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天使は今日も動かない  作者: たいちゃん
シスターの祈り
6/30

マリーゴールド

*注意

視点が変わります。時間が戻ります。


聳え立つ巨大な柱が均等におかれ、そこに屋根と壁が貼り付けられたような神殿の中、中央に造られた泉の前方に私は座っておりました。

前に見えます二双の翼を象った銀の彫刻は自身の身体より幾倍か大きいもので、それは天に近い所に祀られております。それを見上げながら、このような贋物よりも、いと高きところにおわします神、そして愛しの子天使にお尋ねします。


「私はどうして……こんなにも出来ないことが多いのでしょうか……。」


しかし、返事は帰ってきません。まだ主と交わる自分ではないのでしょう。いえ、もしかしたら……。……やめておきましょう。

信じる者は救われます。そして、信じない者は救われないのですから。


「聖なる神よ。あなた様は万物の造り主。すべてが神の元へ……。人に奇跡をもたらし給う天使よ。どうか私を憐れみ給え。どうか私を……。罪深き私清め、永遠の命へお導きください……。そして平和の内へ……。………。」


両手を捧げて、静かに祈祷いたします。

そして昨日の失敗を、胸の痛みと共に思い出します。


昨日は、この国の王様の前との会食が催されました。

私はその末席を汚させて頂きましたが、ほとんどおまけのようなものでした。会話にも参加せず、ただ黙々と見た目だけ豪奢な食事に手を付けて、時折微笑むのみの役割でした。それだけが私の役割だったのです。

お話に参加したり、意見を述べたり、会話に笑い声をのせるのさえ私には期待されておりませんでしたし、私も惨めさを感じながらも仕方がないものだと受け入れておりました。けれど……。


―――キィィ……。


部屋に響きわたる不快な金属音。私が手元を狂わせて、ナイフで皿を擦ってしまった音でした。今まで盛り上がっていた会話が途切れ、唾を飲み込むのも憚られるほど白ける場……。頭が真っ白になり、他の人の視線が痛くて泣きそうになりました。そしてチラリと見たお父様の冷たい目ときたら……もう思い出したくもない!

自分の評価がまた一段と転げ落ちる音が周りから、自尊心が削られる音が胸の中からして、私はただ俯いているしかありませんでした。


その時はお兄様の巧みな話術によりフォローしてくださいましたが、もしそうでなかったらどうなっていたことでしょう。

これは言い訳にしかならないでしょうが、私も法王の娘である以上、それ相応の教育は受けておりますし、テーブルマナーだって一流の先生の指導を受けています。しかし、

このような公の場にでると何故だか、こうして失敗してしまうのです。


「どうしてですか……。どうして……私は、こんなことも普通にできない……こんな不出来な娘なのでしょうか……。」


思い出すたびに頬が自然熱くなり、涙がこぼれそうになります。嫌なことほど頭に残るのはどうしてでしょう。

それを誤魔化すように、神に祈りを捧げます。


「……全能の神が、慈悲深い天使が、わたしを、わたしたち兄弟をあわれみ、罪を許し、輝かしい未来へ導いてくださいますように。」


そうしてしばらくすると、コツ、コツ、と神殿の中で反響して響き渡る足音がしました。この音には聞き覚えがあります。

娘のように繊細で、王のように堂々として、老父のように厳かで、それでいて若さと希望が満ち溢れた足音は、あの人の本性をそのまま表していると言ってもいいでしょう。


「お兄様……。」


お兄様は、神聖な光を灯した黄金色の瞳をこちらに向けながら、「熱心ですね。」と、声をかけてくださいました。絹のような髪は瞳と同じ色で、どちらも気品がある輝きをしておられます。

同じ色の目と髪を私はしていますが、美しさは雲泥の差です。時々、羨ましくなります。あぁ神よ、天使よ、こんな罪深き私をお許しください。この汚れた心を嫉妬の悪魔からお救いください……。


「祈ることは大変素晴らしいことです。しかし、もうすぐ昼になります。主は、火の星が真上に昇った時に、命の糧をいただくことを許可されております。ですので、お前さえよろしければ、僕と食事に行きませんか。」

「……。……はいお兄様。共に。」

「共に。さぁどうぞ、こちらへ。」


お兄様は大変ご親切で、妹である私にもとても良くしてくださいます。冷たくされたことは一度もなく、幼いころからよく気にかけてくださいます。

そんなお兄様ですから当然、国民からも多大なる支持を持ち、次期法王としての立場も確かなものにしておいでです。それでいて、いつも謙虚で、さらなる魂の成長へ邁進しておられます。

