第32話 いったいどんな結果になったの!?
~前回(第31話)までの約130字まとめ~
異世界トリップした私は不思議なうさぎティコティスからチョーカーをもらう。
チョーカーの持ち主には副作用がでる場合もあると判明。
私にはどんな副作用が出始めているのかティコティスが説明するのを、トリップ先の館の主、ロエルとふたりで聞いている最中なんだけど……。
「ティコティス、次の質問は?」
『……質問は、さっきでおしまいなんだ』
「え? おしまい……えっと、じゃあ――結果は、いったい……」
ティコティスは数秒間だまったあと、神妙な口調で言った。
『唯花、これから話すことを、落ちついて、よく聞いてね。となりにいるロエルも聞いていてほしい』
私はコクリとうなずき、ロエルは「わかった」と真剣な声で答えた。
(よく考えれば、ティコティスとはいま、音声のみの通信をしているから、返事は声にだすべきだった。ほんと、いまの私、熱っぽくて、頭が普段にくらべて全然まわってくれない……)
室内にティコティスの声が響く。
『唯花は、タイプCの副作用が出始めている状態だと思われるよ』
「――私に、タイプC……の副作用? それって、どんな症状なの」
『……――――……』
私とロエルに、話をよく聞くようにと言ったティコティスだったけど、言いづらい内容らしい。またも、だまりこんでしまう。
一瞬、通信が途絶えてしまったのかとも思ったんだけど、そうではないみたい。
なんというか、気配のようなものをチョーカーを通じて感じる。
「ねえ、ティコティス、私に出始めている副作用って、どんな症状? 気になってしょうがないの。お願い、言いづらいことだとしても教えてほしいの」
あせりのあまり、私の声がせっぱつまっていたせいだろうか。
ティコティスは、ようやく口をひらく。
『わかった、教えるね。でも、副作用はいろいろなものが報告されているんだ。まずは、唯花は発症しないであろうケースを言うよ。もう一度言うけど、いまから言う報告例は、唯花には あらわれない症状だからね』
……はい? ちょ、ちょっと待って。
私には、あてはまらないだろう症状をこれから説明するの?
なぜ? いったい何のため?
いまは一刻をあらそうときなのかもしれないのに。
熱っぽい頭が疑問でいっぱいになると、それだけでパニックになりそうだ。
――でも、こんなときだからこそ、落ちついて考えてみよう。
理由はわからないけれど、ティコティスにはティコティスの考えがあって、あえて、まずは私がたぶん発症しないケースを話すというなら――。
ここは、おとなしく話を聞くべきかも……。
となりにいるロエルも、チョーカーから聞こえてくるティコティスの声に、耳をかたむけている。
『副作用の症状を話すまえに、もう一度確認するよ。 《言葉を同時通訳してくれる石「コトノハの魔石」は、自分の意思で持ち主を選ぶ》……これは今日すでに、唯花に話したよね』
ティコティスが確認するように言った。
「うん、私、ティコティスから、たしかにそう聞いたよ。あと、コトノハの魔石は、『現在困っている人、このままだと困りそうな人の力になりたがる習性があること。この石の得意分野は言語だから、すぐに言葉を習得してしまう者よりも、習得に時間を要する者のところへ行きたがる』って話も、ちゃんとおぼえているよ」
『よかった。話がすすめやすい。魔石の副作用が発症してしまったタイプAは……もともと真面目に言語を学習する意欲が高く、でも新たな言語の習得に手こずっている者たちで……彼らは、魔石が緑に光りはじめると――』
光りはじめると――なんなの?
私は、タイプCらしいけど、そんなところで区切られると、とても気になるよ。
『タイプAは、言語に関する辞書をムシャムシャと食べはじめてしまうんだっ!』
食べる……? 辞書を?
だいぶまえに、そんな話を聞いた気もするけど。
辞書のおぼえたページを1ページずつ食べていくとか、なんとか。
まえに聞いたことはあるって言っても、体験談として聞いたわけじゃない。
私は、学校の授業中、先生が雑談で、昔の受験生の中には、そんなことをした人がいるとかいないとか……、もはや伝承のひとつとして話していた。
この話を聞いたの自体が10年ちかくまえのことになるから、いまのいままですっかり忘れていた。その程度の記憶だ。
それにしても――ムシャムシャって……。
たとえ1ページずつ食べるにしたって、栄養や衛生の面でどうよ、って感じなのに。ムシャムシャ食べはじめちゃうの?
ヤギさんみたいに? ヤギさんにだって、インクのついた紙は食べさせるべきじゃないって、聞いたことあるよ。
『そして、タイプBはっ……魔石が灰色に光りはじめると――何日も起きっぱなしで、自発的に猛烈な勢いで様々な勉強を続けた……と思ったら、今度はその反動で何日も眠り続けてしまう。そのくりかえし。ただ、起きているときの勉強の集中力はすごい。でも睡眠はちゃんととらないと、のちのち大変なことになっちゃうよ』
うん、うん。人間バランスが大事だものね。
『さらに、タイプCはっ……!』
ついにタイプC! 私が該当していると思われるタイプだ。
一気に緊張感が増す。
ドキドキしながら、ティコティスが話すのを待った。
私のとなりで待機してくれているロエルも深刻そうだ。
ティコティスは、急に『えっと、あの……その――』と、言葉をにごたものの、そのしばらくあと。ゆっくりと話し始める。
『唯花。言語をどう学んだら、効率がいいか。その人にとって効果的で、ストレスがたまらず、さらに定着した知識として身についてくれるか――その方法は、個人個人ちがう。あれは良くて、これはあれより良くない。そんな上下はないと思うんだ』
(ここまできて、また、前置!?)
ティコティスの前置は、もうちょびっとだけ続くのだった。
『(1).言語そのものに興味を持って学ぶ。
(2).言語以外のものに興味を持って、そのためには言語を習得する必要があるから言語を学ぶ。
どちらの姿勢も尊いと、ぼくは思っている』
たしかにそのとおりだと私も思うよ。でも……。
いよいよ、しびれを切らした私はティコティスに催促する。
「そろそろ、タイプCのことを……」
『ああ、そうだったね。ところで、外国語を話す者と恋人関係になってから、すごいスピードで、その言語をマスターできたって話を、ふたりは聞いたことはあるかい? 唯花、ロエル』
えっ? ティコティスは、なんでチョーカーをつけていない (だから体にチョーカーの副作用があらわれる心配はない) ロエルにまで質問をふるの?
不思議に思う私だったけど、ロエルはごく自然に回答する。
「オレは、わかるな。そういう事情で言葉をはやくおぼえるケースも充分あるだろう」
「……私も、聞いたことはあるよ。……でもティコティス、その話がチョーカーの副作用と、一体どんな関係が――」
話をさえぎるように、ティコティスが言う。
『実はね、オレンジ色だった魔石がピンク色になりつつあるということは――。魔石は、自分の持ち主である唯花に、この国で恋人ができることを求めているんだっ』
「私に恋人!? な、なんで、そんなことに……」




