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第二十二話 ポーと贈り物。

わたしの住んでいる地域では風が強いです。

みなさんがお住まいの地域ではどうですか?

今年の冬はまだ冬っぽくない感じがするのですが、

積もるほどに雪に降られても、それはそれで不満を言ってしまう、

わたしはまだまだ至らない人間……。

だから頑張ります。少なくとも頑張ってるつもりです。

今月の合言葉はズバリ、「頑張る」で行きます。

でも頑張りすぎるとしわ寄せがくるので、「ほどほどに」を頭につけます。


では、どうぞ。

 週が明けて次の月曜日に、ポーは喜んだ。

 魔法術の授業で、ファイヤー・ボールの魔法が成功したのだ。

 最後のひとりにはなりたくないと努力し、プランタたちがそれを支え、結局は最後になってしまったのだが、できたのだ。


 何よりそれが嬉しかった。

 そばで見ていたプランタたちも、手放しで喜んだ。

 教師もポーの努力を褒めた。


 クラスの何人かは白い目で見ていたのだが、ポーはそんなものを無視しようとした。


 魔法が成功したことや、それを一緒に喜んでくれる友達がいること。

 ポーは少し前のポーから変わろうとしていた。

 いや、どんどんと変わっている最中なのだ。


 魔法術の授業の後も、昼食中も、学校が終わって公園で宿題をしているときも、ポーの感動は収まらない。

 こんなときには足をすくうような出来事が起こりそうなものだが、起こらない。

 

 宿題を終えて、さあ帰ろう、そしてまた遊ぼうとなった段で、女性の悲鳴が聞こえた。

 この平穏なグッドラック・アイランドでは珍しく、白昼にひったくりが行われたのだ。

 五人は反射的に駆け出した。

 一目散に逃げる犯人の男は、住宅街に向かう。

 大人と子ども、距離はなかなか詰まらないが、一キロも走るとさすがに男の息は切れる。

 呪文が届く距離になったとき、プランタは麻痺まひの魔法を唱えた。

 見事、ひったくり犯を捕まえたのだ。

 女性はいたく感謝した。

 新聞社からも取材を受け、さらにはグッドラック・アイランドの聖騎士団から表彰されることにもなったのだ。

 ポーたちは一躍英雄になった。

 それぞれの家族も手放しで喜び、また、褒めたたえた。


 そのようにして九日が経ち、ポーたちはまたペイズの家に集まった。

 ペイズの母親は、小さな英雄さんたちに、とジェイア大陸から輸入された高級なお菓子をふるまった。

 ボンザは遠慮もなしにがっつく。

 ポーたちも皿に盛られたお菓子を食べ、あれよあれよと平らげる。

 町を歩けば知らない人に声をかけられ、買い物に行けばおまけをしてもらえるようになって、五人はちょっとした有名人だ。

 少しばかり浮かれてしまっても、仕方がない。


「ごちそうさま。それにしても、麻痺の呪文なんてよくできるよな。飛び級できるんじゃないか?」

「しないよ。もしもその話が来ても、ぼくは断るよ」

 感心するボンザに、プランタは答える。

「聖騎士団の最年少の入団記録って、何歳だっけ?」

 ペイズが訊く。

「十五歳のはずだわ」

 ミーナが答える。

「狙ってもいいんじゃない?」

 ポーが言う。

「いやだよ。ぼくはみんなと同じ学生時代を送りたいんだ。そりゃ、いずれは聖騎士団に入団したいさ。でも、こうやってみんなと過ごす時間をなくしてまで聖騎士になりたいとは思わない。大人になってから、子ども時代を振り返って楽しかったって、いい時代だったって思えるように、ぼくはみんなと一緒にいたいんだ」


 プランタがそういう思いでいたことに、みな感銘した。

 学年で一番の優等生であるプランタがそういう考えでいることは、学年で最下位を争うポーにしてみれば、せっかくのチャンスをふいにするかのような行為にも思えたが、優等生のプランタにはプランタなりの悩みがあるのだと、彼は彼なりに苦しんでいるのだと、なんだか気持ちが軽くなった。

 自分だけではないのだと。


「みんな、そろそろだよ」


 懐中時計を懐に仕舞い、ペイズが箱を取りに立ち上がる。

 テーブルに置き、箱から指輪を取り出す。

 そして指に嵌める。


 時を渡るときに、五人が自分たちの世界からホムラ国へ移動するまでの0・何秒かの間に、目を開けていると見える何かがあることに、ポーは気が付いていた。

 ほんの一瞬なので、それは見間違いといえばそうなのだろう。

 でも、瞬きをしたら見逃してしまうほんの一瞬に見えるそれの謎をはっきりさせようと、ポーは目を見開くのであった。


 朝雲に迎えられ、ポーたちは清正のもとへ行った。


「おお、よく来た。貴公らは時間には正確なのだな。まあ、休まれよ」

 休まれよと言ったそばからで悪いが

 と清正は人を呼んだ。

「今日は貴公らに贈り物があるのじゃ」


 清正の贈り物、それは盤上遊戯で身に着ける鎧であった。

 図らずも五人は声を上げた。

 ポーたちの知るそれではなく、異国の香り漂うその鎧は全身を白に染められ、胸に焼き印されている白金色の「みやび」の文字も(意味はわからないが)格好がいい。

 五人はいっぺんで気に入った。


「そうか。それはよかった。細かいところを手直しする必要がある。一度着てみてくれ」


 白家の人たちの手を借りて、五人は鎧を着た。

 たしかに、細部に違和感がある。

 それを鎧の製作者であろう人物がひとつひとつ書き止める。

 小柄だが腕が太く、筋張った指には傷やしわがいくつも刻まれ、鋭い眼光をしていて、職人であると風貌が物語っている、そんな男だ。


「四時間とかからずに直します」


 そう言って、部下に鎧を運び出させて退席した。


「あの鎧、見た目よりもずっと軽いですね」

 とプランタが言った。

「そうであろう。あの鎧にも月のしずくが使われておるのじゃ」

「そうなんですか。万能なんですね、月のしずくって」

 とプランタが答える。

「古来から神の水と言われるくらいじゃからのう」

「あれから、月のしずくが溢れることはあったんですか?」

 とポーが訊く。

「それがじゃな、今度は出が悪くなってしまったのじゃ。反動かもしれぬ」

 清正は答えて難しい顔をした。

 が、すぐに表情を変えて、

「まあ、またいつか元通りになるじゃろ」

 と楽観した。

「父上、だからといってあまり大盤振る舞いなさらぬよう」

「わかっておる」


 決まりが悪そうに答えた清正は、鎧の直しが終わるまでの間、盤上遊戯の稽古をしようと提案した。

 そしてそれは彼の中では決定事項であった。

 闘技場では、豪山が双迅を相手に汗を流していたのだ。


思いがけない大将軍からのプレゼント。

そりゃあテンション上がるでしょう。

じわじわと近づいています。あれに。

楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。


では、またお逢いしましょうね。

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