降臨
《我らの世界は滅びます。故に我らはアナタ達を我が世界に転移させる。我らの世界の為に働きなさい。我らの世界を発展させなさい。我らの世界を救いなさい。》
身勝手極まりない高次元の存在と疑う余地の無い傲慢な言葉が頭の中に直接響く。
ソレは全世界の人類全てに届けられる。
何だこれは、幻聴にしては、巫山戯るな。
様々な反応を見せる人類に対して傲慢な高次元の存在は続ける。
《残された我が世界の民に隷属なさい。民達の役に立ちなさい。これからはソレがアナタ達人類の存在理由です。》
全くコチラの事情など無視。自分の要求を淡々と突きつけた上で、暗にオマエ達に拒否権などないと絶望的な決定事項だけを投げ渡す。
そんな馬鹿な話
地球のどこかで誰かが叫んだ。
だが叫びは途中で途切れて世界に響かず消えた。
《完了。帰還する》
目的を果たした事を誇るでもなく無機質に機械のように高次元の存在は姿を消す。
《否》
姿が消えきると思われたが色を取り戻し存在を再び固定し、眼下に広がる地球を眺めながら何かを決断する。
《役に立たない邪魔な民の廃棄、繁栄に必要の無い民ではあるが慈悲を与える。この世界なら緩やかに終われるだろう。》
島流しよりも高度な世界流しとでも言うべきか、コレは自分の世界の要らないと判断した存在を不法投棄するらしい。
必要な地球人類を強制徴収し、残った土地は廃棄所として活用するという最悪の所業。
自分の民の邪魔であれば切り捨てるとしても安寧に終わりを迎えて欲しいという傲慢な親心モドキ。
この存在は徹頭徹尾自身の民の得しか考えていない。
侵略者としては正しいが何しろ規模が違う。
数十億を拉致し強制労働を課しておきながら、残った地上の人の居なくなった全てすら自身の民の害になる者の廃棄所として使い潰せばいいと本気で考えている。
《………》
そして何の感慨も浮かべる事無く消えた。
自分の世界に帰ったのだろう。
そして残るは人がほとんどいない地球。
発電所、原子炉、貯水池など様々な問題がある。
その上で最も大きな問題。
何故か一人だけ異世界転移からハブられた三南
ソイツは呑気に不貞寝からの爆睡で、不思議な事に高次元生命体の全世界に響いた声が聞こえなかったようだ。
彼の安眠する寝室には5個の水晶らしきものが光り輝き、そして破片も残らず空気に溶けて消えていた。