人間として、お兄様ほど立派なお方とお会いしたことはありません。


お兄様は麗しいご容姿をお持ちで、勉学、体術どちらも優れておられます。更に特筆すべき点といたしましては、魔法……特に治癒魔法に秀でており、法王の跡継ぎとしてこれほどふさわしいお方もいないでしょう。

ただ廊下を歩くお姿さえ、どこか尋常じゃないものを感じます。


「お前はいつも神殿で熱心に祈っていますね。」

「……。」

「感心です。しかし、典礼がない時の神殿はとても寒いでしょう。無理しないように。何より大事なものは心ですから。」

「お気遣いありがとうございます。ですが、私は不出来なものですから、その……もっと祈らないと……。」

「不出来ではありませんよ。お前も私も、人類すべて神の子孫です。それがどうして不出来になりえましょう。勿論私から見ても、お前は自慢の可愛くて努力家な妹です。そのようなことを誰かに言われたのですか?」

「いえ。ですが、私はお兄様の足元にも及びませんから……。」


お兄様とは同じ父母の元に生命を授かりましたが、私は勉学も体術も不得意で、魔法についても、治癒については露ほどの使えず、多少光魔法の心得がある程度でしかありません。

そのような私ですから、自分に自信が持てず、おどおどしては失敗を繰り返し、お兄様にいつも迷惑をかけています。お兄様が優しく許してくださる度に、胸が痛むほど締め付けられ、情けないほどに涙がこぼれてしまいます。


儀式では祈りの言葉を忘れ、お食事の場では場の空気を汚し、大切な日に体調を崩して、いつも私は人に迷惑をかけてしまうのです。自分の居場所がだんだん狭まっていくような感覚と、世間や人様、お兄様への罪悪感がいつも私の胸にあります。そしてその悪感情は、やがて悪魔に憑りつかれるのです。

私はこともあろうに、いつも私をフォローして慰めてくれるお兄様に、時折激しい怒りと鬱陶しさを感じます。それが全くもって道理がないことは充分に理解しているのですが、それでもこの感情はドロドロとあふれ出して、制御がきかないのです。それは悲嘆にも似た、また殺意にも似たものです。


お兄様は隣を、例の足音を奏で歩きつつ、私に柔らかく微笑まれました。その微笑みは、心ある貴族が孤児に向けるものと同じようなものでした。

つまり、見下されているのです。

これは被害妄想なのでしょうか。……こんなに、生々しく感じるこれが、ただの妄想? 私には、どうしてもそうは思えません。


お兄様だって生まれつき恵まれているだけであるのに、どうしてこのように見下されなければいけないのでしょう。その優しさに隠された優越感が、鬱陶しくなって……。

でもそれに救われる身なのだからしょうがないと諦めると、今度は兄の優越感の中にある本当の優しさが鬱陶しくなってきます。だから兄に滅茶苦茶して、その端正なお顔を崩したくなってしまいます。

……駄目ですね、本当に、私は…………。


「私と比較する必要はありませんよ。お前はお前でいいのです。」

「……はい。」


悪魔は私の心で悠々と過ごしていて、私にはどうすることもできません。神も天使も、未だ交わることはできていないのは、もしかしてこの悪魔のせいでしょうか。

理不尽な苛立ちと悲しみは私の身体に充満して、逃げ道を探しています。今にも破裂してしまいそうですが、利己心に裏打ちされた理性がそれをなだめています。


「……神はお前に試練をお与えになったようですね。」

「試練、ですか?」

「与えられた試練はお前にふさわしく、絶対に乗り越えられるものです。それを乗り越えた時、お前はもっと強くなれるでしょう。決してあきらめないように。」

「はい。尽力いたします。」

「よろしいです。その身体を完全に悪魔に受け渡してはなりませんよ。そうなってしまえば、オグル教徒のように、虚しい魂になってしまいますから。」

「それだけは絶対嫌です。」

「そうでしょう。気をつけなさい。お前なら大丈夫ですよ。」


オグル教徒は悪魔に心を奪われた人たちです。非常に利己的で、卑しく、見目も心も汚い者ばかりです。なんでもオグル教本部の協会の地下室では、奴隷を使い人体実験を繰り返したり、教徒を洗脳したりしているらしく、また教主は色欲のままに女性を貪っているとかなんとか……。

なんておぞましいのでしょう。オグル教徒は、アンジュ教を目の敵にしているらしく、たびたびアンジュ教徒に攻撃をしかけては負けています。そのお話を聞くたびに、胸がすくような思いが致します。


