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第15話 表向きは……って裏で何やってるの!

 ロエルの自室。

 この部屋の壁には、書斎におさまりきらなかったという本がびっしりと並んでいる。

 ロエルは、異世界からやってきた私(現代日本からこの世界にトリップしてきた私は、ここの国の人からみたら、異世界人になるんだよね、やっぱり)に、自分の仕事の助手にならないか? と言ってきた。


 ロエルがどんな職業についているのかは、まだ聞いていない。

 これから彼本人が説明してくれるところ――なのだけれど。

 私は、ロエルの部屋には、たくさん本があることから、こんな想像をしていた。


(もしかすると……ロエルは書籍に関わる仕事をしている、とか……?)


 私の予想は、この世界にトリップしてから、かなりの頻度ではずれている。

 だけど……今度の予想は、もしかしたら――。


 ロエルの言葉が気になり、向かいあわせになっている彼の瞳を、じっとみつめる。

 壁の本を背にして、ロエルも私の目をまっすぐにみつめ返す。

 私から目をそらしたりなんてしない。

 きっと彼は今から(いつわ)りなくどんな仕事なのかを話してくれるのだろう。


 決して、私がやってきた世界の、一部の求人募集の広告のように あまりにも実際の職場環境や待遇、業務内容と違うことを言ったりはしないはず……だ。

 私はこの世界にやってきてまだ2日目なのに、もう何度もロエルに助けられているし。……それは、あつまりづらい人材の確保のためだった――なんてことはないと信じたい。


「ねえ、ロエル。あなたのお仕事の助手――というか、そもそもロエルはどんな仕事をしているの?」


「オレの仕事は、王立魔術研究所に所属する魔術師だ。……表向きはな」


 魔術師! 実にファンタジー世界っぽい職業だ。私の予想はまたハズれたけど。

 部屋にあるたくさんの本は仕事で必要な魔術書だったりするんだろうか。

 そういえば、この世界の人類は魔術によって進化していったのだと――。昨日のロエルは言っていたな。


 でも、ちょっと待って! ロエルは今たしかに『表向きはな』なんて意味深なことを口にしたよ。

 それって――。


「表向きは魔術師ってことは、本当の仕事は違うっていう意味?」


「ああ、そのとおりだ」


 はっきり断言するロエル。

 表向きの職業はあるけど、裏の仕事こそ本業ってこと?


 魔術師の助手に誘われても、いったいどんなアシストをすればいいのか、謎だけど――。

 ロエルが募集中の助手っていうのは、表向きの仕事じゃないほうなんだよね、多分。


 ロエルはさっき「きみ自身の判断で助手になるかならないか決めてくれ」って言っていた。だけど――異世界だってことを差し引いても、ヤバめな仕事だったら、どうしよう……。


 あせりで心臓がバクバクいってきた私に、ロエルは告げる。


「恐がることはないよ、ユイカ。『表向きの仕事とは別の仕事をやっている』といっても違法なことや倫理に反することは何もしていない。そのことは信じてほしい」


 『信じてほしい』と言ったロエルの声はとても真摯(しんし)で、とても嘘をついているようにはみえない。

 私の中で彼は信じられるはず――という感情がめばえてくる……ような気がした。


――違法性もないし、倫理にも反していない――


 その言葉に私はホッと胸をなでおろす。裏社会とか闇社会とかの危険な仕事ってわけじゃなさそう。

 ……でも、でもね。

 ロエルの言う、この場合の違法とか倫理とかって――。


 この世界(・・・・)での

『法律を破っていない』

『倫理基準と照らし合わせて問題ない』

『公序良俗に反していない』

ってことでしょ?


 私が考える「これって法律的にアウトだよね」とか「それは人として、しちゃだめだよ」の感覚とは、だいぶズレている可能性もある。

 恐る恐る、私はロエルに聞いてみた。


「それで、ロエルの本当の仕事っていうのは?」

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