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第21話 私たちが抱きあっていたのは ほんのわずかな時間なのに

 ラウレアーノ先生をお見送りするために館をでていったペピートは、まだ戻っていない。

 お見送りから、かれこれ一時間以上の時が流れた気がする。


(あれ? ペピートが先生をむかえにいったときは――。行きと帰りの時間を合計しても、数分程度だったはず……)


 さっきはお医者さんであるラウレアーノ先生を急いでつれてくる必要があったから、鳥に変身したまま帰ってきた。

 でも、今回は人の姿で徒歩で帰ってくる途中。

 だから、時間がかかってるとか?


――だとしたら。


 ペピートには私のせいで余計な仕事をふやしてしまったことになる。

 だけど、彼は笑顔で館を去っていった。

 ペピートにも感謝の気持ちでいっぱいだ。


 いっぽう、私といえば、あいかわらずロエルとふたりで客間にいるものの……。

 私はもう、ロエルに抱きついたりしてない。


 ソファで私たちが抱きしめあっていたのは、時間にしたら、ほんのわずかなあいだだけだった。……だけど。

 ロエルの硬い胸が、私の頬にも、耳にも、ふれ……。服越しに、彼の心臓の鼓動に気がついた、そのとたん――。


 私はなにやら急にドキドキしてしまい、あわてて彼の体から、パッと自分の体を離した。

 その動作はあまりに不自然で、ロエルを意識してることがバレッバレ……な、はずだ。


 無性に恥ずかしくなった私は、ますます不自然に小芝居をはじめてしまう。


「あっ、ロエル! ……こ、この部屋のテーブル、とってもすてきね……」


 ソファの向かいに置かれたテーブルが素敵なのは本当だ。

 この客間に通されたときから、ヨーロッパ的な意匠の、品のよいテーブルだと思っていた。

 でも私は、そのテーブルのすばらしさを――。ロエルの体にふれていると彼を意識しすぎてしまうから、彼から自分の体を離す口実に使ってしまう。

 ソファから立ちあがって、ロエルに背を向け、テーブルに見入るフリをしてしまう。


(まぁ、みればみるほどセンスのいいテーブル! ……って演技をしたいのに、上手くできない――)


 私がロエルを意識してしまったことに、彼自身は気づいているのか、いないのか――。

 ロエルもスッと立ちあがり、目のまえのテーブルについて説明する。


「これはクルミの木からつくられたテーブルだ」


 解説しているロエルは、私の背後に立ち、ごく自然に私の肩に手を置いてきた。

 その手つきは全然いやらしくなくスマートなぶん、よけいにこちらの心拍数はあがってしまう。


「……そ、そうだったのね……、このテーブルは木から。植物の木から つくられたのね。な、なるほど……。あ、私のいた世界でも、木からテーブルをつくること、多いなぁ……」


 うわぁ、完全にテーブルなんて、本当はうわの空なこと丸わかりの、すっとんきょうな声が自分の耳にも届いて痛々しいこと、このうえなし。


 どうか、いまの私を放っておいて。お願いだから! と思うのに、ロエルは私に話しかけてくる。


「ユイカは、この世界の家具に興味があるのか」


 ロエルの質問に、「え、えっと……」としか言えないでいたとき――。

 部屋の扉をトントンと叩く音がした。

 だ、誰!?


「ロエル様、ただいまもどりました」


 あ、この声はペピートだ。

 私はロエルとふたりきりという状況でなくなったことに、ほっと胸をなでおろす。

 館にもどってきたペピートは、裏口から人の姿で館に入ったようだった。


(やっぱり徒歩で帰ってきたから、時間がかかっちゃったのかな。たくさん歩かせてしまったとしたら、もうしわけない……)


 客間にあらわれたペピートと顔をあわせることができた私が、ペピートにお礼を言おうとしたとき。ロエルが私に話しかけてきた。


「ユイカ、さっきも話したが、この館はオレが普段生活している館ではないんだ」


 そういえば、ロエルはそんなことを話していた気がする。

 でも、なぜまたその話題をふるの?

 ロエルの真意がみえないまま、彼の言葉に耳をかたむける。


「そこできみに相談なんだが……。明日まで待っても、チョーカーの副作用が特にあらわれないようだったら――、オレといっしょに この館をでないか」


 ――え、この館をでる……?

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