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天使は今日も動かない  作者: たいちゃん
勇者の苦悩
14/30

最善策の模索


二人の少女が起きた時、思わず泣いて抱き着いてしまった。

情けないとは思ったが、どうしても感情が抑えきれなかったのだ。目覚めてよかった、と思ったり、なんて可哀想な、と思ったり、いくつもの感情がいったりきたりしていけなかった。


二人はやがて幼馴染によって、おちび、と、天ちゃん、と呼ばれるようになった。


ちびは、言葉が「う」しか喋れない状態であったが、しばらく一緒に過ごしていると、表情は朗らかになり、活発に動いてくれるようになった。喋れないけど、目や動作が口ほどに物を言ってくれるので、コミュニケーションは全然問題ない。


ただ、他の人が動く拍子に、時々びくっとするのが痛々しい。柔らかい皮膚に、痣や切り傷も残っていて……本当に、こんな事をした人間を許せない。

その小さな体に、一体どれほどの傷を受けたのだろう……。

さらに足までなくしてしまって、彼女の気持ちはいったいどれだけ辛いだろうか……。せめてその傷が少しでも和らぐように、丁寧に抱き上げる。

そうすると、にこ~って笑うのが、無邪気でとても可愛い。


「親ばかね!」


幼馴染はそう言うが、彼女もまたおちびを猫可愛がりしている。まぁお互い様だ。


一方天ちゃんは、全く喋らない。どころか、動かない。義手と義足はあげたが、一度も動かしたことが無い。

ソファの上でいつもぼんやりしている。

好奇心や、遊び心でいっぱいであるべき女の子とは思えない姿だ。

……彼女の心の傷は深いだろう。一体、その胸にどれほどの絶望を吸い込んだのだろう。


時々、俺か幼馴染、もしくは最近「やっほー」と何気なく来た先輩が彼女を車椅子に乗せて、外へ連れていく。

たまに、本当にたまに、目が動くときがある。だからきっと、何も感じてないわけではないのだろうと、少しホッとする。だけどやっぱり動かないし、喋らない。時々、生きる気力がなくなっているのではないかと心配になってしまう。


だけど食べ物は、食べさせてあげればしっかり食べてくれるから、まだ、希望が無くなったわけではないのだと思う。そのか細い希望が潰えないように、反応のない彼女に必死に話しかけ、美味しい料理を作るよう努める。


彼女たち二人が、今までどんな人生を送ってきたのか、どんな思いを抱いているのか、……これだけ一緒にいるのに、俺たちはまだ少しも知れていない。ちびのことも、天ちゃんのことも、俺たちは何も分からない。

いつか、分かる日が来るのだろうか。来ると良いなと、心の底から思うよ。


それと同時に、こんな小さく可憐な少女達に、こんな目に合わせたアンジュ教が非常に恐ろしく、また憎々しいものに感じた。

いつか話した、シスターはじめ多くの熱烈な信仰者も思い出して身震いする。

とてもじゃないが、正気とは思えない。


「やっぱり……怖いなぁ。」


天ちゃんの寝転がっているソファの横にあるロッキングチェアにギコギコ揺られながら、何気なしにそうつぶやくと、後ろから返事あった。


「なにが怖いの?」


ココアを片手に二つ、もう一方の手に一つ持った幼馴染の姿がそこにはあった。彼女は一つを俺にくれ、もう一つは机の上に、最後の一つは天ちゃんの口に持って行った。美味しかったのかぐびぐび飲んでくれる。

