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天使は今日も動かない  作者: たいちゃん
勇者の苦悩
13/30

突発的善


昔のクラスメイトの話だ。

彼はいじめられっ子でいつも俯いていた。いつも下を向いているくせに、いつも人を見下しているような子だった。それに加えて、話しても話し方が下手なうえに単語が出てこない。故に、人に理解されにくく、理解されないたびに頻繁に癇癪をおこすせいで嫌われていた。


けれど癇癪が終わった後、どこか悲しそうな表情をしているのが気になってモヤモヤしたから、話しかけた。


『隣いい?』

『……。』

『君に興味があるんだ。だから話したいな。』

『失せろ愚図。』


最初は、嫌われる奴には嫌われる理由があるんだなぁ、なんて最低な感想を抱きながら一方的に話したものだった。

だけど段々話してくれるようになり、その彼の話がとても面白いと思うようになったのだ。

隙さえあれば進んで彼に話を聞きに行くほどに、俺は彼の考えに新鮮さを感じた。


『突発的で衝動的な行動は、あれだよ。それこそ善性だって考えてる愚物が多いんだけど、僕に言わせちゃあ、そんなの、ねぇ。うん。あれだ、あれ。』

『うん。僕に言わせちゃ、なんだって?』

『あ~もう!! なんで分からないッ!! この薄ばかがッ!!』

『いてっ。……馬鹿だからわかんないんだよ。教えてくれよ。』

『……チッ、陋劣な愚民め。……まぁ良いだろう。ええと、なんだっけ。ええと、とにかくみんな安本丹ばかりなんだよ。考えなしなあれが……。』

『あれ、ってなに?』 

『あぁ!? ……あ~あれだよ、あれ、ええと……。』


彼の話は非常に聞きにくかったので、まとめるとこうなる。


つまり、突発的で衝動的な行動などというものは、善と悪どちらに転ぶかなんて、運次第だ。だから考えなしの行動は、総じて善行とは言い難い。

例えばよく漫画のシーンである、脊髄反射でヒロインを守る主人公とか、悪人の行動に思わずカッとなって手を出す主人公の行動は、善行ではない。それによって何が起こるか考えずに行動したということは、もしかしたら悪い方向に転ぶ可能性が十二分にあり、たまたま主人公の運が良かっただけにすぎない、と。


もっとも、熟考うえでさらに善の思考をもって行動したって、それが良い方向に向かうとは限らない、と彼は述べる。


『それでも、それは……あの、あれだ、そういう行動は、善行、だと思うがね。僕は。あの……心の中に善というものがあって、それを基盤に考え、動いたなら。』


彼は、初めよりは回る口で、そうまとめた。

俺は、行動の結果によって善行か悪行かが決まると思っていたから、意外な考えだった。それを伝えると、彼は『あぁ。』と言った。


『行動の結果を重視するか、内面を重視するか……それが、あれだ、ええと、大事っていうか、ええと……。』

『なるほど。それが俺と君との考え方の違いなわけか。』

『そう。そうだ。それで、言ってみれば、言い換えて見れば、お前の言う善とやらは、所詮頭の出来が良くないと無理なやつだ。勉学と言うミーンでなくてな。それで……ええと、それは本当に善か? 頭の良し悪しで善が……その、判断されて、いいのか?』

『……なるほど。』

『……ふん。お前は、あれだな。話が分かるやつだな。将来有望っていうか、なかなかいいぞお前。まぁボンクラな民衆の中で、という大前提がついてくるがな。』

『そう思うなら、もっといろいろ教えてくれよ。君の話はとても面白いんだ。』


ずれた日本語を多用したり、指示語をたっぷり使ったりする彼の話は、それでもなお俺にとっては面白かった。

彼とよく話すと周りの人間が嫌な顔をしたが、知ったことではなかった。まぁちょっと、いや大分臭いし、癇癪起こすと物を投げてくるし、不快な表現をすることもあるから、嫌がる気持ちが分からなくはないんだけどね。

