龍神
「おう起きたか三南とやら、会議は続けてるぞ。エルフと魔族は休ませて探索はオレ達龍族が引き継いだ。」
とても気安いムキムキのあんちゃんといった風体の男。この男が
「ああアンタが龍神か、ファンタジーは何でもありだな……報告は了解したが急ぐ必要がある、少し休ませたらエルフにも魔族にも俺にも仕事がある」
龍神。異世界で最強の存在、唯一星そのものから生まれる最強種に臆さず話す三南。
どうも強大なのだろうが小さく見えるという矛盾が三南の中には常にある。
直接攻撃されたエルフだけに昔のトラウマが相俟ってビビリ散らかしていただけのようだ。
「そりゃそうだ、オレも星の後押しがねぇから弱体化してる。 さっさと対策立てねぇとヤバいのも理解してる。」
「世界から切り離されたアンタ達には大量の食い物が必要になる、と推測したが合ってるか?」
4つに増えたソファーの空いている席に座り込みながら話し合う、時間が惜しいのだ。
「正解だ。あっちの世界の食事は成長の為の物で存在するだけなら存在力で十分。 だがエルフの精霊炉に魔族の魔力炉、オレ達の龍核も星から切り離されちまったらダメみたいだな。 この世界の植物とか動物から摂取するしかねぇな……今の所は」
「流石に星から直接生まれるだけあって詳しいな、こっちの星の事も分かるか?」
来たばかりだというのに自分達の状態を正確に把握している龍神に、ダメ元で訪ねてみる。
「星の意思自体はあるが、オレの星が過保護なら三南の星はいい加減な放任主義だな。三南お前今自分がどうなってっか知ってるか?」
「知らないな、説明してくれるなら有り難い。教えてくれ」
正直に言うなら最優先に知りたかった事を教えてくれると言う龍神に感謝しながら軽く頭を下げる。
「お前は今連れ去られた奴らに分配する筈だった存在力を全部詰め込まれてんぞ。 オレが龍の姿で焼いても重度の火傷で済む頑丈さと、10秒後には完治する再生力。 本来存在力はちゃんと覚醒させねぇと使えねぇんだが、未覚醒の切れ端みたいなのでソレだ」
「……つまり地球がいい加減な事をして全人類分の存在力を俺に注ぎ込んでると、現在進行系で? この星大丈夫なのか? 大雑把過ぎるだろ」
三南が妙に頑丈な理由が判明した。
地球にとって全人類とは三南1人なので、昨日と同じ量の存在力を変わらず供給する。全人類=三南だから問題は無い
子供の屁理屈のような理論である。
「まぁ滅亡は仕方無ぇけど原因が外の世界に拉致られたからってのがムカつく、取り敢えず自分の負担は変わらないから残った奴にオール・インしたら原因ぶっ殺してくれねぇかなー。 って感じだな」
「結果俺の為になってるし原因殺すのは決めてるけど……なるほどいい加減な放任主義だな」
星の期待を背負った男、三南。
そう表現すれば凄くやる気が出るのだが、実際は龍神の表現が正しい。
星から直接生まれた彼は故郷の星なら軽い会話程度ならできるし、故郷以外の星でも何となくだが意思を読み取る事ができる。
つまり同じ期待でも信じて力を託した、とかではなく明日晴れますように程度の期待である。
「力抜けるな……やる事に変わりないからいいんだが」
ゲーム会社で働いていた三南はゲームから興味を持ち、段々と10年で深みに嵌っていったオタクである。
だから不思議な力とか特別な才能等に憧れていたが、まさかのハブられたから得た力だ。
深い溜息を吐くのも仕方無いといえる。