良い飲みっぷりで、見ていて胸の奥からふわふわと愉快さがこみ上げてくる。本当に美味しそうに飲むなぁ。

だからこそこう思わずにはいられない。


「宗教……っていうか、アンジュ教みたいな宗教が怖い。天ちゃんも、ちびも、……アンジュ教が無かったら、もっと幸せになれただろうに……。」

「そうなのね!」

「宗教自体が悪い物だとは言わないよ。信じることも人それぞれだと思う。だけど、それを人に強要したり、それによって人を傷つけたり殺したりするのはおかしいよ。」


彼女は、ふむ、と白くて細い指を顎に添えた。


「あなたは、宗教はどうあるべきだと思うの?」

「うーん。…………幸せになるための、一つのツール。それ以上であってはいけないと思う。少なくとも……それで誰かが不幸せになったら、本末転倒だ。」

「なるほどね!」


天ちゃんは全てのココアを飲み切り、今度は幼馴染が自分の分のココアを飲み始めた。緩く動く彼女の喉に何とも言えない女性らしさを感じる。

彼女は口を開いたが、その時の目はどこかで見覚えがある気がして、胸に言い知れない恐怖が曇天のように覆いかぶさった。


「本気でそう思っているのだとしたら、大まぬけね!」


その目はまるで、あの―――――……。いや、よそう。気のせいだ。


「えぇ~。そこまで言う?」


変な空気を払拭するために適当におちゃらけたが、彼女は真剣だった。必然、俺も真剣になる。


「……信仰っていうのは、神を信じることだわ! 道徳の奴隷じゃなくて、道徳の生みの親よ。」

「いや、俺は、そういうのは名目上で、過剰な欲望を抑え、道徳や倫理観を守って皆で幸せになるための道具であるべきだと思う。」

「極論、神はいらないってことかしら?」

「うーん、まぁそうなるかな。でも、そういう皆で幸せになるためのルールを守る分かりやすい理由として、必要かなぁって思うよ。」

「あなたはそう思うのね!」

「変だと思うかな?」

「あなたらしいわ! でもね……。あのねあのね。」


彼女は秘め事を話すように、続けた。


「もし道徳なんかのための宗教なら、こんなに多くの人がついてくるわけがないわ! 貴方が元居た世界でも、この世界でも、人間が集まれば宗教が生まれるのはなんでだと思う? 本当に、そういう目に見えない、奇跡的な存在があるからなの!」

「……でも、天使は人間だっただろ。」

「だからと言って、天使の存在が否定されるわけじゃないわ!」

「う~ん、まぁ、そうか。でも科学は次々と神の存在を否定しているよ。」

「科学じゃ神の存在を否定できないわよ。あくまで目に見えるだけのものを対象にしているだけのものだもの!」

「え~? じゃあさ、実際に神様っていう存在がいるとしてさ。この世界にも元の世界にも、色々な宗教があるわけだけど、宗教によって、神の言っていることは様々なのはおかしくないか?」

「ふふふ。まぁ言いたいことは分かるわ! でもね……。」


まるで分からず屋の子供をなだめるような様子だ。

何で、この可愛い可愛い幼馴染と、こんなことで議論しなきゃいけないのか分からなかった。彼女に対して批判的な……いや、宗教に対して批判的な目と、彼女が宗教を擁護する理由が分からず困惑した目で幼馴染を見つめるが、彼女はものともせずこう言い切った。


「でもね、他の宗教は、不思議な存在にそっと触れて喜んでいるだけなの。だからあんなにバラバラなのよ。世界の真実を知れるのは、アンジュ教の信者だけだわ!」

「……は?」


いやいや、笑えない冗談だ。


「き、君はアンジュ教の信者なの?」

「どうかしらね。でも、アンジュ教の言っていることは正しいわ! アンジュ教を信仰することだけが、唯一本当に幸せになる道なの。魂が救われる道なの! だから、貴方にも知って欲しいのよ……。分かって欲しいわ。天使様はいるの。それは天ちゃんじゃないわ! 彼女は、ただの依り代だった! でも彼女の身には確かに天使が舞い降りていた! それは、私と……恐らくお兄様しか知らない事よ。」

「いや……意味が分からないよ。そもそも君に兄はいないだろう。」

「そうだったわね!」

「えぇ……。」

「それにね。天ちゃんも、おちびも、犠牲になったわけではないわ! そう考えるのは、あくまで貴方の価値観であるだけ! 二人は幸せだったと思うわよ。それをあなたが邪魔をした。」

「で、でも、おちびはあのままだったら死んでいたんだぞ……?」

「死が不幸なんて誰が決めたのかしら?」

「……。……本気で言ってるのか?」


彼女は、なにを当たり前なことを、と言いたそうにうなずいた。純粋な目だった。俺は背をひるがえして、逃げ出すように外に出た。

部屋を出る時に、彼女は丸くて大きい目をこちらに向けて言った。


「あなたは———いつも拒絶するんだね。貴方の中の常識に当て嵌まらないものは、受け入れられないのね。なんて……なんて可哀想な人。」


人生で初めて、幼馴染から本気で逃げた。


「っは……はぁ……。……はぁっ……。…………。」


全く、これっぽっちも、幼馴染を理解できなかった。頭が痛くて、信じられない事態に息切れが止まらない。

長年一緒にいた。これでもある程度は、彼女を知っているつもりだった。本当に、つもりなだけだったんだと思い知らされた。いつから彼女は変わったんだろうか。あの泣いていた日、やはり彼女を抱きしめるべきだったかもしれない。もしくは、異世界の生活が、彼女の何かを変えたのだろうか。


「……いやいや、分からないって…………。」


俺のせいか? そうかもしれない。いや、そもそもこの世界に来たのは俺のせいだから、絶対に俺のせいだ。

きっと彼女を、そこまで追い詰めてしまったんだろう。


でも、まさか、あんな悪質な宗教に幼馴染がハマるだなんて思いもしなかった。自分より余程しっかりしていて、優しくて、俺は……彼女を胸の内で尊敬していたんだ。なのに……。

本当に理解が不能だった。

だって、あんな天ちゃんやちびを、あんな姿にした宗教が、良い宗教のはずがないんだ。なんでそれを聡明な幼馴染は分からないのだろう?

