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第十九話 ポーと月のしずく。 其の二

すみません。何の手違いか、昨日小説を掲載するのを忘れてしまいました。

楽しみにしてくださった方がいらっしゃったなら本当に申し訳ないです。

お詫びってわけでもないんですけど、今日は二話、投稿しようと思います。

こんなポカをもうやらないように気を付けます。

気を付けてもやってしまうからポカなんですけど。


では、どうぞ。

                 5




「じゃあ、行くぞ」

 そうしなくても指輪の力は発動されるのだが、五人は円になって手を伸ばし、嵌めた指輪で小さな輪をつくり、呪いの言葉を言った。


 時を渡った先は、やはり前回と同じ場所だった。

 しかし、待っている者はおらず、五人は記憶をたどって外に出て、城の中へと歩いていく。

 最初に出会ったホムラ人が驚いて声を上げて、いま、人を呼んできます、と城内へ駆けていった。

 五人はそこで待つことにして緊張を解いた。三度目ともなると、慣れたものだ。

 すぐに朝雲が額に汗を浮かべてやってきた。


「お出迎えできなくて申し訳ありません」

 と平謝りだ。

「いいんです。ぼくたちはそんなこと気にしていません。謝らないでください」

 みなの気持ちはプランタと同じだ。

「実はいま、不思議なことが起こっておりまして」

「不思議なこと?」

 ミーナが訊く。

「はい。月のしずくが大量に、異常なまでに溢れ出ているのです。大将軍様もそこにいます。案内いたしましょう」


 清正だけでなく、清秀もいた。


「おお、早いな。まだ誰も迎えにはやっておらなかった。すまぬ」

 謝る清正。

「いいんです。どうしたんですか?」

 プランタが訊く。

「見よ。月のしずくが、溢れ出ておる」


 五人が目をやると、器から溢れかえっている月のしずくを、盃ですくって別の器に移しているところだった。

 しかしすくってもすくっても月のしずくが減ることはない。


「どうしてですか? 月のしずくは、そんなに溜まるものじゃないんじゃないですか?」

「それがわしにもわからんのじゃ。朝雲に調べさせているところじゃ。まあ、月のしずくには怪我や病を癒す力もあるからのう、これで民も喜ぶじゃろう」


 そう破顔する清正の後方で、清秀の目は、何かの危険信号を感じている様子だった。


「でもよう、こんなに月のしずくがあるなら、おれたち盤上遊戯までに何回でも来られるよな。ねえ、若君、そういうことでしょ?」

「うむ。まあ、そうなるな」

 清秀の異変にまったく気が付いていないボンザは、得意になって言った。

「月のしずくが溢れても、貴公らがここに留まっていられる時間は同じ。さっそくだが、盤上遊戯の模擬戦をしようぞ」


 清正は月のしずくを配下に任せて、闘技場へと誘った。


 盤上遊戯は、兵が駒となり、大将の指示に従って六十四のマスの中で動くのが決まりなのだ。

 戦うときは自由に動けるが、マスからマスへの移動は大将の指示なしでは、してはいけない。

 もちろん、指示する声を聞かれては作戦がばれて興をそがれてしまう。

 耳に魔法陣を描いて、大将である清正の声が敵に知られることなく届くようにするのだ。

 隣接したマスに接近した敵との戦い方、歌の効果が届く範囲、金塊で傭兵を雇って戦わせる方法、付与の力の効率のよい使い方を教えるために、模擬戦は行われている。

 いまだ正体のわからない了の龍を持つポーは、とりあえずは剣をもって戦うこととなった。

 剣ならば学校の授業でも扱っているし、何度か試した中では一番に戦えたからだ。

 それでも、まだまし、という感は拭えないのだが。

 ホムラ刀を初めて握ったポーは、彼らが使い慣れている剣との違いに、切っ先から柄まで呆けているかのように眺めていた。


「まあ、あらましはこんな感じじゃ」


 そう言った清正は、ポーたちを呼び寄せ、盤と駒を使って盤上遊戯で用いられる陣形のいくつかを説明した。

 これは攻めるときによく用いられる陣形、守りのときによく用いられるのはこういう陣形じゃ、という具合に。


「やっぱりチェスに似てるね」

「貴公らの国の将棋であったな」

「はい」

「ならば話が速くて助かる。ただし今回の盤上将棋では、攻めの布陣で押し通すつもりじゃ。にっくき黒家に泡を吹かせてやろう。貴公らの力、頼りにしておるぞ」


 プランタと清正が言葉を交わし、清正が順々に五人の目を見て言った。

 大将軍というとても立な地位の人物に頼りにされるのは、嬉しくもくすぐったくもあった。

 喉が渇いた、茶を持て、と清正が小姓に言い、一時休憩となった。


「大将軍様、月のしずくの溢れ出るのが、やっと収まりましてございます」

「おお、そうか。して、どれほど溜まった」

「風呂にして浸かれるほどにです」

「そうか。よきこと。またいつ溢れ出るかわからん。しっかりと見張りの者をつけよ」

「は」


 清正の命を受けた家臣はそれを伝え、しっかりと見張るため、また駆けていった。


 それは予告をしてやってくるものではない。

 それとは何か? 

 尿意だ。


「すみません、大将軍様、トイレを借りてもいいですか?」


 ぼくも、ぼくもと、男四人はトイレを借りに行き、ミーナがひとり残った。

 おずおずとミーナが尋ねた。


「あの、大将軍様。大将軍様の奥様のことをお聞きしてもよろしいですか?」

「うむ。よいが、どうした?」

「お名前は、なんと仰るのですか?」

ともえじゃ。よき名であろう。これが本当に美しいのじゃ。天女と見間違えるほどにじゃ。いや実際わしは一目見たときからもう骨抜きにされてしまってのう」

「父上、少しミーナと話をさせていただけませんでしょうか?」

「ん? うむ。よいが」

「ミーナ、こちらへ」


 清秀は手招きして、ミーナを闘技場へ連れだした。


「ミーナ。父上に母上の話を聞くのは禁忌なのじゃ。のろけが止まらなくなる」

「そうみたいね。……ねえ、若君。若君たちの、白家の人たちの中で、海を渡った人っていうのは、いるの?」


どうでしたか? 伏線を張らせていただいたんですけど、

それが重要なのか、そうでもないのか。

別に伏線を張ったからってそれが意味を持たないといけないわけではないと

思うのです。まあ、行間を読んでいただけたらと思います。


では、またお逢いしましょうね。

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