星
三南の覚醒から一日が経過した。
地球から三南に送られる存在力は過剰な程に皆に行き渡り、異世界からの追放者たる種族達が存在力不足で乾き死ぬ事は無くなった。
三南は皆の役に立てた安心感から倒れるように眠りにつき、次に起きたら翌日になっていたという状況だ。
「とりあえず半年は敵への警戒レベルを緩めて地盤固めだな、ゆっくりやって行こう」
拠点とした広々とした民家で茶を飲みながら言うのは三南、もはや別人レベルの変貌ぶりだが三南はコレが素である。
状況に急き立てられ自身は役立たず。 早く何か貢献をしなければ存在価値は無いと自分を追い詰めていたのが、今までの急ぎ過ぎて自分どころか皆も巻き込んだ性急さ。
基本根暗で呑気、少し馬鹿っぽいのが三南なのだ。
「まぁ余裕があるのはいいが、まだ問題は残ってるぞ。 偽神は拠点に直接異人を転移出来るだろ」
「ああ、それは神樹の結界が使えるらしい」
「神樹? 星には詳しいが神樹はエルフの専門分野だからなぁ……噂で聞いた気もする」
「星の子、つまり異人と偽神以外はスルーだから卑族の時は被害を出したらしい。 だが星の子以外は結界内に入ると潰れるってさ」
エルフから報告を聞いた三南は、外敵というか星から発生した生物以外への殺意が高すぎる神樹の結界構造に寒気がした。
「異人の王族が言うには異人の盗賊が転移陣に干渉して侵入したらしい、盗賊が転移陣に細工なんて不可能だから偽神の仕業なんだが……100人ぐらいの異人が赤い球になって斜め上にカッ飛んでいったんだと」
「怖ぇな……確か神樹の生まれた理由は侵略者が星に危機感を与える程傷つけたからだったか? ならまぁ排除する機能が有って当然って事か」
神樹は星の防衛機能に特化しているが危機感から生まれた故に排除も兼任しているようだ。
だがアナの話と合わせると星の目的も見えてくる。
「キリュウの星は侵略者がトラウマになったんだろうな、神樹で民を防衛して侵入したら排除して龍神で原因を駆逐し残敵を宝玉の統率で徹底的に殺し尽くす。 星から生まれた生命以外は死ねと言わんばかりだな」
「今は侵略者に対する護りが全て消えた訳だが、一回上手く排除出来たから数日ぐらい外出を赦してんだな……星の時間感覚の数日って数千年なんだよなぁ」
星は基本的に地上に干渉しない。三南の住む地球がいい加減なのではなくキリュウを生み出した星が例外、つまり危機的状況にならなければ星は体表面の事などどうでもいい。
三南に干渉した理由も初めての外敵が現れたから気にした程度、人間が居なくなった事は問題視すらしていない
「地球も外敵がチラつくのが鬱陶しいって程度だろうな、初めての地球外生命体だから気にしてるだけか?」
「そんな所だろうな、星の視点なんぞ生き物には理解出来ねぇのが普通ってな。 助けてくれたらラッキー程度に思っとけ」
考えるだけ深みに嵌っていく感覚に眉をひそめる三南を見て、途中でキリュウが断ち切るように話を終わらせる。
星の助けは無いと思って行動し、あったら凄く幸運だと思えばいいという結論に至る。
天才の感覚が凡人に理解出来ないように星の感覚など生命に理解出来ない。 そもそもキリュウが居なければ星の意思など眉唾だと切って捨てていただろう、と考え直し三南は思考を放棄した。