茶番劇
「ご想像どおり『人間』は他種族を殺し喰らい、存在力の全てを奪い尽くす怪物です。」
凄まじい嫌悪感と共に吐き捨てるように言うシュエンの顔、シュエン達の顔は憎悪に染まっていた。
「胸くそ悪い生き物ですね、人間……紛らわしいし気分が悪いので区別の為に呼び名をかえましょうか、取り敢えず異人とでも呼びますか」
凄まじいプレッシャーの中でもプレッシャーの存在は分かるのに平気という奇妙な感覚に疑問を覚えながら、シュエン達に対して一緒にするなと遠回しに言いながら三南も本心からの嫌悪感を表情に出す。
「異人に関しての憎しみは共有できないが神とやら、この騒動の元凶への憎しみは共有できる。 俺にだって大切な人達は居たんだ、そのクソ神に対してなら俺達は同じ感情を共有できる。クソ喰らえって感情を……違いますか?」
堂々と周りに居るエルフ達一人一人と目を合わせて言ってのける三南、だいたい九割位は去勢だがバレなければいい。
「その通りです。 そして態と人間の話題を出して感情の整理に三南さんを利用した事、謝罪させていただきます。 申し訳御座いませんでした。」
「まあ、察するに……異人との戦いから一日しか経っていない、昨日まで見た目が似た種族と戦争してたんだ。感情を抑えるのも一苦労だろうし、もう許しました。」
「ありがとうございます。 コレで私達も貴男と異人の違いを実感できました。各地に散っている部下達にも話しを広め、三南さんに迷惑が掛からない様にします。」
明確に三南と異人は違うと実感させる為の会話。
茶番劇とも言うが、シュエンは計算尽くで三南はただ話しを合わせただけで内情など理解していない。
エルフにとって異人とは神敵め亜人が死ねと、3つしか言葉を知らないと疑っていた程の蛮族である。気を遣い感情の共有を提案し、あまつさえ攻撃され住処を焼かれたのに許すなど思惑があっても自分達でさえ出来るかわからない。
この事実が広まればエルフの中で異人と三南は明確に違う、寛容さなら自分達より上の理性的な人間だと認識するだろう。
実際は人を数十メートルブッ飛ばせる集団に囲まれて強気に出れない、良く言えば慎重で悪く言えばチキンなのが三南なのだが。
「では話しを続けます。 今度は本来の意味で私達の世界の話しを」
「よろしくお願いします」
閑話休題、仕切り直して本来の話しの流れに戻す。
2人は行動で示す様に同時に水を飲み再び見詰め合う。
「私達エルフも他の種族も生殖行為で子を宿して産み落とし、産み落とされた生命は器に合った存在力を星から授けられます。例外は2つだけですが悪しき例外は今は捨て置きます。」
異世界の命の在り方、産まれる命には祝福が授けられる。シュエンの言った星の子とは星から祝福を受ける命という意味。
「もう一つの例外が異人と異人の神に関係します。 それは龍神と呼ばれる星の剣、星の外からやって来る驚異に対して全てを破壊する星権“せいけん”を振るう者。 代々生まれる龍神は祭壇に自然発生的に生まれますので先代は居ても親はいません。 そしてその力を欲した邪なる種族が全ての元凶です。」
ゆっくりとした口調で長々と話したからか一口水を飲んで目線で三南へと問いかける。ここまでは理解できましたか?と
「龍神は外敵への最大兵器であり、兵器が強力なら星の安全を無視してでも欲しがる馬鹿は居たって理解で大丈夫ですか?」
「はい。 その理解で問題ありません」
専門用語の多い話になった為一応の確認を取る三南に笑顔で肯定するシュエン。
話は核心に向かって進む。