けれどその欠点を補って余るほど、彼との話は面白かった。


ある日彼は転校することになった。その時、彼は言った。


『お前は……自分を、その、偽善者、なんて言葉で表して、いろいろ断絶? ……断念しているようだが、僕にいわせりゃ、お前はあれ、あの、善人だよ。僕とこんなに話してくれたのは、お前だけだという事実もある。』


相変わらず目は合わないし、動作はそわそわしているし、頭からはハラハラフケが舞っているし、庇えないほどの不細工だし、臭いし、服は汚いが、チラリと見える黒い目は透き通って少し綺麗だった。

赤くなった頬が、照れているのだと分かって、ブルドックに愛着がわいたような気分になったものだ。


『……うーん。ありがとう。でも、やっぱ俺は偽善者だと思うよ。俺は周りの人間に笑ってほしいだけ。そうして自分が幸せになりたいだけ。他にいっぱいいっぱい苦しんでいる人がいるのに、それを知っているのに、俺は周りにしか興味が無い。』

『傲慢だな。世界中の人間という種を救助するつもりか? この二本棒が。』

『いや。そんなの無理だよ。ていうか二本棒ってなに?』

『ふん。』

『だけど、苦しんでいる人を知っているのに、自分の娯楽程度も差し出せないような人間が、善人であっていいわけがないよ。目の前の人間が悲しければ、俺も悲しいから笑顔になって欲しいだけ。俺はやっぱり俺のためにしか行動してない。』

『そうやって、割り切ることは、あまりよくないと僕は思うがな。それは、なんだ……ええと、そう、危険だ。自分の行動が、ただの勝手な行動だって思えば、もうなんでもありだぞ。それは危うい。』

『でも、俺は善人にはなれないよ。』


彼はしばらく黙っていた。どうやら言葉を探しているようだったので、待ってみる。


『……。……お前は、……お前が、そういうなら、そう思っていればいい。こんな問題に正解などないんだ。それがわからんのか。それだから表六玉なんだ。』

『ええと、……表六玉?』

『うるさい。だけど、お前は親友だ。だから良いことを教えてやる。』

『ん?』

『行動を起こす前に、一度考えろ。それをするなら、僕はお前を善人だと認めてやる。誰かがお前を悪人だとのたまっても、俺はそれを、あれだ、否定と思ってやる。僕がそう思考するんだ。だから、それは僕の世界において絶対的な、ただ一つの正解だ。』


もう名前も忘れてしまったクラスメイト……いや、親友だけど、話してくれたことはしっかりと覚えている。あの日、あの言葉はきっと、不器用な彼が精一杯俺を慰めようと言ってくれたんだと思う。

だからこそ、とても申し訳なくなってしまう。


俺は今日、考えなしに行動した。

君はきっと、心の底から俺を軽蔑するだろう。


だからこそ、久しぶりに君と話したいなぁ。




夜も更けた頃、疲れ果てた俺と、俵のように抱えた天使と少女を迎え入れる様に、幾重にも重なった樹木の葉が掠れた音をたてた。何度かここを訪れたが、その度に俺は不思議と安堵する。あぁ歓迎されている、と肌で分かるのだ。

迷いの森と呼ばれるここは、勇者と勇者に連れてこられた人間しかまともに入れない。もし入れば、一生森の迷宮をさまよい続け、餓死するとかなんとか怖い話を聞いたことがある。


何が驚きかって、この迷いの森は世界各地にあるのだ。その数10つ。


俺はそのうちの一つであり、この国のはずれにあるこの迷いの森に、一つの小屋に近い家を建てた。建築家の友達に一から教えてもらって、3度失敗して、やっと雨風がしのげる程度のものができた。

