第十七話 ポーと夢うつつ。
大人〇画の俳優さん、麻薬で逮捕。
名わき役。わたしには到底理解できないような
心労があったのでしょうか。それでも許されないことではあるのですが。
大谷翔平さんのすんごいニュースとこのニュース。
どっちにも驚かされました。
では、どうぞ。
玄関に出てきたペイズの母親と簡単な挨拶をしたあとで、本題に入ると、ペイズの母親はペイズを呼んだ。
「ペイズくん、この指輪、知ってる?」
ペイズの手のひらに、ボンザの母親は指輪を乗せた。
母親の陰で顔を青くしているボンザ。
この状況。
ペイズは言った。
「これ、ぼくがボンザくんにあげたんです。ね、ボンザ」
「そう。だから言ったろ、母ちゃん」
「あら、本当だったんだ」
「ちょっとは自分の子どもを信じろよ」
「ごめんなさいね。こんなにきれいな指輪だったから、またなんか悪さでもしでかしたんじゃないかって思っちゃって。ごめんね、ボンザ」
ペイズとボンザに謝って、ペイズの母親に簡単にわけを話したボンザの母親は、夕飯の支度も忙しいでしょうからと、ペイズの家をあとにした。
帰り際、またねと手を振りながらペイズはボンザにウインクし、ボンザはペイズにありがとうと手で合図をした。
「だからもう心臓ドキドキでよう」
また学校帰りにいつもの公園で宿題を終わらせてから、ボンザは話して聞かせた。
ボンザの気持ちがよくわかるので、みな笑いながら共感する。
その日は朝からくすんだ雲が太陽を隠していた。
風は強く、気温は低く、今日は洗濯物は外に干さないほうがよいと判断するのが妥当だった。
ポーたちはみな親に傘を持たされて登校した。
午後になると雲の色は目立って黒くなってきた。
だから公園で談笑している五人の頭に雨粒が落ちてきても、誰も驚かなかった。
五人は傘をさして、話の続きをしながら歩いている。
雨に邪魔されても元気をなくす五人ではない。
今度はポーが話し出した。
「みんな、寝るときに、指輪をどこに置いて寝てる?」
みなそれぞれ答えた。
それを聞いて、ポーは続けた。
「ぼくはね、昨日、指輪をしたまま寝ちゃったんだ。なんとなく指に嵌めて、寝る前には外そう、外そうって思いながら、そのままうとうと。そしたらさあ、気が付いたら、人の声がするんだ。最初はお父さんとお母さんが話してるのかなって思ったんだけど、それにしちゃ近くから聞こえる気がして、寝返りを打ってドアのほうを見たんだ。そしたら、どうなったと思う?」
ポーはここで間を取った。
四人は話の薄気味の悪さに思わず聞き入っていた。
「ぼくは飛び起きたよ。ホムラ国で見た鬼がいたんだ」
「それでどうしたの?」
とプランタが言う。
「慌てて『何してるの?』て訊いて、訊いたけど耳の魔法陣がないでしょ。だから何言ってるのかわからなかったんだけど、ぼくの手を指さしてるから、指輪を外せってことなのかなあって思って、外して顔を上げたら、消えてた」
「うとうと眠って飛び起きたってことは、夢だったってオチでしょ」
ペイズが言う。
「それ以前に、誰に聞かれるかもわからない状況でホムラ国のことを言ったのは、ペナルティものだな」
とボンザはポーの傘を取り上げる。
「やめてよ。濡れる。叱られる」
「でも、夢の中に出てくる魔法かなんかがホムラ国にはあって、指輪をしたまま眠ると、夢に出てくるってことは、考えられない?」
ミーナの小声での発言に、それはあるかもと、今夜試しにみんなで指輪をしたまま眠ってみようかとボンザがやはり小声で言って、ぼくはもういいよと傘を返してもらったポーが小声で答えた。
「だって、ぼくが寝ぼけて夢でも見たんだったらまだいいけど、もしも本当にホムラ国とこの世界がつながって鬼がこっちに来ちゃったなら、大変なことになっちゃうでしょ」
「そうだな。指輪もよう、ポケットにいれたまんまじゃ、いつなくなるかわかったもんじゃないよな。おれ、ちょっと探って、あれ、ない、なんて思ったこと、何回かあるんだ。かといって家に置きっぱなしってのもなんか落ち着かないしな。どこか安全な隠し場所、見つかりもなくしも盗まれもしない場所、ないかなあ?」
ボンザは本当に困っているようだった。ペイズが得意になる。
「ぼくんちは、どう? 金庫もあるし、お手伝いさんがいて家が空になることもないし、万が一泥棒に入られても、お母さんの部屋にならまだしも、ぼくの部屋に宝物があるなんて思いもしないだろうから、もしも指輪が見つかっても、おもちゃだろ,くらいにしか思われないはずだよ」
「じゃあ今日は指輪を持ってペイズの家に集合な」
ボンザはじゃあなと、ペイズは待ってるよと、雨の中を駆け足で帰っていく。
ミーナはペイズさんの家って、ほんと、なんでもあるわね。
お金持ちなのって、ちょっとうらやましいわ、とそんなにうらやましくもなさそうに笑って、手を振った。
プランタとふたりきりになったとき、ポーに向かってプランタが言った。
「さっきの指輪の話、ぼくはほんとだと思うよ」
「ぼくもなんだ。夢と言われれば夢なのかもしれないけど、あの声とか姿とかは夢だったとはどうしても思えないんだ」
「でも確証はない。自信もない。だから何も言わなかったんだね」
「うん」
「ボンザはああ言ってたけど、ぼくは指輪をつけて寝るのはやめるよ」
「うん」
家に帰って服を着替える。
ポーはポケットにある指輪の感触を指で確認し、行ってきます、と雨に向かって晴れやかに家を出る。
ボンザ、危機一髪。よかったね。
リアルな夢か、夢のようなリアルか。小学生のころに
わたしにはわからなくなったことがあって、
それを思い出して、ポーにもそんな体験をさせました。
そんな体験、みなさんにはありませんか?
では、またお逢いしましょうね。




