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第十五話 ミーナの秘密 其の二

おはようございます。こんにちは。こんばんわ。

お読みくださっているあなたの時間は何時ですか?


わたしは昨日買うべきだった朝ご飯を買い忘れたことにさっき気付き、

がっくりしているところです。やらかしてしまいました。


では、どうぞ。

 ミーナに初潮が来てから四か月、ミーナは折にふれて口伝を聞かされた。

 そのたびごとに違う話を聞かされるのではなく、ひとつを暗唱できるようになるまで、繰り返し何度も同じ話を聞かされたのだ。

 

 ミーナはいま、八十八あるうちの五つ目を覚えたところだ。


 だから父親は、ミーナの口から白家と出たとき、口伝についての質問だな、と思った。

 が、少し違った。


「口伝の中には、盤上遊戯についてのものは、ないの?」

「あるにはあるけど、まだまだ先だよ。それまでに覚えなきゃいけない口伝が、いくつかあるんだよ」

「口伝を覚えたいんじゃなくて、十度目の盤上遊戯について聞きたいの」

「いいけど、どうしてだ?」

「十度目の盤上遊戯が、三百年後の白家のご先祖様を殺すことにつながるんでしょ。そこを、もっと詳しく知りたいの」


 そうか。

 父親は納得した。

 そして、十度目の盤上遊戯についてが、実は一番パパの好きな話なんだよ、と付け加えた。


 まず盤上遊戯について大まかに説明をした。

 六十四のマスの中で、選ばれし二十人の勇者が戦うんだ。

 年に一度、ね。

 それを天子様がご覧になられるから、御前試合ともいうんだ。

 白家の大将軍、清正公は息子、清秀公を将とし、この十度目の盤上遊戯を迎えた。


 そこでミーナが口をはさんだ。


「ほかの九人の勇者については、何か語られてはいないの?」


 その問いに、父親はひとりひとりの名を挙げて答えた。

 だが、やはりミーナたちの名はない。

 プランタの言っていたパラレル・ワールド説が正しいのかもしれないと、ミーナの頭によぎった。


「いま聞いただけじゃ、全員の名前は覚えられないわ」


 そう笑うと、何度も聞いているうちに、自然と覚えられるさ、と父親は笑って、口伝の続きを始めた。

 その話には、『龍』も『虎』も出ては来なかった。


 もしかしたらと、さすがに感づくところはあったが、顔色を変えずに、父親の話を聞いていた。

 結末は白家の勝利っていうのは、前にも少し話したことがあるね。

 でも、そこまでの戦いぶりが、この話の盛り上がるところなんだ。

 父親は、身振り手振りを交え、話した。


 そうして、激闘の末、最後に清秀公が、名刀『雷刃』で黒家の猛者である辻角つじかどを倒し、見事白家に勝利をもたらしたんだ。

 最後となった盤上遊戯で勝利した白家が、ホムラ国の統治者になり、以後三百年、ホムラ国を治めるんだ。

 これが十度目の盤上遊戯のお話。


 父親は額にうっすらと汗をかいていた。

 雷刃は雷刃なんだ、それじゃあ、とミーナは考えを巡らせた。

 そんなミーナに気付かずに、父親は続ける。


 でも十度目の盤上遊戯の話には後日談があって、これも前にも言ったけど、敵の親玉、黒家の大将が逃げるんだ。

 姿を消して、ね。

 そして、どんな魔法を使ったのか、三百年後に、事件を起こす。

 これさえなけりゃ、ハッピーエンドなんだけどね。


 父親は、自身の先祖のことだからか、ことさら残念そうだった。

 話を終えたところで、母親がミーナにはミルクを、父親にはホット・コーヒーを淹れて持ってきた。

 パパが大将軍の子孫だなんて、いまでも信じられないわ。

 そう笑った。そんな母親の笑顔を見たからか、体が限界だと訴えたからなのか、ミーナは急に眠たくなった。

 もう九時になろうとしていた。

 ミーナにとっては、夜中の三時だ。

 眠たいと思うとさらに眠気がまし、ミーナはミルクを飲みほしてから


「もう寝るね」


 と自室に戻った。

 ベッドに入るとすぐに、深い眠りに落ちた。





 翌日、ミーナが教室で女子とおしゃべりをしていると、ポーたち四人がやってきた。

 ミーナはポーたちに訊きたいことがあったのだが、おしゃべりのほうを優先させた。


 日差しが温かく、ミーナもおしゃべりの相手も、上に羽織っていたローブを脱いだ。

 雲が太陽の前を横切ってひととき隠れた太陽がまた顔を出すと、少年少女も、町で仕事を始めた大人たちも目を細めて天を仰いだ。

 風は校舎を優しくすり抜けて、教室の後ろに活けてあるハイドランジアを撫でるように揺らせた。

 学校内はだんだんと笑い声や廊下を駆ける足音でにぎやかになっていった。

 平穏な日常だ。

 小説を学校に持ち込んで、校則違反だと指摘したクラスの委員長や女子の勇士に、先生には内緒にしてよと頼み込むのも、どのクラスでも見られる光景だった。


 ポーたちはポーたちでミーナに話しかけたかったのだが、邪魔をしないようにと声をかけるのをはばかった。小説の話などをして、秘密を秘密のままに過ごした。


 教師が来て、宿題二倍の一週間が始まる。


ミーナの見聞きした情報と、授業や父から聞いた口伝との

違いにミーナは首をひねります。

果たしてどっちがどうなのか? パラレル・ワールド?

それはこれから、です。


では、またお逢いしましょうね。

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