本当に、心の奥から不思議で、理解は微塵にもできない。ただ彼女への負い目と、恐怖で口内が異様に乾く。


「だけど……。」


俺は、俺に確信を持てない。

この通り俺は正しい人じゃない。それなのに、どうして幼馴染に「間違っている。」だなんて言えるだろうか。エゴイストが審判にどうしてなれよう。


俺は、自分が嫌な気持ちになりたくないから、周りに幸せになって欲しいと思う。そしてその気持ちに則った行動をする。それは誰かの目から見れば、親切で正しい行為に見えるかもしれないが、そんな事はない。

これは俺としても残念であるが、俺が幸せになって欲しい人、つまり幼馴染含む周りの人以外には、非常に冷淡であるらしい。自分の命はもとより、娯楽代すら大事に胸に抱え込んで背を向け、無残に死んでいく人を横目にチラリ。

それは卑しい人の象徴的な姿だ。つまり、俺だ。俺は、そういう自己に偏った、エゴイストなのだ。

だから幼馴染に何か言う資格はないのだろう。


それにあの日———幼馴染が泣いていた時、俺は、何もできなかったじゃないか。


「……はぁ。……もうよくわかんねぇや。」


寝るかぁ、と思って部屋に入ると、何故か俺の布団に入り込んだおちびが、ぐーすか寝ていた。その平和そうな寝顔に少し気が緩んで、俺も布団に入り込んですぐ寝た。横にある熱と呼吸が、冷えた心には有難かった。


……ここで逃げださなかったら、何か変わっていただろうか。


次の日の朝、彼女は「おはよー!」と、まるで何もなかったかのように挨拶して、いつものようにココアを作ってくれた。俺も自然に挨拶を返してから、あれ、と思うが、すぐにその疑問も、違和感も、日常に飲み込まれてしまった。

5人での生活は、平穏で、でも騒がしいこともあって、楽しくて、でも……二人で話し合うのには、少し不向きだった。

いや違う、逃げていただけだ。


もし幼馴染と、真正面からぶつかっていたら何か変わっていたかもしれない。

考えろ、と言ってくれたクラスメイトも、一緒に考えよう、と言ってくれたエルフもいたけど、俺はやはり逃げた。


怖かったのだ。いつも俺に寄り添い、賛同し、褒め、支え、弱い所も醜い所も笑顔で受け入れて笑ってくれた幼馴染に否定されるのが、怖くて逃げた。

男として、人間として、最低だった。そう言わざるを得ない。


俺はまた、何かを間違えてしまったのかもしれない。





珍しく先輩に誘われ、散歩に出ていた。

幼馴染も、おちびも、天ちゃんもいない状態で、二人で話すのは初めてかもしれない。少し緊張した。


「お前さん、珍しく暗い顔してんじゃねぇか。どうしたよ。」


煙草を咥えながら、先輩がそう言った。気を遣ってくれているのだろうか。


「別に、何もありませんよ。お気遣いありがとうございます。でも本当に……。」

「んなこたねぇだろ。そうだなぁ……幼馴染と何かあったろ。」

「っ。」


妙に鋭い。


「時を戻す能力あるんだろ? 使わねぇのか? そしたら楽に解決できるのによ。」


彼は悪戯っこのように俺に問いかけた。

口では笑っているが、その目は冷静で、俺の反応を観察しているようにも見える。そういえば、最初に会った時もこんな目をしていたなぁ。


「ずっと考えていますよ。」


別に今回の件だけじゃない。俺は後悔だらけだ。


「普通は過去なんてやり直せませんよね。だからどんな結末になっても、前を向いて歩いていくしかない。俺だってずっとそうやって生きてきた。」

「……。」

「でも今の俺は、一度きりだけどチャンスがあるんです。そのチャンスを捨てて、今のまま生きていくのは楽だけど、きっとそれは正しくない。救える力があるのに救わないのはおかしい。」

「じゃあ、その能力を使うつもりはあんのかよ。」

「はい。でも時を戻すのは今じゃないとは、思います。」


さく、さく、土の上を歩く音が耳に響く。


「いつ、使うんだ?」

「もっと考える時間が欲しいんです。そして最善策を考えます。それから……。」


そうして、おちびのような幼気な女の子を奴隷にするなんて馬鹿みたいな制度を止めて、アンジュ教をなくして、天ちゃんのような犠牲もなくして……。

それから争いもなくして、乞食をするような子どもが出ないような、そんな世界にしよう。

そして、幼馴染がなんであぁなったかも考えて、悩んでいるなら今度こそもっと付き添って、苦しんでいるなら一緒に背負って、共に生きたい。

みんなが笑って暮らせる世界で、幼馴染と笑っていたい、なんて流石に贅沢すぎるか。それでも幼馴染には心の底から笑っていてもらいたい。


……逃げたのに。今も、幼馴染と話をすることは、できるのに。


それをできない俺が、こんなことを願うなんて馬鹿みたいだ。それでも俺は、今の彼女と話をする勇気がどうしても出なかった。


「だけどお前さん、時を戻すってことがどういう意味かわぁってるか?」

「はい。多分、俺の考えは酷く傲慢なんだと思います。みんな一人一人、人生を必死に歩んでいるのに、それを俺の勝手で戻して、俺が思う幸せにしようと思っているんですから……。きっと許されることではないでしょう。」

