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第二十六話 盤上遊戯 ~それは祈りにも似た~

おはようございます。こんにちは。こんばんわ。

なんだかんだでもう来年へのカウントダウンが始まっていますね。

こんばんわの「わ」は「わ」ではなくて「は」ですか?

教えていたけるとありがたいです。


では、どうぞ。

 ポマティは残った右足で高く跳び、金剛の戦士の頭に手を当てた。

 過剰治癒による攻撃だ。

 金剛の戦士はけられなかった。

 うめきながらもポマティを振り払い、倒れたポマティにとどめを刺す。


 間髪入れずに黒家が動く。

 またもやネースの言霊傀儡だ。

 片膝をつく金剛の戦士を紫の煙が覆う。

 栄が癒し手で言霊を跳ね返えせるようにし、光が怪我の治癒をする。

 煙の紫が先ほどよりも濃くなったように見える。

 ネースが嗤い、ペイズが言う。


「大将軍様、乗っ取られました」


 清正の決断は速かった。


「金剛の戦士との契約を解除する」


 舞台から金剛の戦士が消えて、ペイズが現れる。


「あの、こんにちは」


 金剛の戦士のあとでは弱弱しく見えてしまうペイズに、ネースは油断した。

 その0・何秒かの隙で、勝負はついた。


「ファイヤー・ボールからの、閃光剣」


 ネースの首は飛んだ。


「ぼくのこと見て、弱いって思ったでしょ。ふふん」


 と得意になったペイズは、

 

 あれ? 


 と思った。

 ポマティもネースも死に際に何かを言ったのだ。

 断末魔とも思えないそれが、ペイズの心に引っかかった。

 引っかかっていると、ペイズの体が舞台から消えていく。


「え、なんで?」

 とペイズ。

「金剛の戦士がひとり、ペイズがひとり、合計でふたり倒したことになるゆえ、ペイズは舞台から降りることになるのじゃ」

 清正が言った。

「そうなんだ。残念」

 と、あまり残念ではなさそうにペイズは言った。


 ポマティとネースが倒れ、ペイズが消えて、白家八人、黒家六人がとなった。

 残っているのは、白家はボンザ、清秀、豪山、ポー、朝雲、ミーナ、栄、光。

 黒家はギン、将成、叶、葉、織子、陰陽師のあまね波動はどう

 黒家は体制を立て直すためいったん引き、白家も陣形を整えた。

 三番勝負の盤上遊戯の第一戦目が、終盤へと向かう。


 舞台から降りたプランタとペイズは、舞台の袖で休んでいた。

 その場所はどうやらその区域から外には声が届かないようなつくりになっているらしい。

 

 大将に助言できないようにするためだろうねと、


 プランタは言った。


 なるほど。

 と、ペイズは思った。


「刺されたとこ、大丈夫?」

「うん。ほら、傷もないんだ。でも刺されたときに痛いって感覚はあったんだよ」

「ふうん。不思議だね。どんな仕組みになってるんだろ」


 緊張から解放されたふたりは、そんな会話をしていた。


 舞台では、動きがあった。

 黒家の陰陽師、波動が、式神を使って攻撃をして、それを白家の陰陽師、朝雲が式神の火山を使って受けたのだ。

 波動の式神は体長一メートル半ほどの蟷螂かまきりだった。ポーたちの国にも似たような魔物はいるし、白家の面々も幾度となく戦って見ているので、驚きはしなかったのだが、手強さは知っていた。


 双方、印を結び呪文を唱え式神に力を送る。

 金棒を振り回し攻撃する火山と、両手の鎌で攻撃する蟷螂。


 陰陽師同士の戦いは精神力の戦いだ。

 式神が手傷を負えば自らの体にも傷を負う。

 念を込め呪文を唱えれば、そのぶんだけ式神は強くなる。

 集中力が極まれば極まるほど、精神力は削られる。


 火山の金棒が蟷螂の左の鎌を破壊し、蟷螂の右の鎌が火山の左腕に深く食い込む。

 片手になっても印を結び続け、切らすことなく呪文を唱える。

 癒し手が傷を癒し、ぎりぎりになった精神力を歌で楽にする。

 また両手で印を結ぶ。


 式神たちも、自分の主に応えようと力の限りで戦う。

 浅いが、傷は増えていく。


「頑張れ、火山」


 ポーは声援を送らずにはいられなかった。

 火山が頑張っていることくらい知っている。

 死力を尽くして戦っていることも、知っている。

 それでも、いや、だからこそ、最後の最後で笑えるために、頑張れと、ひとりで戦いながらしかしひとりではないのだと、気持ちを込めて

「頑張れ」

 とポーは言うのだ。


 ポーの気持ちは火山に、そして朝雲に届くのか。


 雄叫びを上げて振り下ろされた火山の金棒が、蟷螂の頭を捉える。

 同時に、蟷螂の鎌が火山の片方の肺にまで達する。相打ちだ。

 

 だが、まだ終わってはいない。

 

 陰陽師同士の念力での戦いだ。

 もう精神力が限界に達していて、遠くに飛ばすことはできない。

 印を結び呪文を唱え、一歩一歩と足を運び、念を飛ばす。

 どちらの念も当たらなかった。

 しかし、ふたりは前のめりに倒れた。

 引き分けとなって舞台から消える前に、ポーは言った。


「朝雲さん、火山、かっこよかったよ」


 その声は、ふたりには届いたのだろうか?


たとえ下を向きながらだったとしても、

歩みを止めてしまっていたとしても、

泣きながらでも、

頑張っている人は格好がいいと思います。

わたしもそうでありたいです。


では、またお逢いしましょうね。

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