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05,三つのバストが一つになります。


 前回までのあらすじ!


 助けを求める叫びに導かれ、ジョウは妙に広い部屋に辿り着く!

 しかし、その叫びは巧妙な罠だった!


 そこで待ち構えていたのは、かつて変身後のジョウをサポートするために生み出された二機のサポート・アンドロイド。

 ナックルお兄ちゃんと双子の妹バレット――ブースト兄妹によるJOKER制圧作戦の一環だったのである!


 まんまと騙されたジョウはナックルに無理矢理接続(エンゲージ)されてしまい、右腕がとても大きく重たい鋼の腕――ハイパー・ナックル状態になってしまったのだった!


「ハハハハ! キミをサポートするために造られた僕たちの蔵出し初仕事がキミの妨害! 因果な話だよまったく! だが形はどうあれ、これもキミやマスターのためになる仕事だ! きっちりやり遂げさせてもら――ぉおおう!? ちょっとずつ動いていないかなこれぇ!?」


 ナックルが勝ち誇り、高笑いできたのも束の間!

 なんと、ジョウが力任せにナックルごと移動し始めた!

 ナックルと言う巨大な枷、外せないのならそのまま引きずって行けば良い――馬鹿げた発想だが、それを為せるからこそ馬鹿!


「俺がァ……行かなければ、ならないんだァ!!」

「おのれこの馬鹿……! 馬鹿だけに馬鹿力!」


 まさか、変身後のジョウが振り回す事を前提にした装備を、変身前の状態で引きずれるとは。

 ナックルにとって、これは完全に想定外!


「バレット、お前も来い!」

「えぇ……? せっかくお兄ちゃんとJOKERの記念すべきリアル初絡みだのに……アタシが入るとか解釈違いでは?」

「解釈違いも何も僕とお前はセット運用前提の設計なんだけど!?」


 左腕に銃撃主体の装備であるバレットが接続エンゲージし、遠距離攻撃および牽制攻撃の役割を担う。

 そして相手に接近した所で、ナックルによって強化された右のJOKERパンチで敵を爆砕する。ブースト兄妹はそう言う設計コンセプトなのだ。


「アタシは夢女子絶許主義者なので、そう言うのはちょっと……眺めていたい、王子様と王子様」

「まーたお兄ちゃんが知らない単語を使って!」


 それでもなお、バレットは「解釈違いです。論外です」と腕をバッテンにして首を振る。


「何女子でも良いから早くこっち来てエンゲージしなさい! お兄ちゃんしまいにゃあ怒るぞ!?」

「はぁ? 解釈違いを強要されてキレそうなのはアタシの方なのですが!?」

「もう良いから早くやれよォォォォ!! どんどん引きずられてる! 引きずられてってるからお兄ちゃんんんん!!」


 ジョウは早くもナックルを引きずるコツを掴んだらしく、順調に出口(さっきジョウが空けた穴)へと向かっていく。


「ほほう……JOKERさんは一体、嫌がるお兄ちゃんをどこへ連れていくのか……興味が尽きませんね……! 昂る。にやにやです」

「この馬鹿は戦場にしか行かないよ!?」


 早く来なさいってば! とナックルお兄ちゃんが半泣きで吠える。

 お兄ちゃんの叫びに鬼気迫るものを感じたのか、バレットは渋々首を縦に振った。


「致し方ありませんね……非常に不本意ですが、アタシもエンゲージさせてもらいましょう」


 ナックルを引きずるのに必死なジョウは隙だらけ。

 バレットはあっさりとジョウの左腕を掴んだ。


「しまッ――」

「よし、やってしまえ妹よ!」

「はい、それでは。ユニゾンコマンド【バレット・ブースト】――エンゲージ」


 ……………………。


「………………あれ?」

「……バレット? どうした?」


 いつまで経っても、バレットの体は光りもしないし変形もしない。


「……うーん……? 故障?」

「そんな馬鹿な! マスターの調整は完璧だったはずだ! 密着度が足りないんじゃあないか!?」

「密着度……んしょ」

「ッッッ」


 だったらこれで文句無いでしょう、とバレットはぎゅっとジョウの左腕に抱き着いた!