そして俺が教会に忍び込む前に、バレたら幼馴染の立場が危うくなると思い、念のため彼女にはこの森の中の家に隠れてもらっていた。


もらっていた、はずだったが、何故か彼女は森の入り口で手を振っていた。


「おかえり。」


暗くて表情は良く見えないが、笑っているのが分かる。


「な、なんで外に……?」

「えへへ。ちょっと……心配になっちゃって?」

「いやいや危ないよ! というかごめん。あんまり詳細を話している時間がないんだけど、ちょっと今急いでて……。暗くて良く見えないだろうけど、重症の女の子がいるんだ……! 急いであの家に行こう!」

「? 分かったわ!」


何も知らないため不思議そうな彼女と一緒に、森の中を駆け足で家に向かい、二人の少女をベッドへ寝かして、その足でそのままエルフの里へ走った。気分はまるでメロスだ。本当は時間を止められれば良かったけど、あれは一日一回しか使えない。

エルフの里につくと知り合いの門番に頼み込み、お医者さんを呼んでもらった。お医者さんは友達の母だ。事情を話し来てくれと頼めば、一も二もなくOKしてくれた。俺や少女は人間で、エルフとしてはあまり歓迎できる者ではないはずなのに……。本当に良い人だし、良いお医者さんだと思う。

二人でまた急いで家に向かう。


彼女はエルフ独特の長い髪と、薄緑の細い髪を持ち、おっとりとして上品な雰囲気を感じる女性である。銀の眼鏡が知的だ。

少女を診た後の彼女は、普段より少しだけ険しい表情をしていた。


「うん、だいじょうぶ……、応急処置がちゃんとしてあるから、この子も命に別状はない……うん。まぁ、かなりの脱水症状と栄養失調があるけど……。とりあえず、これ飲ませてあげたから……うん。熱もあるけど……じき下がる。……下がらなかったら解熱剤ね。」

「助かりました。ありがとうございます。」

「ううん……気にしないで。貴方には、私の子供を助けてもらったし……うん。……少しでも、恩返しになればいいよ。」


たまたま、彼女の娘がゴブリンに攫われそうになったところを助けたのがきっかけで、彼女ふくめエルフの里の人々と交流がもてたのだ。

それが、今につながるとは思わなかったが……。やはり持つべきものは友だと思う。


「それから、うん、義手や義足だけど……ドワーフに頼むと良い……かもしれない。私はあんまり好きじゃないけど……。腕は確か。うん。」

「わかりました。ドワーフには数人友達がいるから、頼んでみます。」

「うん、それがいい……。貴方は友達たくさん……貴方の役に立ちたい人もたくさん。貴女が受ける当然の結果であり、報酬。だから、……うん、たくさん頼めばいい。」

「俺はそんなたいした奴じゃないんですけど……。でも、ありがたいです。今回のことも本当に助かりました。しつこいですけど言わせてください。ありがとうございます。感謝してもしきれない……。」


彼女は、それを静かな微笑みで受けてくれた。

しかし、すぐにその表情は、何か言いたそうな、でも言いにくそうな複雑な表情に変わった。しばらく外の窓に目を向けていたが、やがて口を開く。その瞬間、部屋の空気がクッと張り詰めるのを肌で感じた。


「……この二人の状態は、うん、ただ事じゃない……。」

「……はい。」

「一人は、たぶん奴隷だったのかな……って、うん、首輪の跡とか体中の傷跡から推測はできるけど……。なんで溶けているの……? こんな足を欠損するような溶け方は強酸でしか起こりえないけど……近くの天然物にこれほどのものは存在しない。ということは……。うん。まぁ、それに、一度目を覚まして……その時に、うん、精神状態もおかしかった……。言語障害も……。……。まだ、ちゃんとわからないけど……。」

「そうですか……。」

「それに、もう一人は……。」

「…………。一“人”ってことは……やっぱり人間なんですね。」

「…………それは……どういうこと?」


訝しむ彼女に、なるべく詳細に、事情を説明した。


彼女は最初、少し目を見開いたが、すぐにいつもの落ち着きを取り戻した。エルフという種の性質上、若々しい見た目に反して中身は成熟しきっているためか、それともそういう性格のためか、彼女が大きく取り乱した姿を見たことがない。彼女はどのような場面においても、平常と共にある人だった。


