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ヴェルナー王子との出会い


 ……なんだか、してやられたような気がする……!


 ……王宮の回廊にて。

 なんだかんだで結局レイラはアルフォンスと腕を組んで歩いていた。


 ……なんの事はない、レイラは用意されていた履き慣れない高さのヒールでは1人で歩けなかったからだ。


 ここに来るまで履いていた靴はレイラの自分の普通の靴だった。今朝の宿泊先でヒールを履くように言われたが、移動するのにそれはちょっとと言ってそのまま自分の靴でやって来たのだ。流石に王宮で王族の方と会うのに自分の街で履いていた靴で行く訳にはいかない。……が、この場に用意されていた靴はとても高いヒールで、レイラは一歩歩く毎にふらついてしまった。


 女官が別の靴を用意すると言ってくれたが、今は時間が惜しいのでこんな体勢になってしまったという訳だ。



「クク……。今朝貴女が靴を変えないと言った時には困った事だと思ったが……。役得だね。……あぁ、言ってくれたらいつでも抱き上げて連れて行ってあげるよ」


 そう言って笑うアルフォンス。

 レイラは必死で履き慣れないヒールのバランスをとって歩きながら、確かに今朝の自分を叱りつけたい気持ちだった。


「む……。だ……いじょうぶ、です……! もう少し慣れれば、1人でも歩いていける、はず……!」


 ムキになって言うレイラを見て、アルフォンスはクスリと笑った。10も歳の離れた少女に対する余裕の笑みだった。



 そしてとある豪華な扉の前近くに来ると、アルフォンスの空気がサッと変わる。


「さ、これから貴女への依頼者と会うよ。……分かっているとは思うけれど相手は王族だからきちんとした対応をする様に」


 彼はそう言ってレイラを見た。レイラが頷くと、アルフォンスも頷き扉の前に立つ衛兵に声をかけた。



 その部屋に入ると、そこには沢山の書物が並んでいた。手前に応接セットとその少し奥に側近の方の机が、そして更に奥には一際立派な机がありそこに1人の男性が座って書類を読んでいた。


「ヴェルナー殿下。アルフォンス ブレドナーでございます」


 アルフォンスがそう言って頭を下げるので、レイラもそれに合わせペコリと頭を下げる。


「済まないが少し待っててくれ。……よし。ではコレを持って行ってくれ」


 ヴェルナー殿下と呼ばれた男性は1人の側近に今見ていた書類を渡す。側近が慌ててそれを持って出て行くと、男性はやっと視線をこちらに向けた。


「アルフォンス。待たせたね。……そちらの女性は?」


 それはプラチナブロンドに真っ青な瞳。20代前半かと思われる美しい男性。その真っ青な瞳がレイナをジッと見詰めた。


 うわぁ……。コレは、ザ・王子様だ……。


 子供の頃絵本で見た王子様そのものの姿にレイラは一瞬見入ってしまった。


「お忙しいところ申し訳ありません。この女性は……」


「まさか……、そうか! アルフォンス! 可愛い女性ではないか。ああ、先を越されたな。ブレドナー公爵夫妻も喜ばれた事だろう。しかしこのような可愛いご令嬢を今までどこに隠していたのだ? これまでパーティーなどでは見かけなかったと思うのだが……」


 そう言ってその『ザ・王子様』はレイラを笑顔でマジマジと見てきた。



 え。コレは完全に何か誤解されてるのでは。


 そう思ったレイラはアルフォンスを見たが、当のアルフォンスはニヤリと何か悪戯を思い付いたかのように笑っていた。


「殿下。このような可愛い令嬢を他の男の目に晒すような事をするはずがないでしょう? 大切に我が手元で囲っていたのですよ。彼女も美しく成長しましたし、そろそろ娶ろうかと思っておりまして……」  


 何を言い出すんだ、この男は!? 

 

 レイラはすぐさま反応した。


「ちょっ……!! ブレドナー様! 冗談も大概にして下さいね!? そもそも囲われてなんていませんし! 貴方に娶られるつもりもありません!」


「照れなくていいのだよ、可愛い人。それに、アルフォンスと呼ぶようにといつも言っているだろう?」


「て……!? 照れてませんっ! そして名前でなんて呼びません!」


 何やら必死になればなるほど周りにはカップルが痴話喧嘩をしているかのように見えているのだが、レイラがそんな事に気付くはずがない。


「あー、ゴホン。……アルフォンス、いちゃつきはそのくらいにしてもらっていいだろうか? 君たちが仲の良いのは分かったから」


 少し生温かい目でこちらを見てそう言った『ザ・王子様』。


 え! 仲良くなんてないんですけど!


「違いますッ! 私達そんな関係じゃ……!」


「レイラ。ふふ、可愛いなぁ。……幸せになろうね」


「なりませんーーッ!」


 アルフォンスは真っ赤になって叫ぶレイラを見てひとしきり笑ってから、スッと真面目な顔になって王子に向き合った。


「……殿下。冗談はここまでにして、ご報告させていただきます。彼女はレイラ。我が領地に住む腕利きの『祓い師』でございます」


「……ッ! この、ご令嬢が? まだ少女ではないか」


 『ザ・王子様』は改めてレイラをジッと見た。


 レイラはコホンと小さく咳払いをしてから改めて『ザ・王子様』を見た。


「……レイラ マクニールでございます。ブレドナー公爵家の領地の街で代々『祓い師』をしております。幼い頃から母より我が家に伝わる技術を学び継承しております」


 レイラがそう挨拶すると、『ザ・王子様』の表情もピンとした張り詰めたものに変わる。


「……ほう、代々伝わる技術とな。アルフォンス、信頼して良いのか」


「……一度見せてみる価値はあるかと」


 ……実はアルフォンスは王家よりの使者が彼女を訪ねると聞いてすぐに領地の者に連絡し、力試しにとある『置物』の呪いの解呪の依頼をさせた。


 アルフォンスが領地に到着すると、怒れる使者とは別便でその『置き物』が戻ってきたのだ。


 それは以前ブレドナー公爵家に送り付けられた『曰く付きの竜の置き物』。何かに使える事もあろうかと封印付きの倉庫に仕舞われていたのだが、それは見事に『解呪』されていた。



 それを見た公爵家お抱えの『祓い師』は、レイラの腕を絶賛していた。それでアルフォンスも王家に連れて行こうと決心したのだ。


 そして今回レイラは王妃と会う為に、前泊した宿でも先程の女官達にも彼女がおかしなモノを持っていないかのボディチェックはされている。



「え。なんでですか。ブレドナー様は私の事何も知らないですよね?」


 そう訝しむレイラの頭をポンと撫でて、アルフォンスはヴェルナー王子を促し王妃の間へと向かう事になった。



 

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