「……。」

「だけど、それでも。苦しんでいる人を苦しんでいるままにしておいたら、俺が苦しいじゃないですか。だからこれは、俺のエゴですよ。」


全部、全部、全部、俺のエゴだ。


「先輩? ……どうしたんですか? 少し、顔色が悪いですよ。」

「ん? いやぁ……。別に。…………ちっと歩きすぎたかなぁ。」






「――――え?」


一瞬大きな光に包まれて、それから体の力が一気に抜けた。体の芯がぐにゃりと曲がり、今までたっていたことが不思議に思えるくらい、膝に力が入らなくなって倒れこんだ。揺れる視界の中で、床は不思議な文様が描かれているのが目に入る。魔法陣とか魔術陣とか、言い方はよくわからないが、大方そういう類のものだろうと推測できるものだ。


やがてその文様は、青い液体に侵食されていった。


その青い液が、自分の体から出ていると気が付くまで、多少の時間がかかったのも仕方がないだろう。それが、魔素が凝固したものであることも、しばらくしてやっと気が付いた。というのも、頭は内側から釘を刺されているように痛いし、猛烈な吐き気はするし、食道も痛むし、視界はぐらぐらするしで、思考がまとまらない。

魔素って青いんだなぁ、なんて呑気なことまで考え始める始末だ。


ただ、この元凶はすぐに分かった。

元凶は、真っ青な顔で、釘の刺さった人形を持ってこちらを見ていたから。


「なん…………で……、きみが……」


俺の目の前には、釘の刺さった人形を持った幼馴染がいた。

彼女が釘を刺すたびに、俺の身体にも穴が開き、魔素が漏れる。恐らく魔法の効果だ。魔法とはもっと綺麗で楽しいものだと思っていたが……こんな使われ方もするんだなぁ。

怖いというよりも、少し残念な感じがした。


いや、そんなことどうでもいい。

それよりも、幼馴染が俺を殺そうとしていることに戸惑いを隠せない。


「なんで……。」


幼馴染は黙ったまま、綺麗な瞳からぽろぽろと水晶のような涙を流した。西日が射し込んで、その涙を照らし、無言劇のような趣を与える。

彼女は恐怖と悲哀と歓び、達成感と虚無感をまぜこぜにしたような表情をしていた。


そもそも、何故、こんなことに……。


勇者の力は、もうすでに他ならぬ幼馴染の願い、それもくだらない……瞬時にココアを持ってくるという願いで使われてしまった。先輩とおちびの気配は近くにはない。

夕方の蝉が五月蠅い今日、油断したというより疑うという考えさえなく呑気に過ごしていたら、幼馴染がひょこっと出てきて、急に妙ちくりんな呪文を唱え始めたのだ。そうしたら地面から文様が浮き出し、体に幾つもの穴が開いて、激痛と吐き気に襲われ倒れた。

幼馴染はあらゆる感情を潜ませた表情で、こちらを見下ろしていた。


「な……んで……こん……な……。」


彼女をこんな事をする理由がわからないから、事によったら、天ちゃんやおちびが危ないかもしれない。

けれど、もはや俺には何もできなかった。魔素は抜けすぎたし、呼吸は苦しいし、頭がグラグラして立ち上がることはおろか、這いずっていくのも難しそうだ。

目を開けるのもきつい。耳も綿をつめたように音が聞こえにくい。頭の中の針山が膨張していくようだ。穴が開いたところどころじゃなく、全身が悲鳴を上げている。

これから容易に死ぬ俺の姿が想像できた。


「……っ。」


ぽたっ、と頬に雫が落ちた感覚がした。


気づいたら、幼馴染がすぐ近くにいて、俺の顔を覗いている。もう顔もしっかり見えないけど、悲しんでいるのはよくわかった。

あぁ……彼女が悲しいと、俺も悲しいんだ。


「わら……って……く……れ……。」


君が嬉しいと、僕も嬉しくなるから、ねぇ、泣いていないで笑ってくれ……。


―――一から始めたら、彼女はまた笑ってくれるだろうか。


「…………。」


……もう、そんな力は残っていない。

再び彼女の笑顔を見られることはなく、意識は完全に遠のいた。


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