「それで……この子は、うん、れっきとした人間だよ。」

「そう、ですか……。」


少女が人間であるという事実が意味することは……あぁ。嫌な予感に胸がざわつき、どうしようもなく落ち着かい気分になる。

エルフは、天使……いや、少女の黒い髪をなでながら静かに言った。


「この子の四肢は、……うん、なにか刃物で切断されている……。いや、切断というほど綺麗じゃない……鉈とか、うん、そんなに切れ味のよくない、大きくて重い刃で叩き切っている……って感じ。多分、あまり力のない人がやったのだと思う……。だからその人は、うん、何十回も刃物を振り下ろして、この子の四肢を切った……と、推測できる。うん。」

「……ッ!」

「そんなやり方だから……当然、肩の骨やあばらにも影響が出る。……うん、骨が変なくっつき方している……。」

「……。…………。」

「あと、この子の切断面は、切られたあと、なにかで焼かれている。……酷い火傷。うん、たぶん、熱した油を使ったんだと思う。それにしては範囲が狭いけど……治癒魔術師が死なない程度に治癒、したのかな……? 拷問みたいなもの……うん、正気じゃない。治癒魔法師の数も多くなった今、そんな古くて危険な方法とるなんて……うん……残酷すぎる。」


……あぁ、……もしいるなら神様。なんでこんな幼子に、こんな残酷なことをしやがったのか……。

惨い。あまりにも惨すぎるじゃないか。

手足の黒くなった切断面を見て、胸から何かがこみあげてくる。激しい怒りと、悲しみ。勿論、それは俺が感じる資格がないことは分かっているけど……。


「貴方の気持ちも重々承知したうえで……うん、ごめんね、それでもこの先の話をさせてね。」

「……いや、すいません、つづけてください。」

「うん。……彼女もだけど……手足は、まぁ、どうとでもなる。というか、……うん、生やせるものじゃないから……どうともならない、から……代わりになるものを作るしかない……。」

「はい。」

「考えるべき問題は、……精神だと思う。栄養失調とかは無いし……痣とか傷はないし、清潔……うん。もう一人の子と違って、手足の切断を除けば虐待的な扱いを受けていたわけではなさそうだけど……。だからと言って、心が健康であったわけではないと思う……恐らく。」

「立場上、衣食住はちゃんとしていたと思います。でも、起きているのを見た時は、表情らしい表情がなくて……少なくとも、普通の様子ではなかったです。」

「……うん、なるほど……。あとでその話詳しく……。……まぁ、でも、いくらエルフといえども、うん、目を覚ましてからしか分からないところが多い……。」


エルフ族の得意分野は、精神的なものらしい。繊細で、奥の見えない“こころ”というものに、ほとんどのエルフの多くは心を惹かれるそうだ。

そんなエルフ族であり、医者である彼女の専門はメンタルケア。まぁ彼女の娘が勝手にそう呼んでいるだけであって、自称しているわけではないようだが、そのような心の病を持つ者が患者に多いようだ。

しかし、そもそもこの世界で、精神医学はあまり進んでいないらしく、長らく生きた彼女でさえ現在も四苦八苦しているとか。


まぁそれは兎も角、彼女の持つ目は心の底から凄いと思う。彼女のその神聖な光が宿った翡翠色の目にはきっと、身体も心も明け透けに見えるのだろう。それが頼もしくもあり、また心の奥底でうずうずとした恐怖を感じることもある。