 野暮ったいジャージのせいでパッと見は目立たないが、かなり豊満に造られた胸部を惜しげもなくジョウへと押し付ける。


「な、なななななななななな……」

「エンゲージ。エンゲーーージ……えぇ? これでも駄目なんですかぁ……?」


 バレットは何度も何度も、グリグリグリグリと、自らのボディをジョウへ押し付けまくる!


「ん、よいしょ、よいしょっと……ふぅ。んん……」


 バレットの悩まし気な声と息遣い。それに合わせて、むぎゅう、むぎゅうとたわわな逸品が押し付けられて柔らかに変形する。

 ジョウはもう、空いた口が塞がらない。


「……むー、やっぱ駄目っぽいですよ。お兄ちゃ――」

「なにをさらしてくれとんじゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「ぴゃああああああ!? マスター・アーリエンデが壁をブチ抜いて突っ込んできたァァァァ!?」


 アーリエンデ、当然のように壁をブチ抜いて乱入!


「は、わわ……目の色が明らかにキレていらっしゃる……!? ち、違うんですマスター! あなたのメンテが不十分だったとか言う気はなくて……す、すぐに! すぐにエンゲージしてみせますから!」

「……もうたくさんよ……もぉぉぉたくさんよ!」

「は、はひ?」


 アーリエンデは全力で地面を踏みつけながら、呪念がこもったような低い声で叫ぶ。


「サポートアンドロイドを二機とも男性型で設計していたら当時の部下に『ご自分の趣味優先ですか? JOKERも合わせてハーレム願望ですか?』とか言われてムカついたから片方は女性型にした! 今度はボディから性的な要素を極力省いて機能美を追求しようとしたら『自分の創造物に乳の大きさで負けるの嫌ですもんね(笑)』とか小馬鹿にされたからそれはもう意地になってカボチャでも詰めてんのかってくらい乳を盛りに盛って質感にもこだわった! その結果がこれかァ!? サポートメカに手を噛まれたよもはや食い千切られた感すらあるよ私はァァァ!!」


 アーリエンデが獣のような咆哮と共に超高速地団駄で床を砕き掘削していく中!


「ひょあ……な、何の話ですか……!?」


 その怒りの理由を理解できないバレットは「早くエンゲージしなきゃ解体される……!?」と焦り、更に体をジョウへと押し付ける!


 そう……バレットは理解できていない。


 バレットの認識において、男とは男に欲情して当然の生き物! それがこの世の摂理だと認識している!

 それは彼女がこの世で最初に触れた作品がBLだったから!

 BLこそが人類の愛のカタチなのだと基礎部分に設定されてしまっている!


 故に、自分がジョウに乳を押し付けると言う行為が、ジョウを性的に興奮させるだなんて思ってもいない!

 男性が女性の胸部で……ありていに言えばおっぱいで興奮してしまうだなんて発想は無い!

 ましてや、ジョウを性的に興奮させてしまう事が、どれほどアーリエンデのジェラシーを煽るかなんて理解のしようがない!!


「バレェェット! 急げ! マスターが見た事も無いような鬼の形相に! もっとたくさん密着するんだァーーーッ!!」

「わ、わかってますよう! うにゅ、うにゅぅぅぅ~~~……!」


 妹が妹ならば兄も兄。

 一応、ナックルの方は男女間の恋愛感情と言うものを知識として把握してはいるが……結局のところは生後三年ちょいのAIである! 人間の色恋沙汰など、完全な理解には程遠い! 人造で整えられたハイレベルなルックスと高い演技力を誇りつつも、そこそこ人気の俳優どまりな理由がそこにある!


「ああああああああああああああ~~~~~~~~~~!!」


 アーリエンデは半ば狂乱。

 自分以外の女に性的な興奮を覚えるジョウなど解釈違いの極致!!

 その興奮対象が自分よりも優れたおっぱいを持つ相手ともなれば更にファッキン・ジェラシー!!

 これこそが重病的嫉妬ジェラシック


 であればどうするか!? どうすれば良いか!?

