表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自分以外が異世界転移。俺だけハブられた  作者: 耶麻焼野原
裏切りと消失
15/53

過去と覚悟

目が覚める。ここ十数年ぐらい感じなかった気怠い寝起き、三南は気絶から目覚めて首だけで周りを見回して徐々に現実に期間する。



(そうか……そうだったな……畜生が!)



おそらく会談場所である最高級ホテルの寝室に寝かされ、天蓋付きベッドという実在するかも怪しい都市伝説と思っていたベッドで寝ていたのだろう。



起きた瞬間に思い出し悲しみや後悔が渦巻き始め、最後には偽神への凄まじい怒りが身体中から発露するような感覚。




『俺が死んでも気にすんな! 俺は人生楽しみ尽くしたからな! 三南よ、最愛の孫に遺す言葉は決めてた! 後ろを振り返るのは良い事だが後ろを向いたまますすんだら転ぶからな。 死んだ奴らも俺もこれから2度と会えなくなるが、時々振り返るだけでいい。 長生きだけなら50点だぞ、笑って泣いて悔やんで馬鹿やって生きろ。 じゃあな……達者で』



そして祖父が死んだ瞬間の事を思い出す。

三南の祖父は今風に言えば陽キャであり、あまり難しい事を考えるのが苦手な人。

有り体に言えば明るい馬鹿であり三南の誰より尊敬する人だった。




怒りを飲み込み落ち着いてきた





祖父は死ぬとこなんて見られたくねぇと知り合いに病院の前まで普通に歩いて来て説明していた。病院に詰め掛けた数百人から厳選した20人は末期癌と聞いていたが死なないかもしれないと思った程に元気溌剌だったが、見舞いを追い出した後は一歩も動けず、たまたま見舞いに来ていた三南が車椅子に乗せて病室まで連れて行った。



当然のように両親と兄と姉は一度も来ていなく、家では早く死ねばいいなどと悪態をついていた事で祖父の現状を知り。


そして家を抜け出し何度も電車を乗り継いで来た一回目の御見舞いで祖父を看取る事になった。


(待っててくれたんだよな爺ちゃん)





怒りは撒き散らす事なく内側にしまい込んだ





御守りは祖父の家に手紙と一緒に置いてあった。厳密にはもう祖父の友人の家だったが、快く遺品を渡してくれた。



祖父は保険受け取りを友人に指定して友達の弁護士に遺書を預け、資産と保険金は成人した後に弁護士から三南が受け取った。



公式に親族に渡した遺産は五百円、両親と兄2人と姉で百円ずつやる、ありがたく受け取れと遺書に遺した。



当然ながら両親達はキレ散らかしていたが、地域の殆どの人から愛されていた祖父の葬式は豪華で騒がしく、祖父が好んだ仲間たちの喧騒と共に行われた。


ちなみに両親達は帰った。


葬式の費用は地域の皆で持ち寄り、芸能人の葬式のような規模になったのを三南は泣きながら笑って見ていた。






偽神に出会うまで煮え滾る怒りは取って置く事にした。






「もう誰にも会えない。 だけど俺は泣いて笑って悔やんで馬鹿やっていきなきゃいけない」



決意表明のように独り言を呟く、自分に言い聞かせるように。



「暫くは爺ちゃんみたいに堂々としてないとな……根暗には辛いけど、いつか本物になるだろ」



三南の本質は根暗だが祖父の態度を真似して何とかしていた、だがボソボソ喋る指導者など誰も信用しない。無理を通して本物に化ける日を待つしかない。



「とりあえず考える事だけはし続けないと」



何時間気絶してたのか知らないが龍神とやらは来ている可能性が高い。



「推論も纏まったし確証が……ヤバいな食料を掻き集めないと、いや寝てるエルフの住居は」



どんどん考える事が積み重なり他の事を考える余裕がなくなっていく。




「いや忙しいな」



苦笑いながら考える事がある事実に感謝する。

根暗な三南では一度ネガティブになったら際限なく堕ちていく、もちろん復帰するが時間がかかるのだ。



近場のドアを開く。


「おーい! 誰か会議室まで案内してくれ!」



三南の表情は気絶前より改善しているように見えて、案内役のエルフは安心して会議室へと三南を導く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