「ところで、うん、あなたは何か悩んでいるみたいだね……。貴女の心にずっと引っかかっていること……うん、話すと整理がつくかもしれないよ……。」


ほら、こんな風に、ふいに心を暴かれるのだ。

彼女の繊細な雰囲気のせいか、心に土足で上がられたような苛立ちは全く感じないが、代わりに畏怖の念を感じる。


「え、えぇ、まぁ。」

「うん……。」

「まぁ、大した話ではないんですけど……。俺、この子を助ける時、少し戸惑ったんです。昔、クラスメイトに言われたことが頭から離れなくて……。」

「うん。」


昔クラスメイトから言われた言葉が、この子たちを助ける時に戸惑わせたんだね、と彼女は同じ内容を繰り返していった。

彼女の透き通った声のおかげか、オウム返しも不愉快な感じは全くしなかった。むしろ次の言葉を出すのを容易くした。


「別にそいつのせいにする気は全くないんです……。俺はあいつを尊敬しています。」

「……うん。」

「で、そいつに言われたんです。考えなしの行動は、ただの運試しにすぎないって……。」


彼女はまた、同じ内容を繰り返した。

頭の中に、自分の言ったことがすんなり入ってくる。


「だから、ちょっと、いろいろ考えました。」


もしかしたら、これは世界を救うためのものかもしれない。そしたら、俺は世界を滅ぼす極悪人だし、みんなが不幸になる。

もしかしたら、ここでアンジュ教の体勢を崩してしまうと、多くの人が犠牲になるのではないだろか。死者も出るかもしれない。だとしたら、天使の子だけでも、ここに残していくべきではないか。

もしや、IF、…………色々な可能性が、頭によぎった。中には馬鹿馬鹿しいものもあったが、それでもそれを有りえないと言えるほど、この世界についてまだ詳しく知っていなかった。


「結局、ぷっつんしました。」


どんな理由にせよ、少女を犠牲にしていいわけないと思った。……それに、ただそれを見ていることに耐えられなかった。


「結局、もっと考えてればもっといい考えがあったかもしれないし、もっと早く行動していれば彼女は足を失わずに済んだかもしれない……。」

「うん。」

「宙ぶらりんで、どちらも……。」

「うん。どちらも選べなかったんだね。」

「はい。それに、こんな事を考えているのが、この子に対して申し訳ない……。だって、この子は俺のあさましさによって両足を失ったんだ……! 俺は、まだ、ここにいたってもまだ、……正義側にいたいと、思ってしまっていたみたいです。」

「うん。」

「……。少なくとも、善意があって、考えたうえでの行動なら善行だ、って言ってくれたやつがいて……。」


彼女は極めて落ち着いて、俺の話を聞いてくれた。否定も肯定もせずに受け入れてくれたのが嬉しかったのと同時に、断罪してくれない彼女を少し恨めしく思ってしまった。勿論これは俺の勝手な思いだ。甘えてしまっているんだと思う。


「そもそももっと早くアンジュ教について調べていれば良かった。そうしたこの子たちだって、傷が浅いうちに助けられたかもしれない。あんな狂った場所にずっといたら、誰だって狂ってしまう! その前に……。」

「うん。」

「奴隷制度だって、もっとちゃんと調べていたら……!」


俺は後悔だらけだ。だけど本来、この後悔は一人で抱えていかなくてはいけないものだ。それを出来ない自分が嫌で嫌でたまらなくなってくる。

なのに、自分の口は勝手に、動いてしまう。あぁくそ。


「俺は、これからどうすれば……。」


甘えすぎな質問。

しかし、こんな問いに対して彼女はとても大らかに、かつ繊細につつみこんでくれた。つまり、温情あふれる答えだった。


「……うん、それは今から一緒に考えよう。……一日で答えが出なかったら二日で、二日で答えが出なかったら三日で……。うん、天に浮かぶ甘星が一周するまでかけてもいい。あるいは、死ぬまで考え続けてもいい……。でも一人で悩まないで、私じゃなくても誰でもいいから……、勿論私でもいいから……。うん、誰かと一緒に……考えよう。」


それから彼女はひとしきり紙に何かを書き込んで、頷いた後、栄養剤と処方薬を俺に渡し、里に帰るから送って欲しいと頼んだ。勿論俺は一つ返事で了解した。


「……また来るね。」

「はい。ありがとうございました。本当に……すいませんでした。」


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