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第10話 こ、この世界の風習……?

 私が『ロエルはいったいどんな鳥に変身するのか』考えこんでいる姿が、彼にはおもしろく うつったらしい。


 ロエルの青い目が、いたずらっぽく光る。

 彼の瞳もさっきの翡翠の体も、青い宝石みたい。


 ……あ! あの鳥のキラキラした羽毛のブルーとロエルの目の色が似ていたのも、私がロエルは翡翠に変身したのかもしれないと思った要因かも……。

 彼は私をみつめながら、口角をニッとあげ、ささやいた。


「変身してみせようか。いま、ここで」


「『ここで』って、この薔薇園で!?」


 ロエルはうなずく。……でも。


「ちょっと待って、ロエル。私を乗せて飛べるくらい大きな姿に変身できるって昨日言ってたけど、それなら――」


「それなら?」


「ここに植えられているたくさんの薔薇が、へし折れちゃったりしない? ロエルだって薔薇のとげでケガしちゃうかもしれないよ」


 ロエルの変身をとどまらせようとする私を彼はじっとみつめている。

 青い瞳に私がうつる。


 ……ロエル?


 しばらくの沈黙ののち、ロエルが口を開いた。


「ユイカは心配性だな。ここで変身しても薔薇もオレも傷ついたりしないが……」


(えっ、『ここで変身しても薔薇もオレも傷ついたりしない』って、どういうこと?)


 人ひとり運べるくらい大きな鳥に変身できるのに……。今、私たちがいるこの場所は薔薇がびっしり咲いているのに……。


 ますます不思議に思う私にロエルが言った。


「変身するならいつでもできる。でも、きみはオレに蜂蜜のキャンディをくれようとしていなかったか」


 ロエルに指摘され、私は自分の手に彼にあげようと思っていた蜂蜜のキャンディをにぎったままだということを思いだす。

 さいわいキャンディは個包装。手にひっついたりなんてしてない。


「そうだったね、はい! これロエルにあげる」


 私は蜂蜜のキャンディをロエルに向かって差しだした……のだけれど――。

 1秒たっても2秒たっても、ロエルはキャンディを受けとってくれない。


 ……あれ?

 ロエルのほうから、キャンディをくれようとしてなかったかって聞いてきたのに。

 ぽかんとする私にロエルがささやいた。


「この国では、女性が男にキャンディを渡す場合、指で つまんだキャンディを相手の口まで運んでくれるのが一般的なんだが――ユイカがやってきた国では、ちがうのか?」


 はい? 一般的!? そんな大胆な渡しかたがっ!?

 私がやってきた21世紀の日本じゃ、一般的な渡しかたじゃないよ、そんなの!


 仲のいいカップルとか新婚さんが個人的にそういうことしている可能性はありそうだけど……。『はい、あーん!』って言いながら。

 でも少なくとも私は、元カレとだってそんなことしてないよ。


 その風習、本当にこの国で一般的な渡しかたなの!?

 私がこの世界の常識に (昨日ロエルからたくさん教えてもらったとはいえ) まだまだ うといから冗談を言って、からかって――って訳では、なさそう。


 ……だって。

 ロエルが私をみつめる表情は真面目そのもの。

 とてもふざけてこんなことを告げたようにはみえない。


(私、自分からとんでもないこと言いだしちゃったのかもしれない)

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