 天才アーリエンデの頭脳が導き出した答えは――興奮対象の上書き!!


「おりゃあああああああああああああああああああああああ!!」

「ぬあああああああ!? アーちゃんまで来ただとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 アーリエンデはジョウへと飛びつき、ハグ!

 無論、己の乳をジョウの胸板へ全力で押し付ける!


「あははははは! ジョー! 私のに触れるのもこれで三度目ねぇ! まだそんな初心な反応をしてくれるだなんて、押しつけ甲斐があるわオルァァァァ!!」

「ま、マスターは一体なにを……、ッ」


 ここでナックル、ある事に気付いた!


「そうだ、先ほどバレットが密着して胸部を押し付け始めてから、JOKERくんはまったく動けていない……!」

「それってつまり……お兄ちゃん! JOKERさんを止める方法は――」

「胸部を押し付ける事か!」


 そうとくれば! とナックルは武装ブーストモードを解除!

 人間形態へと戻ると、アーリエンデとバレットに習ってジョウの右腕に抱き着き、胸板を押し付ける!


「どうだJOKERくん! 僕たち兄妹とマスター、三つの胸部が一つになったぞ!」

「あ、お兄ちゃんそれは不味いです! お兄ちゃんの胸なんて押し当てたらJOKERさんが大興奮して暴れ出してしまうかも知れない……! アタシがもっと押し付けて興奮を中和しないとですね!」

「ッ、ジョー! 気をしっかり持ちなさい! あんたが興奮しているのは私の胸よ! ただデカいだけの胸や野郎の胸板に屈するなんて絶対に許さないんだからね!?」

「ッッッッッッ」


 ボイン、ふにん、ムキッ。

 三つの胸の感触に包まれ、ジョウはもう訳がわからない。

 これがカオス! 宇宙誕生前、世界に満ちていた混沌!


「ぅおお……うぬおおおおおおおおおおお!?」


 脳がショートする間際。ジョウの中に眠っていたハロニア星人の意識がつぶやいた。


 ――「いつも思うんだけど。地球人って、馬鹿しかいないのかい?」


 そのすごく冷静なつぶやきが、ジョウの脳に一瞬の平静をもたらした!


「地球人を誤解しないで欲しい! とりあえずまずは脱出を! とぅッ!」

「「「ああッ!?」」」


 ジョウは一時的に全身の関節を外し、軟体動物が如き柔軟性を獲得!

 体をぐねらせながら跳び、三人(正確には一人と二機)のホールドから離脱する!


「しまった! JOKERくんめ! さては土壇場で内なるもう一人の自分的なのに助けられたな!?」

「どこまでも主人公ですね!? 三位一体で再ホールドを仕掛けましょう! ジェットストリーム・バストホールドです!」

「却下! もうあんたら、特にバレットはジョーに接近禁止ィ!」

「何でですか!?」


 驚くバレットに構わず、アーリエンデは懐に手を差し込んだ!


 アーリエンデは毎回、JOKER制圧作戦に十重二十重のプランを用意している。

 ナックルとバレットによる物理的な拘束が失敗に終わった場合の策は既にあるのだ!


 その策の要となる新発明を取り出そうとした、その時。


「……ちょっと、ジョー? どうしたのよ……急におとなしくなって」


 違和感。

 アーリエンデたちのホールドを抜け、全身の関節をはめ直したジョウが……動かない。

 その場に立ち尽くして――スマホを眺めている。


「……いや、実はその……この場から走り去りつつ、現況を確認しようと思って災害情報を開いたんだが……」

「……?」


 ジョウが妙にやるせない表情を浮かべているのが気になり、アーリエンデもスマホを取り出してみる。


「どうかしたのかい?」

「気になりますね?」


 ナックルとバレットもアーリエンデのスマホを覗き込む。

 そこに表示された最新情報は――


「「「……『ウミランティス帝国民は肺呼吸ができなかったらしく、地上に出てから数分で戦闘不能となり帰って行ったため、緊急事態警報は解除されました』」」」

「……………………」



 第一五次JOKER制圧作戦――アーリエンデは勝ったが、釈然としなかった。



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