黒歴史
「できるだけの事はやれた……と思う、だから後は待ちになるな」
呟くように言う三南からは不安が滲み出ているように感じる。
役には立てた、対策も立てた、だが何かしていないと不安だというのも本音。
情報をひたすら読み込み対策を話し合い、考えても考えても不安で仕方が無い。
「お、これ美味い。 まぁ基本的に世界間の移動は偽神だけの力だしなぁ、待ち受ける事になるのは当たり前だろ?」
「三南慎重すぎだよ? ここまでやったら誰も文句言わない」
「三南さんは基本方針を決めるだけでいいのです。 勝てる道筋は示していただきました、後は私達が勝つ努力をするだけです。」
どら焼きをパクつきながら事実を述べるキリュウ、神樹を撫でながら三南を励ますアナ、励ましつつ三南はベストを尽くしていると笑顔で言うシュエン。
「……正直後は皆に任せるしかないからな、俺の立てた作戦で皆が死んだらと思ったら……本当に怖いんだよ」
歪んた笑顔を貼り付ける三南に3人が溜息を吐く。
「三南、愚かだぞ」
身の丈程のどら焼きに挑みかかっていたラシルが下から見上げるように睨む。
「ラシルの言う通りだな、お前の作戦が優れてなかったら普通に言うわ。 自分の命を賭ける作戦を吟味しねぇ馬鹿がいるか? 他の奴らも一人一人考えてる、考えた上で今現在はお前の作戦でいいっつってんだ。 後から問題点が上がれば当たり前のように却下されるぞ」
キリュウの言葉は刺すように刺々しい。 全身で自惚れるなと言っているようで、三南が怯む程だ。
「三南、見下すな」
「そうですねラシル。 今の三南さんは自分の作戦が当たり前のように優れている前提で話していました。 それは自意識過剰というものです、何故そこまで自分が優れていると思っているのか……先程までゴブリン族を認めていた三南さんが何故? 本当に謎です。」
ラシルと連携して三南に疑問を呈した時点で顔を覆って後ろ向きに倒れた三南。
「うわっ……あああああ! 恥ずかし! 死ねよ俺! 完全に黒歴史だわ……死にたい」
畳の上で転がりながら叫ぶ三南。
根拠も無く自分の作戦が採用されると信じ、無意識に自分が優れていると自惚れ、トドメにヒロイックでセンチメンタルな悩みを溢す。
もう存在力を覚醒した三南なら本当に顔から火が出るかもしれない恥ずかしさだ。
「もう寝ろ! お前寝不足だから馬鹿な事言い出すんだよ! アナ引き摺ってけ」
「あいあいさ!」
キリュウが転がり回る三南に蹴りを入れて大人しくさせ、アナが敬礼して三南を引き摺って寝床まで運ぶ。
「成程……思春期のアレですね? でも遅すぎるような」
「みなまで言うんじゃねぇよ、三南が羞恥で消えるだろうが。 アイツが寝て起きたら忘れた事にしてやれ、話題に出すなよ?」
「三南、哀れ、シュエンも」
「はい……私も経験が無い事ではありませんから」
全て言ったシュエンにキリュウが釘を刺す。
これ以上は三南が哀れになる、ラシルも言うがラシルの場合はシュエンにも憐れむ視線を向けていた。
シュエンは思い出し照れというか思い出し羞恥で少し落ち込んでいる、ラシルもとい神樹はエルフを見守ってきた。 当然ながらシュエンの黒歴史もお見通しである、だからシュエンは神樹に勝てる未来は来ない。
黒歴史を握られた相手に強気に出るなど自殺だからだ。