「それに、お前だけが試練を与えられているわけではありませんよ。私も私の悪魔と戦います。……天使様が再び戻られるまで。」と、お兄様は毅然とおしゃって、「オグル教徒にだけはお気を付けて。」と続けられました。

頷いてから、ふと気になったことをお尋ねします。


「お兄様はどのような試練を与えられたのですか?」

「知りたいですか?」

「はい。教えてくださるのなら。」

「……困りました。これは秘密です。」

「そうですか。」


お兄様は秘密主義なお方です。もしくは、私などに話す価値もないとお思いでしょうか。それもまぁ仕方がないことでしょう。

……いえ、これはあまりにも悲観的ですし、罪の擦りつけですね。ただ心がチクチクします。悪魔が私の心の柔らかい所を刺すのです。


「さぁつきましたよ。」というお兄様の声につられて顔を上げれば、知らぬ間にダイニングルームに到着していたようです。

中に入ると、そこにはお母様のお姿がありました。他には使用人が二人います。


「あら。ナイト様がお姫様を捕まえてきたわね。」


くすくすと上品に笑うお母様は、森の妖精と言われるほど大変可愛らしく、多くのアンジュ教徒に慕われております。

……いったいお幾つなのでしょうか。二児の母とは到底思えないほどの美貌をお持ちです。しかし可憐なお姿の裏に強烈な意思が宿っていることも知っているので、少し気圧されてしまいます。


「おやナイトとは光栄ですね。こんなに愛らしいお姫様を守れるなら男冥利に尽きます。いつでもお守りしますよ。」と、お兄様。


「くすくす。いいわね貴女は、こんなに愛してくれるお兄様がいて。ね。」

「……はい、本当に…………。」

「本当に貴女は恵まれているわね。私なんかは、よく姉や兄になじられたものだわ。きっと、優れた妹に嫉妬したんでしょうね。兄弟姉妹に優しくされた記憶なんてないわ。まぁそれでも、こうして立派に法王の妻を務めているのだから大したものよね。ねぇ? そう思うでしょう? 貴女も。」

「は、はい。」


実は私、お母様のことは少し苦手です。悪意が全くないのは分かっているのですが、なんだかお話ししているとこちらが潰されてしまいそうになります。乳母に育てられたものですから、お母様に馴染んでいないのが原因でしょうか。

まぁそれでもお母様はこうして時々お会いしてお話しする機会がありますから、まだお母様がお母様であることが胸に落ちますが、お父様とは典礼の際に顔を拝見するだけで、面と向かってお話したことが、1,2度程度しかありませんので、本当に他人同然です。お兄様はよくお話しされているようですので、恐らく不出来な娘には興味が無いのでしょう。


「さて、午後にはお客様がいらっしゃるし、お相手しなくてはいけないわね。1日中神殿に籠ってお祈りをしているわけにもいかないわ。」

「……。」

「あらごめんなさい、皮肉じゃないのよ。」


お母様は、つい口が滑ったとでも言うような表情で、優雅に口を押えた。


「あ、いえ、……どうぞお気になさらず。」

「まぁそんな顔しないでちょうだい。ごめんなさい。こんなに謝っているのだから、許して頂戴よ。」

「本当に気にしておりません。」

「そう? じゃあいいわ。お詫びに、母から可愛い娘へ一つ忠告よ。人と会話する時は、笑うのがマナーでしょう?」

「? 笑っていますけれど……?」

「笑っているつもり、の間違いではなくて? もっと無邪気にもっと魅力的に笑うの。女は綺麗な笑顔が義務なのよ。そんなつまらなさそうな笑顔をしていてはいけないのよ。場にいるだけで空気を汚すし、一緒にいる人間の品格にも関わるわ。」

「……ごめんなさい。」

「ほら笑顔笑顔。……うーん、駄目ね。へたくそ。」


私は笑うことさえままならないようです。そろそろ、人間やめたらよろしいかもしれません。お母様の、だめ、という言葉が何度も頭に反復しては、心が痛みます。


「勘違いしないでね。怒っているわけじゃないのよ。もしね、貴女がそんじょそこらの貴族や平民なら、言うことは何もないの。けれど貴女は法王の娘よ。アンジュ教を背負っているの。言いたいことはお分かり? これは貴女のために言っているのよ。」

