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第5話 薔薇の花咲く庭園へ……

 私はペピートにともなわれて、館の庭園へと向かった。

 渡り廊下をてくてく歩いていく。

 ペピートが案内してくれるという、薔薇が咲いている庭園のある場所は、昨日私が異世界トリップをした場所 (この館の中庭) から、だいぶ離れているそうだ。


「薔薇が咲いている庭は、館の後庭こうていです。もうそろそろ到着しますよ」


(後庭って、この場合、建物のうしろにある庭ってことだよね)


 ペピートは、この館の管理をロエルから任されている。

 そのことは、昨日、館の持ち主であるロエルから聞かされていた。

 だからペピートについていけば、方向音痴気味の私でも、無事庭園にたどりつけるだろう。

 現に もうそろそろ到着だというし。


 じきにたどりつくという安心感から、私の心に多少の余裕が生まれる。

 渡り廊下を歩きながら、館内の様子に意識を向けた。

 ここは地球とは違う異世界。

 この国ノイーレ王国は、かつてのヨーロッパと似た文化を魔術の力も取り入れて発展した国。


 昨日泊めてもらった客間とおなじく、渡り廊下の上品な雰囲気も、昔、私が本でみた西洋建築の邸宅のよう。

 うーん、やっぱり、立派なお屋敷だなぁ。

 しかもロエルが所有している館は、この館だけではないらしいし……。


(ロエルは、なんでそんなにお金持ちなの?)


 この館は元々ロエルのおじいさんの館。そして、ロエルのお父さんは存命でどこか別の場所に住んでいるらしい。

 昨日、私にからんできた黒装束の男たちがロエルに質問してきたよね。ロエルと私が婚約したことを、ロエルの父親は反対しなかったのかって……。


 反対も何も、ロエルが私のことを自分の婚約者だと言ったのは、黒ずくめの集団に取り囲まれていた私を助けるため。

 べつに私たちが本当に婚約したわけじゃない。


(……あ、まさかあの黒装束の人たち、ロエルのお父さんに告げ口とかしてないでしょうね?)


 もしそんなことされた日には、私を取り巻く事態はますます、ややこしくなってしまいそう。

 ただでさえ、私の首について離れないチョーカーについた、魔石と呼ばれる不思議な石の副作用をおさえる関係で、私はロエルに毎日100回、100日間、合計1万回もキスしてもらわなきゃいけない身の上になってしまったんだ。


 正直これ以上、面倒なことになってほしくない。ロエルが、異世界からきた人間 (私) を助けるために善意で私のキスの相手になってくれたおかげで、私に出始めていた副作用がおさまってくれたことには感謝してる。

 でも――。


 ロエルとのキスの件をまたしても思いだしてしまった、いまの私は……感謝の気持ち以上に、恥ずかしいって気持ちでいっぱいなんだ。

 ついさっきまで、館内の様子に目をやる余裕があったのに、羞恥心が ぶりかえしてしまう。


 ああ、どうしよう。庭園にはロエルがいるっぽいし。

 やっぱり……庭園に行くの、キャンセルしてしまいたい。


 ここまでつれてきてくれたペピートには、本当に悪いけど……。

 客間にもどらせてほしいと頼んでみようかな。


 でも、ペピートは、もうそろそろ到着って言っていた。

 いまさら断わるのは、さすがに気がひける。だけど――。


 私がああでもない、こうでもないと頭を悩ませていると。

 ペピートが、ふと歩みを止めた。


「さあ、到着しましたよ、お客様」


 あっ、ついちゃった……。

 まだまだ勝手のわからない館。ペピートの案内に黙々とついてきた私は、気がつけば館のサンルームまで たどりついていた。

 まばゆい太陽の光がふりそそぐ、このサンルームの先には、薔薇の花咲く庭園がひろがっている。


「……わぁ、すてきな庭園ね……!」


 薔薇が咲き誇る様子はあまりにも みごとだった。

 私はついさっきまで庭園にくることを躊躇ちゅうちょしてたはずなのに、感嘆の声をもらしていた。

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