第十二話 ポーと夕餉。
ポーたちは月のしずくのある祠に入っていきます。
ここも押さえておかなければならないポイントです。
東京は20度を超える暑さになるらしいですね。
お互い、体調管理に気を付けましょうね。
では、どうぞ。
その外観を見て、五人は目を疑った。
意に反して貧相なのだ。
「この奥じゃ」
清秀は蠟燭に火を灯し、人がすれ違うのは無理なんじゃないかという大きさの洞窟に入っていった。
五人はあとに続く。
だが、中は思いのほか広く、火山が松明に火をつけると祠のようなものの存在を確認できた。
近づくと、祠の中に石の器があった。
両手で持って収まりそうな大きさの器だ。
五人はそこに白金に輝く水を見た。
「これが月のしずくなの?」
ミーナが訊く。
「そうじゃ。少なさに驚いたであろう」
「でもきれいね」
「うむ。指輪を貸してもらえるか」
清秀に言われ、五人は指輪を清秀に手渡した。
受け取って器の前に置き、その奥の石の彫刻の仏の像に手を合わせてから、五つの指輪を月のしずくに浸す。
指輪が発光する。
そして、月のしずくが見る見るうちになくなっていってしまった。
「若君、これは」
プランタが訊く。
「見ての通りじゃ。時の回廊を往復するのに必要な月のしずくは、器一杯分だったということじゃ。と言っても、時が経てば今よりも多くの月のしずくがたまる。昨日の召喚の儀で使い、時渡りの力を指輪にもたらすために使ったので、先ほどの量は三分の一か、四分の一か、といったところじゃ」
「次に月のしずくが、時渡りの力を指輪に授けられるようになるまでは、あとどれくらいの時間がかかるの?」
「一か月といったところじゃな」
「一か月……」
プランタの質問に対する清秀の返事に、プランタの気持ちは重くなった。
「それじゃあ、盤上遊戯までにぼくたちが来られるのは、あと一回ってこと?」
「そういうことじゃ」
訊いたペイズも聞いた四人もはっとした。
あまりにも時間がない。
「ねえ、若君。それじゃあさ、せめてぼくの龍がはっきりするまでは、ここに留まって盤上遊戯での戦い方とかの訓練をしたほうがいいんじゃないかな? どうせぼくたちの世界には一秒後に戻れるんだしさ」
「わたしの歌も、もっと練習したいわ」
「そう言ってくれるのは嬉しい。だが天子様が仰るには、召喚者がこの地に留まっていられるのは、六時間。六時間が限度なのだそうだ」
「六時間。それを過ぎるとどうなるの?」
「我にもわからんのじゃ」
「若君たちも、召喚するのは初めてだって言ってじゃないか、ペイズ」
「そうだった。ちょっと待って」
そう言うとペイズは懐中時計を取り出した。
「ぼくたちがこっちに来たのが二時前だから、あと二時間くらいだ」
「急ごうよ、若君。戻ってぼくの龍をはっきりさせなくちゃ」
「我は思うのじゃが」
と清秀は穏やかな表情をする。
「わからぬままでもよいのではないか?」
「え?」
ポーも、プランタたちも、なぜだかわからなかった。
「了と出たのじゃから、了なのじゃ。剣は剣、付与は付与、歌は歌、金塊は金塊、そして了は了なのじゃ。それ以下でもそれ以上でもない。了なのに剣を持たせて、力が出せると思うか? 否。了なのに歌を歌わせて、力が出せると思うか? 否。つまり、了は了の力をもって戦うのじゃ。みな、そうは思わぬか?」
結局、了の力の正体はわからないままなのに、みなの心は軽くなった。
洞窟を出ると、朝雲がいた。
「お待ちしておりました。大将軍からみなの分の夕餉も用意させるから、食べていかれたらどうかとの言伝を授かりましてございます」
「おお、飯か。急に腹が減ってきた」
「食いしん坊だなあ、ボンザは」
と言ったペイズの腹の虫が鳴って。
「ペイズだって食べたいんじゃないか」
プランタが言うとみな笑った。
「でもいいのかしら、夕食までごちそうになって。なんだか悪いわ」
「せっかく大将軍様がああ言ってくれてるんだし、きっともうぼくたちの分の料理もつくられているはずだから、断るほうが悪いんじゃないかな」
ミーナにポーが言った。
清秀が歩きだし、また五人は清秀と火山の後ろを歩いていく。
朝雲は最後尾を歩いた。
大広間で待っていたのは、白家の面々と豪華な料理だった。
こんなに食べたら太っちゃうと言いながら、ミーナは食べる食べる。
四人も初めて見るホムラ国の料理に、たっぷりと舌鼓を打った。
その食べっぷりを清正は喜んだ。
膳を下げるころには、ホムラ国にいられる時間の限度に近づいてしまった。
強制的に元の世界に帰らされる場合に、どんな危険があるのか、あるいはないのかはわからないままなのだが、危険を冒すよりも安全なほうがいいと清正が言い、五人は先ほど一杯に力を蓄えた時の指輪を見た。
そうして、言った。
「我、光となりて、彼の地に赴かん」
ポーたちは時の指輪のルールを知ります。
そして晩御飯をごちそうになります。
ホムラ国の、白家の人たちと打ち解けていくのです。
五人は呪いの言葉を言って、帰りました。
明日はその続きです。
では、またお逢いしましょうね。




