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第二十一話 ポーと大将軍。

名前を出すとまずいかもしれないので伏せますが、

面白い小説に出会いました。いままでこれを読まなかったのは損だ!

って思えるくらいの小説です。

みなさんにとって、わたしの小説もそう思ってもらえるくらいの

面白いものを書きたいのですが、もっと頑張らないといけませんね。

だから毎日、頑張ります。よろしくお願いいたします。


では、どうぞ。


 清正が気にかけているのは、ポーたち召喚者の彼らの世界との時間のずれだ。

 すでに十二時間は時差が生じてしまっている。

 盤上遊戯の最長時間はおよそ四時間だという。

 前後の時間を考慮すれば、制限時間ギリギリの六時間は必要になる。

 前日に最終の打ち合わせと必勝祈願をするので、これにも四時間は欲しい。

 つまりどう考えても最低二十四時間、こうして会議をしたり盤上遊戯の稽古をしたりする時間を計算すれば軽く三十時間以上は召喚者に負担をかけることになるのだ。

 

 一日二日くらいなら、というのが五人の総意だ。

 でもその言葉に甘えるわけにはいかぬと清正は思うのだ。

 軍師の朝雲にも意見を求めたのだが、朝雲の見立てでは三十時間はおろか、四十時間にも届こうかとなるらしい。


 それなら夕餉に時間を取ったのはそもそもの間違いでは? 

 

 との氷雨の意見はあっさりと突っぱねられた。

 せめてものもてなしなのだし、白家の側にふた心はないと知ってもらうためでもあるからという理由だった。

 たしかに五人は夕餉を共にして多少なりとも打ち解けられたと思ったのだから、間違いではなかったのだ。

 五人がホムラ国にいる時間をできるだけ短くし、かつ盤上遊戯での準備を万全にする。

 その案を模索するのが前回からの主題だ。


 戦の布陣は決まっている。

 戦術も決まっている。

 五人に盤上遊戯の経験を積ませるための模擬戦も、もう一度くらいはやりたい。

 でも時間は取らせたくはない。

 豪山はまた五人に意見を求めた。

 プランタは五人を代表して、


 ぼくたちとしても盤上遊戯に勝ちたい、そのために力になりたい、万全に仕上げるためには二日どころか一週間でも構わない。

 

 と清正に進言した。

 清正は長い時間を使って考えた末、すまぬと受け入れた。


 残りの時間で白家の五人とポーたち五人が闘技場に出て、龍の使い方を演習した。

 何度も行っているうちに上達していくのがわかって、清正は安心する。

 そして清正は、直々にポーに剣の稽古をつける。

 盤上遊戯で戦わぬとはいえ、清正の剣の腕はたしかで、決してお飾りの大将軍ではないと物語っていた。


 その様子を見ながら、清秀は考えていた。


 なぜ、月のしずくが溢れ出たのか? 


 清秀に物心がついてからいまに至るまで、こんなことは初めてだ。

 ほかの者たちのように楽観はしなかった。

 ただ、それを面には出さず、懸案事項として胸の内に留めてくのだ。


 清正は、一度決めたことに対しては迷いはなかった。

 それから三日、合計で五日続けてポーたちを二時間という制限の中で鍛え上げた。

 稽古を終えて汗を拭いながら、


 月のしずくが溢れ出なかったなら、このように稽古もできなかったな、


 と笑った。

 朝雲も氷雨も豪山も、見ていた白家の面々も同調する。

 だが清秀だけは口元に笑みを浮かべつつも、目は別の何かを追っていた。


 五日目、稽古を終えてポーたちが帰り支度をしているときだ。

 空に輪を描いた鳶が一声鳴いたのをみなで仰ぎ見たあとのこと。


「わしも一度、かのように空を飛んでみたいものじゃ」

 と清正が言った。

 ポーたちはプランタの顔を見て、プランタは肯いた。

「大将軍様、隼にならなれますよ」


 白家の面々はみな驚かずにはいられなかった。

 人が鳥になれるなど、夢以外ではありえない話だ。

 ざわざわとする白家の面々の前で、息をのんだ清正が訊く。


「それならばひとつ、頼もうかの。わしはどうすればよいのじゃ?」


 ただ立っているだけで大丈夫です。

 

 とプランタは言って、次には清正を隼に変えて見せた。

 興奮して立ち上がり、白家の面々はみな声を上げる。


 羽をはばたかせてから、清正は飛んだ。

 五十分もしないうちに人間の姿に戻ってしまうから、そしたら上空何十メートルから落下して死んじゃうのに。

 プランタがつぶやくと、清正の家臣たちは慌てふためいた。


 家臣たちの心配をよそに、清正は鳥となって飛ぶ快感に酔っていた。

 だが、プランタたちの時渡りの時間を忘れたわけではなかった。

 五分としないうちに舞い戻り、魔法を解いてもらった。


「なかなかに爽快。また頼む」

 朝雲に注意事項を聞いても

「真か。命拾いしたのう」

 とあっけらかんとしたものである。

 そうして清正は続けた。

「貴公らは貴公らの世界でも盤上遊戯の研鑽に励んでくれ。次はまた長くいてもらいたいがゆえ、貴公らの学校とやらが休みになる日、ゆるりと時間の取れる日に来てほしいのじゃが、いつになるかのう?」

「二日後なら、学校は休みです」

 ボンザが答える。

「ふむ。それではこちらの都合が悪い」

「なら、九日後では」

 とまたボンザが答える。

「九日ならよかろう。また夕餉を用意するでのう。ともに囲もうぞ」


 五人は勢いよく返事をし、一杯に力を蓄えた時の指輪を見る。

 太陽の光を浴びて、白金の指輪は深みのある光沢を彩っている。

 五人はみなあらためて、きれいだと思った。


 五人は声を揃えるため、せえの、と調子を取り、呪いの言葉を言った。


 清正たちにとっては、月のしずくが別名『神の水』と呼ばれる意味がわかるような瞬間なのであった。

 いまのいままでそこにいた者たちが、瞬時に消え去るのだ。

 跡形もなく。

 塵ひとつ残さず。

 顎に手を当てて、


 不思議じゃのう。

 

 と清正は誰に言うともなくつぶやいた。


大将軍とはいっても人の子。童心も、もちろんあって当然だと思います。

鳥になって空を飛んでみたい。いいじゃないですか。

みなさんは、夢が叶うなら何を願いますか? 

世界からすべての不幸がなくなったらいいんですけどね。なかなか……。


では、またお逢いしましょうね。

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