陣形で、一点集中で突破し、一気に片を付けるのだ。

 そのぶん、防御面では弱い。


「大将軍様、恐れながら申し上げます。ポーには悪いのですが、わたくしを舞台に立たせてはいただけませんでしょうか?」

 豪山の右腕、田島双迅が申し出る。

「ポーを控えの一番手とし、わたくしを槍の先端にして、たとえわたくしが敗れても、若君とボンザで攻めれば、きっとギンの首、落とせることでしょう」

「ふむ。たしかにそれもよい作戦じゃ」

 

 清正は答えるが、その案を採用するか否か、鵜久森兄弟に意見を求める。


「次を落とせば我らの負け。答えは慎重に考えてからでよろしいでしょうか?」

 そう言って清正の許可をもらい、ふたりは顔を寄せて意見を出し合う。


「そうじゃ。向こうの召喚者と戦った者たちに訊きたい。やつらはどうであった? また戦っても勝てそうか? 龍を持たぬ者でも勝つための糸口などは、あったか? 些細なことでもよい。気になったことがあったなら教えてくれ」

 清正は尋ねた。

「ジェンカの力はたしかに強かったです。でもスピードはそんなに速くはなかった。力に力で対抗するのではなく、速さで戦えば、龍を持たなくても勝てると思います」

 ボンザは言った。

 清正は肯いた。

「ペイズはどうじゃ。貴公は召喚者をふたりも倒した」

「ネースの力、言霊傀儡は、言葉を発しなければ発現しない力。できれば長距離がいいけど、せめて中距離からでも攻撃できる人が戦えば、あの紫の煙に巻かれることもないと思います。ポマティも近距離の戦闘型だから、近づかれる前に片を付ける戦い方がいいと思います」

「しかし、われらは魔法を使えぬゆえ、朝雲にかかる比重が大きくなってしまうのう」

「大将軍様、またぼくに戦わせてください。と言っても、ぼくの雇った傭兵が戦うんですけどね」

「なに。ネースを倒したときの戦いぶりは見事であったぞ」

「ありがとうございます」

「プランタはどうじゃ」

「ウィルソンの風に乗せた毒などの状態異常攻撃は、ぼくの風の魔法で無力化できます。でも、二本の小刀での剣技は意外と巧みです。龍を持たない人が戦うときは、その動きに惑わされぬよう、先に攻めて後手には回らないようにするのがいいと思います。でも、それでも正直手ごわいと思います」

「うむ」

「大将軍様、わたくしを」

「待っておれ」

 双迅の申し出を、清正は途中で遮る。

 鵜久森兄弟の話し合いが、まだ終わってはいないのだ。


「あの、大将軍様。些細ささいなことでもいいんですか?」

 ペイズが少しためらいながら言う。

「うむ。よいぞ。言うてみよ」

「金剛の戦士がポマティを倒したときと、ぼくがネースの首をはねる前に、つぶやいた言葉があるんです」

「言葉とは?」

「『くんれ』と『はしら』です」

「ああ、それならおれのときも、ジェンカが『きいい』って言った」

「大将軍様、わたくしのときも『れなうぐ』と言いました」

 ボンザの後に続けて、豪山が言う。

「ぼくのときも、ウィルソンが『ぞてわ』って言いました」

 プランタも思い出したように声を上げる。

「わたしのときも『どいゆ』と、波動はたしかに言いました」

 朝雲も、話し合いを中断して参加する。

「どういう意味じゃ?」

 清正が問う。

「はしらは柱。きいいは単なる奇声でしょう。しかしそのほかは、どういう意味じゃ」

 豪山は首をかしげる。

 みな考え、沈黙のまま時間が過ぎる。

 誰も謎を解き明かせない。

 と、ポーの眼が光った。


「ぼく、わかったかもしれない」

「なんじゃ。言うてみよ」

「まず、敵を倒した順番に並んでみて」

 

 言われるまま、ボンザ、プランタ、ペイズ、朝雲、豪山の順に並ぶ。


「そして、敵が言った三文字、豪山さんだけ四文字の言葉を一文字ずつ、言ってみて」

 わけがわからぬまま、ボンザから言う。

「き」

「ぞ」

「く」

「は」

「ど」

「れ」

「次は二番目」とポー。

「い」

「ここで区切って」とポー。

「て」

「ん」

「し」

「い」

「な」

「い」

「そして三番目」と、またポー。

「わ」

「れ」

「ら」

「ゆ」

「う、ぐ」

「貴族は奴隷。天子いない。我ら遊具って意味だよ」


 謎を解いたことでポーは鼻を高くした。

 だが、その言葉の意味に、清正は、いや、白家の者たち全員が、青ざめずにはいられなかった。

「こちらを見よ。悟られる」

 薄布の向こうにいるはずの天子様を凝視する豪山に、清正は注意した。


 「どういうことじゃ」

 豪山が言う。

「我らを混乱させようという腹積もりでは?」

 との氷雨の発言は、

「それならばもっと上手いやりようがあろう」

 と兄の朝雲によって否定された。

「たしかにそうじゃな。しかし、悟られぬようにしてまで我らに伝えたかった、つまり、事実、と受け止めるのも、それはちと早急ではないか?」

 と清秀が言う。

「いや、事実なのかもしれぬ」

 清正が重い口調で言う。

「憎き黒家の大河は、大将軍になったいまも、なる前も、憎らしい男ではあるが、卑怯な男ではなかった。そやつが言うのじゃ。悟られぬよう暗号として。そこまでしても、伝えたかったのじゃろう。しかし、それでこの盤上遊戯、我らにどうしろというのじゃ」

「父上、あと数分で、第二戦が始まってしまいます。ポーの件は、いかがいたしましょうか?」


 清正は軍師の朝雲と、そして参謀の氷雨と、目を合わせる。ふたりは肯く。


「うむ。……済まぬがポー。いったん控えに回ってくれ。しかし有事の際には一番に出てもらうゆえ、気持ちを切らすでないぞ」

「はい」


 正直、ポーは少し安心した。


 槍の陣の配置を決めて、白家は盤上遊戯の第二戦へと向かう。


わたしは壊れやすいので、困難にあったとき足を踏み出すことは簡単にはできません。

心無い人に何と言われようとも、それでも自分のペースで歩いています。

第二戦に向けて歩き出した白家の戦士たち。わたしも勇ましくなりたいです。

どうなるのかと気になってくださっている方に、ありがとうございます。と言いたいです。


では、またお逢いしましょうね。

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