「はい、ご忠告ありがとうございます。重々肝に銘じます。」

「良い子ね。」


お母様は私の頬へ軽くキスをして、「頑張りなさい。」と励ましのお言葉を投げてくださいました。


「……あぁそうだ、貴女は甘いものが好きだったわよね。はいこれプレゼント。」


ぽんっ、と私の掌に落とされたのは、親指の爪程の大きさの球体で、ピンク色の可愛らしい柄の紙でラッピングされておりました。お母様はこれを、「お砂糖よ。テキトーに何かに混ぜて食べなさい。」、と言って、そのままお部屋を後にされました。

お砂糖とは、確か南のとある島でしかとれない、大変貴重なものだったはずです。

お兄様はいつのまにか私の隣におられて、ニコニコと気持ちがいい笑顔で「よかったですね。」と私におっしゃいました。


「……記念式典の訪問の際に手配してくださったようですよ。」


お話によると、色々と慌ただしいスケジュールの中で手配してくださったそうで、感謝の念が堪えません。と、同時に、そんな優しいお母様に抱く嫌悪感が、ひどく罪にまみれたように感じられます。

そして自分の器がいかに小さく、また相手が大きいか思い知らされました。


「近々、西の区へ行くので、美味しい紅茶を買ってきます。一緒にいただくのがよろしいでしょう。」

「い、いえ……お忙しいのに、申し訳ないです。」

「せっかくのお砂糖を、美味しくいただかないほうが申し訳ないですよ。」

「でも……。」

「まぁまぁ。ついでですから。」

「……。」


これ以上、私を惨めにしないでほしい! と叫びたくなってやめました。さらに惨めさに拍車をかけるのも阿呆らしいですから。

しばらくお食事を共にした後、お兄様と別れてまたふらふらと磁石に引き寄せられるように神殿に来ました。


ひやっと冷たい床も、神殿内に響きわたる自分の足音も、巨大な双翼の像も、好ましいことこの上ありません。

何よりも一人で長時間いても、ある程度容認される場所はここしかありません。


いつものように祈りのポーズをして、縋りつくように祈ります。


「どうしてこの世はこんなにも生きにくい……。」


けれどここにいる間は、私は呼吸ができます。だから私の心からの言葉を、おもむくままに吐き出せます。


「どうして……私は、こんな風になってしまったのでしょう。」


昔は、今の自分とは違ったような気がします。具体的にどうだったかと聞かれても、答えられませんが。


「誰か……。いえ、神様天使様、私をどうか、どうかお救いください。」


像は沈黙を保ったまま。


「ただ私を認めて、尊敬してくれるような世界が欲しい。……それができないのは、私の力が及ばないからでしょう。ですが、私だって努力をしているのです。なんでしたら、お兄様よりも……!」


要領のいいお兄様より、努力をした自負はあります。もちろん、結果はついてきませんでしたが。


「なのになんで、私は尊敬されないのですか! どうして……どうして、私を見下すような人間ばっかり! 幸運と才能に恵まれただけの癖に、偉そうにこちらを憐れむことができるのは……どうして?」


息苦しい。

誰か私を尊敬して、崇めて、私の前でひざまずいて、ひれ伏して……いえ、そんなこと。これはただの勢いです。こんなこと、本当は望んでいません。悪魔の仕業です。

だけど―――誰か私を認めてください。それだけが、私の望みです。それが叶わないから、こんなにも世界は息苦しいのです。


すぅ……と神殿の清らかな空気を吸います。


「わたしは信じます。天使、天と地、見えるもの、見えないもの、すべてのものの造り主を。

わたしは信じます。奇跡をもたらす慈悲深き愛情を。

主は、わたしたち人類のため、わたしたちの救いのために天からくだり、豊穣と智慧をお与えになりました。

しかし地上には悪魔が蔓延っていました。

そのせいで已まない争いをあわれまれ、涙を流され、泉になりました。

泉から子が生まれ、奇跡が生まれました。

主はわたしたちのために、愛しき子を地上に残し、子は天使として、幾多もの悪魔と戦いました。

子はわたしたちのために手足をもがれ、苦しみを受け、葬られ、主の手によって復活し、天に昇り、主の右の座についておられます。

神の子は悪魔を滅して世界に奇跡をもたらすために、1000年後、栄光の内に再び来られます。」


幼いころから幾度となく唱え、意味よりも先に覚えた音の羅列を口に出しながら、手を捧げます。


「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、清らかなる神の子よ。あなたの手はわたしたちのために葬られた。どうぞお次は、私たちの手をお使いください。」


目を閉じます。


「人類をあわれみたまえ。」


そしてどうか―――私を、悪魔からお救いください。


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