一ヶ月で
一ヶ月の時が経った。
三南は黒歴史製造から吹っ切れたように自己鍛錬や仲間との交流に励み、根暗とは思えない行動力を発揮していた。
自棄になったとも言う。
アナが悪気なく黒歴史を拡散したのだ。 もはや取り繕う必要はないと自棄になるのも無理は無い。
今でも時々温かい目で見られて心が折れそうだが、仲良くなれたのは間違い無いのだから怪我の功名といえる。
想像力による戦力の拡張も上手く回っている。
ドラゴンは人型になって拳に炎を纏わせ、魔族はドワーフに刀の依頼をしている。
異世界組総中二計画と題した戦力拡張案は三南の邪な、お前らも黒歴史を抱えるんだよ! という邪悪な企みと共に爆発的に広がった。
眼帯に刀に包帯に、三南は後が楽しみだと嘲るように嗤う。
人間性を疑う話である。
「やめろ! キリュウの膂力でデンプシーロールやられたら死ぬ! 近づくんじゃねえ!」
キリュウもしっかり好きな作品を見つけて三南に試そうと技を繰り出す。
邪悪な企みに対する罰と言わんばかりにダイナミックに∞を描きながらにじり寄るキリュウに、牽制の指から出る霊力を連発しながら叫ぶ。
「うおぉぉお!」
「ぐぅ!がぁ!おい!やめ!」
遂にガードさせられた三南は玩具のように左右に弾かれ、最後には
「がっばぁ!」
「ダウンッ! ワンッ! ツウゥ!……」
カンカンカンッ!
途中でカウントを辞めたレフェリーがキリュウの片手を上げさせる。
すなわち何でありの試合はキリュウの勝利に終わったのだ。
三南は相変わらずというか、前にも増して回復力が異常なのでキリュウの実験台になる事が多いのだ。
キリュウが本気で殴ればミンチになるのが殆どなのに三南なら耐えられる上に回復も早い、なので三南の案なのだから三南が確かめろと言わんばかりに試す。
「熱と絶対零度! 合わせて」
「やめろぉ! 三南テメェオレの片腕消し飛ばしたの忘れたかぁ!!」
「うるせえ! お前が近接でボコるからだろうが!」
「最初に手加減忘れてオレにケガさせたのテメェだろうが! こうなったら死ねぇ!!」
「お前がな!!」
数秒で何事も無かったように起き上がり致死攻撃を準備し始めるのをキリュウが鞭のようなジャブで邪魔をする。
最初に手加減を間違えたのは三南だがキリュウも躊躇なくやり返す、やり返されたら更にの繰り返し。
最終的に手足ならセーフという狂ったルールの元に戦い始める2人。
レフェリーと観衆は帰った。
もはや日常的な事になったのだと見れば分かる光景だった。