壁
「成程」
三南が30階層に足を踏み入れる事は出来なかった。
1階層の500メートル四方より4倍の広さ、1キロ四方のその全てに生肉のような塊が鎮座していたからだ。
ドドドドという打撃音が続くが、舌打ちとともに三南の元に歩み寄るキリュウ。
「完全に軟体だ。 打撃は効果薄い上、アナも弾幕張ってるが押し返されてる。 三南の札の切りどころだろ?」
「まあな、んじゃやりますか!」
三南が30階層の入口の中央、四角形である肉スライムとも言うべきデカブツの真正面に立つ。
攻撃は来ない、恐らく攻撃的な全てを代償に回復力に特化させている個体
「貫通1式」
両手を胸の高さで掌を上に向け、少し曲げた指から圧倒的な存在力から形作られた力の塊を浮かべる。
掌の上を周回するのは20の三南の全力、つまり1つ1つが5000万の力を持つ馬鹿げた代物。
「魔力大砲」
パンッと20の塊を掌で挟み込み、両手首を合わせ親指と小指同士を合わせて手を開く。
カッと光が爆発した。
同時に三南の進行方向の肉スライムが消えて無くなっていた。
だが肉スライムはグヂュグヂュと特大の穴を塞ごうと動き出す。
「キリュウ、アナ行こう。 コイツはこれから下の敵に対する防波堤になる。 放って置いた方が得だ。」
穴が塞がる前に2人を呼び、さっさと次の階層への道を探す三南。
「確かになぁ、こりゃ進軍には邪魔でしかねぇわな……三南、再生速度が違う場所見つけたわ」
「じゃあそっちか、んじゃ今度は手加減して……十指貫通大砲」
先程の攻撃の半分程度の威力で再生速度の早い場所、つまり次の階層への道がある可能性が高い所に叩き込む。
「おっビンゴ、アナは床破壊しながら着いて着てくれ」
「おっけー! ドリル型魔術発射!」
道を見つけた三南はアナに破壊活動をさせながらズンズン進んで行く、札一枚切るだけで攻略出来たのでご機嫌な三南。