時間
時間的余裕がある事は喜ばしいが、具体的では無くとも大体の猶予は知りたい所だ。
「俺の世界である今居る地球の総人口は80億弱、俺以外は拉致られたが……そっちの異人は何人残ってる? これは大体でいい」
80億もの人間を支配するには時間がかかる。
最も時間がかかる要因はあちらの異人との人数比、同数ならソレこそ数百年は纏まらないだろう。
「こういうのは確実に始末した数が重要だな、オレは70億は確実に殺した。 これより下回る事は無ぇな」
「アナ達は10億ぐらい、なんかいきなり消えたのもいたから絶対だとそのくらい」
「エルフはキリュウが来た直後に飛ばされたって言ってたな、キリュウの殺した数に含まれるから多くて数億ぐらいだから……残りは凡そどの位だ?」
「30億弱ってとこか、たがまぁ100年ぐらいは減るだろうな」
大体の残存する異人の数を導き出した。
だが80億と30億で110億とはならない、キリュウの呟いた通り暫くは減り続けるだろう。
「まあな、肌の色とか言語や知識量の違いレベルじゃないんだ。 文字通り世界が違う人種と一瞬で仲良くなれるなんて有り得ない、洗脳が無いなら最低百年はかかるだろうな。」
「次はココとアッチの時間軸の違いか?」
「そうだ。 エルフがキリュウに助けられ魔族がキリュウと協力して異人を駆逐したとして、シュエンとアナが来た時間は数時間しか離れてない。 だがアナは一ヶ月と言った、確実に時差がある。」
「エルフはアナの8時間前、キリュウはアナの1時間後。 調べてたよ、皆偉い。」
「ありがとうアナ、魔族の皆にもだな。 注目すべきはキリュウ、龍神と魔王が消えた時間の所だな。 1時間は他と比べ易い」
「おぉそれなら簡単だ。魔王が魔族の精鋭諸共消されたのを見たオレは、移動しながら丸4日間とちょっと異人の残敵を殺してた。 だが眷属が呼びに来てな、異人が再び卵を狙い侵攻を開始したってな。」
「それで戻って護りを固めた所をって事か……約100時間前後が大体1時間って事か、まあ分かりやすくする為に時差約100倍だな。 そこまで違いは無いだろ」
集めた情報を加味して導き出されたのは、こちらの世界の100倍の早さであちらの世界が進んでいるという仮定。
あちらの世界が100年で再び神樹と宝玉と龍神の卵を狙う準備が整えられるなら、こちらの猶予は1年。
もはや知り合いや友人らは死に絶え、子か孫かそれ以降かと戦う事になる。
覚悟を決めた三南は、それでも知人と戦う事には抵抗感があった。
故にもはや異人と混ざりあった別の人類だというなら排除する事に躊躇いは無い。
もちろん自分で生物を殺す事に躊躇いはあるが戦う事自体に罪悪感は無い、人類のまま送られて来たなら保護する対象だが侵略者なら排除する。
そこを迷うなら最初から全責任をキリュウあたりに投げている。
しかし本当に人類最後の1人になっている現在を考えて、三南は少し人類滅亡あっさりしすぎじゃないか?と頭を抱えた。