終わりよければ
「部下が申し訳ありません。大丈夫ですか?」
その言葉に三南は即座にエルフの女性に顔をむける。
正直意味のわからない言語はウンザリで、言葉の通じる誰かになら縋ってもいいんじゃないかと思い始めていたからだ。
「不思議と大丈夫です。逆に部下だと言う2人は大丈夫なんですか?」
今だに逆さま竜巻に押さえつけられている部下とやらを気遣う事で自分は敵ではないのだと、攻撃された人物にさえ気を使う善良な存在なのだと全力でアピールする。
三南は敵と味方の区分に凄まじい拘りを見せる、過去が過去だけに敵を身近に置く恐ろしさと味方は多ければ多いほどいいと実感している。
なので味方候補には過剰なまでに気を使う、自身の身体の状態など味方を得るには些末な事なのだ。
「そうですか……そうですね、少し時間をいただきます」
そう言って2人に近づき2人の額に人差し指を当てて数秒間指を発光させると
「姫様人間です!危険ですから離れて下さい!」「姫様申し訳ありません。戦闘行動の禁を部下が破りましたこと伏してお詫び申し上げます。如何様にも罰を」
三南は2人のエルフの言葉が理解できるようになった。
そして話しを聞く限り若者が勝手に三南に攻撃を仕掛け、年上がそれを注意しさらなる攻撃を静止していた。
女性エルフは姫様と呼ばれ戦闘行動自体を禁止できる立場のエルフで、独断専行と部下の手綱を掴みきれなかった連帯責任で年上を罰するか迷っている。
ならば
腕を元の位置に戻し、若干胸を張って堂々と発言する。
「血気盛んな貴方と冷静で責任感の強い貴方、名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……………ジオザ」
「マシエレと申します。この度は部下が蛮行を」
「いえ、ジオザさんとマシエレさんは謎の爆発に巻き込まれた俺を心配して駆け付けてきてくれた。そうですよね?」
無闇に敵を増やすとヤバいと訴える三南の勘により、襲撃そのものをなかった事にして好印象を稼ぐ。
実際に信じられないことだが三南は無傷だ。
痛みはあったはずなのだが立ち上がりながら確かめて見たが本当に無傷だ。
「昨日の日が落ちてから調査しました結果、ここは我らの世界ではない異世界である。故に我々の世界の人間と彼は全く関係ありません」
「!!………それは」
衝撃を受けた表情をしたあと三南を見るジオザ、姿勢を正し頭を下げ
「おっと、ジオザさん? 心配して見に来ていただいた事に礼がまだでしたね。ありがとうございます。」
頭を下げる前に肩を抑えられて直立不動にさせた後、自分が世話になったのだからと頭を下げて礼を言う三南。
三南はこの一連の出来事を徹底的に無かった事にして友好関係を築くのに全力だ。
どちらかに負い目がある人間関係は上下関係と切り離せない、故に上司と更に上の上司がジオザの罪は無いと言えば問題は個人的に三南とジオザに託される。
「……そうですね。何も無かったです。2人共現地住民との友好的接触ご苦労様でした。そういえば貴方の名前をうかがっていませんでした。聞かせていただいても?」
「三南と申します。以後お見知りおきを」
「私はシュエンと申します。 では三南さん、私達の仮拠点に来ていただけませんか? 互いに今の状況に疑問を感じている筈、情報交換を提案します。 もちろん安全面は保障しますので是非」
「喜んで。 ではアナタ達に着いていけばよろしいでしょうか?」
「はい、少し歩けば直ぐに着きますので。謎の爆発で身体が辛いならジオザに支えて貰ってください。」
そして全員で歩き出す。
上司達はジオザを責められない、攻撃された本人が否定している。
だがジオザは三南に精神的な借りができる、処罰は無く謝る事すら止めれたので三南に借りを返さなければと奮起する。
こうして襲撃事件は三南が個人的にジオザに貸しを作り、同族を赦してもらった上司2人も三南に好印象を持つという三南の一人勝ちに終わった。