戦いの始まり
ピーィピーィ!!
緊急事態を分かりやすく伝える為の固定電話の着信音。 小鳥が全力で鳴くような高音の着信音は、すなわち敵襲である。
「ラシル神樹に戦時の結界に切り替えるように伝達! 非戦闘員は第2拠点への避難を急げ! 俺は魔族の部隊に入り前線に出る! 最前線の兵士達は防御魔道具の装備を忘れるな! 行動開始!」
「本株、戦争である 繰り返す、戦争である」
人類消失から約8ヶ月、遂に偽神が動いた。
基本的な指示を次々と飛ばす三南、だが気負いは無い。 参謀長レイモンドの作戦は優れており、被害は最小限になると三南は確信していた。
全力疾走で転移陣まで走り、指定されていた魔族の部隊に合流する。
「状況は」
「偽神の世界間転移は2回、超高存在力の物体を囲む大盾兵50、2回目に同じく大盾兵50と全身鎧に大剣の両手持ち過剰付与兵が500合わせて600です。」
「理解した。 情報感謝する」
三南が合流したのは第1拠点の会津盆地に近い最前線とは言えない部隊、だが拠点近くの防衛を任される部隊なので精鋭だ。
冷静に情報を伝える部隊長に例を言いながら敵のいる方角を睨む。
そしてスマホを手に取り電話を掛ける。
「レイモンド、俺は敵の主目的はダンジョンの埋め込みにあると予想した。 本格侵略なら大盾兵は邪魔だ」
『私も同じ意見です。 今キリュウ様に敵を排除するように頼みました。 ダンジョンが目的なら時間は私達の敵です。』
「分かった。 通話終了。 俺達はキリュウが殺し漏らした残敵を残らず始末する! 敵が散らばる前に全員殺せ!」
「ハッ! 聞いていたな! 残敵を許さず包囲陣の外に出すな! 地下に逃がす事は許可するが、それ以外は民の安全に直結する! キリュウ様の攻撃地点から円状に包囲陣を張る! 移動開始! 遅れるな!」
目的が定まれば統率の星権を持つアナの部下らしく部隊の全員が同じ速度で転移陣に駆ける。
その後の包囲陣の微調整はレイモンドの通信より多少の手直しはあるが、龍神形態で飛び出したキリュウを囲む包囲陣を他の部隊と被らずほぼ正確に構築出来ている。
『三南様、キリュウ様がダンジョン核を目視、形状から神樹様も間違いないとおっしゃられました。 これよりダンジョン封滅作戦に移行します。』
「了解。 キリュウに跳び乗りラシルをダンジョンに配置する。 現時点を以て最高司令官をレイモンドに一時的に委譲する。」
『お任せ下さい。 ご武運を』
ダンジョン封滅作戦に移行するにあたってレイモンドに命令権の全てを委譲する。 これは予め決めていた事なので、三南は直ぐに次の行動に移る。
ドォンッと三南の靴の裏から轟音が轟き、少しビルの端を破壊しながらの大跳躍。
狙い通りにキリュウの首の辺りに着地した三南はスマホと拡声機を繋げたモノで龍神形態のキリュウに話しかける。
「敵はどうだ!!」
【あぁ殺すのも面倒だったからな、尾で薙ぎ払ってやった。 だが、出遅れた。】
キリュウは敵兵を雑に薙ぎ払い、ダンジョン核に一直線に向かったが
【潜られた。 後はラシル頼みだ、頼むぞ】
僅かに届かず地下に逃がしてしまったダンジョン核が合った場所を睨みながら苦々しくラシルに託す。
「尖兵を生み出す魔塔、これ以上潜る事を禁ず、これ以上成長する事を禁ず、星の力を吸い上げる事を禁ず。」
目に見える洞窟の上、更に奥のダンジョンの中心の上に立ち、恐ろしい速度でラシルが木として成長する。
これ以上深く潜れないように根が包み込むように捕える、凄まじい圧力で締め上げる事でダンジョンの成長を妨げる。 更に結界で星の存在力を利用出来ないように固める。




