第24話 どんな雰囲気?
私とロエルは、2人で町の大通りにいた。ふと、この通りの、何メートルか先にある露店らしきものが私の視界に うつった。
私は隣にいるロエルに質問してみる。
「この先にみえているのは、何かの露店?」
「ああ、あの露店がみえるあたりで、この通りは別の通りと交差しているからね。広場も近いし、今の時期は蚤の市でもやっているのだろう」
……蚤の市って、フリーマーケットや骨董市みたいなものだよね。おもわぬ掘りだしものと めぐりあえることもあるという。
私の興味津々な様子に気づいたのだろうか。
ロエルがほほえんだ。
「洋装店に行く前に、蚤の市も見てみるかい?」
「うん! ロエル、私、この世界の蚤の市を見てみたい」
こうして私は、異世界トリップ2日目にして、ここ、ノイーレ王国で開催される蚤の市に行けることになった。
現代日本でなら、フリーマーケットにも骨董市にも行ったことがある私。この世界の蚤の市は、どんな感じなのかな?
期待に胸をおどらせながら、私はロエルと並んで蚤の市をめざした。
* * * * *
「わぁ、いろんなものが売られてるね……」
「そうだな」
感激のあまりロエルに話しかける私。
ロエルにとっては地元の光景がひろがっている、いつもとおなじ町の様子で、めずらしくはないはずなのに――。彼は私をみつめ、やさしく相づちを打ってくれる。
蚤の市は活気にあふれていた。
そして、大通りをロエルと歩いていたときも思ったけれど。
通りを歩いている人たちも、蚤の市にいる人たちも……。道ゆく人は、髪の色も目の色も実にさまざま。
茶色の髪、赤い髪、黒い髪、灰色の髪。
髪の毛の色だけでいったら、私の髪――黒にちかい こげ茶色の髪も、この町ではめずらしくないようだ。
ロエルのようにサラサラした見事な金髪をしている人は、めったにいないようだけど、金色の髪をした人自体なら通りに幾人かいた。
瞳の色はもっと多種多様。
ロエルはさっき、この町は港に近く、いろいろな国の人が行き交い、それで市場も店も活気があるのだと言っていた。
他の国の人たちも多いなら、私と同じように昨日、この国にやってきたばかりの人だって、今、私のそばにいるかもしれない。
私は、外国どころか、別の世界から飛ばされてきたんだけど……。
精霊さんに出されたクイズに答えた結果、精霊の持つ神秘の力とやらで。
(精霊さんにクイズを出題されたことはおぼえているんだけど、どんな問題をだされたのかは……。この世界に着いてからもらったチョーカー ――今も、私の首から はずれてくれない魔石のついたチョーカー ―― のせいで忘れてしまった。私、いったいどんな質問になんて答えたんだろう。……『チョーカーをつけることによって一時的に消えてしまった記憶は、やがて思いだす、忘れたままではないから、その点は心配するな』と聞いたものの――やっぱり気になるよ。あの精霊さんは、何のために私をこの世界にトリップさせたんだろ?)
そんなことを考えながら、前方の露店に目をやると。その店では、サイズもデザインもバラバラな鏡が、何枚も売られていた。
(……あ、鏡といえば――昨日、泊まらせてもらったロエルの館にも、素敵なデザインの鏡があったな)