実験
太平洋の真ん中、そこにドラゴンに乗った三南がいた。
「実験開始」
三南の言葉が魔法により伝達される。
続いてドォンという骨に響くような重い爆発音が数十と続けて起きる。
「レイモンド、被害報告は?」
「……ありません、神樹様の結界は万全。 爆発寸前の物も問題無く太平洋中央部であるここに弾いています。 誤差は数kmです。」
「よし、弾く物を保護して特定の場所での処理に成功。 実験終了、現時刻から各員は通常業務に戻れ」
万が一は無いかという三南の確認にレイモンドと呼ばれるゴブリンが報告を纏めて三南に確定情報を渡す。
全ての爆発物は問題無く海の上で爆発、人的物的被害は0という成果に笑顔で実験の終了を言い渡す三南。
「ラシル、神樹に戦時の結界から平時の結界に切り替えるように伝えてくれ」
「任せるがよい、本株に伝達する」
肩の上に居るラシルに神樹の結界を切り替えるように伝える事を任せる、これが一番早く正確に伝わるので三南は重宝している。
「住民の避難を解除、地下の避難施設も問題無しです。 神樹様の御加護があるので精神的にも余裕がありますね、一ヶ月は籠もっても閉鎖空間にありがちな問題も起こらないかと」
「避難訓練と結界の切り替えに結界の動作確認、避難施設の問題提起。 とりあえず想定通りか?」
「はい、この結界の性能ならば想定する侵略には万全かと。 結界内に発電所や浄水貯水の備えもありますので、10年程ならば外からの補給無しでも暮らせます。」
「後は物理以外の攻撃か……俺が思いつくのは太陽光の収束ぐらいだ、参謀本部で対策を練ってくれ。」
「了解です。 三南様はこの後どちらに?」
「アナとキリュウと連携訓練だな、ダンジョン攻略に参加するなら必須だろ?」
「そうですね、それは必須です。 参謀長として三南様には伝えておきます。 ダンジョン攻略に参加する精鋭は龍神様と魔王様以外には2人、場合によっては精鋭の参加はありません。 ダンジョンの広さに対応する形で増援はありますが、その場合は探知と探索に特化した人員を送る事になります。」
参謀長としてレイモンドが話す事を真剣に聞く三南、レイモンドは作戦立案の最高責任者なので三南やキリュウすら決定には逆らえないように参謀本部を組織した。
三南は優秀な人員をアナとシュエンに選抜してもらい決定権と命令権を与えただけ、だったのだが予想以上に優秀だったので更に権力を上乗せして自分も従う事にした。
責任逃れといえばそうだが、率直に言えば三南は作戦立案など専門外なのだ。
故に専門家であるレイモンドを参謀長として組織を立ち上げた。 三南はレイモンドは魔族の王都で軍部の取りまとめの補佐をしていたと聞いて一瞬の迷いも無く全権をぶん投げた。
三南は日本人、当たり前のように従う側の方が楽だと知っている。 そして過去の事から人心掌握など不可能だと分かっていて、自分の頭が並程度の優秀さだと痛感しているのだ。
本音は黒歴史を繰り返したくない一心である。