6
ノートは研究所の中をひとしきり探し歩いたが研究所の中に人は見当たらなかった。
(……まずいな……気付かれていたか……?)
(……おい、どうするんだ?リオーネに危害は加わらないんだろうな⁉︎おい!お前を信じて大丈夫なのか⁉︎)
(騒ぐな!少し大人しくしてろ!)
ノートはその場で立ち止まった後何も言わずにただじっとしていた。
するとしばらく経った後ノートの方にレーザーのような光が反射してきた。
「ピーッ!」
「……そこか!」
ノートはレーザーの光をかわすと光が放たれた方向を見た。
すると白衣を着た男が2階のレーザーの発射システムの前に姿を現していた。
「クソッ!」
白衣の男は急いで発射システムを作動させてノートにレーザーを発射した。
しかしノートは悠々とレーザーをかわすと2階まで跳んであっという間に白衣の男の目の前まで辿り着いた。
「う、うわぁ!な、何なんだこいつ⁉︎」
白衣の男が驚いて腰を抜かし崩れ落ちるとノートは白衣の男に近付いて男の首を掴んだ。
ノートが手に力を軽く入れると男は息が出来ない状態になった。
そしてノートが手を離すと男はのたうち回りながら息を切らしていた。
「……グハァ!ハァッ!ハァッ!」
その様子を見たノートは笑みを浮かべながら男に質問した。
「おい、リオーネという娘はどこにいる?さっさと言え。言わなければお前の命は無いぞ。」
その言葉を聞いた男は呼吸を整えた後ノートの方を見て言った。
「ハァッ!ハァッ!リオーネ……?ま、待ってくれ!言う!だから少し待ってくれ!」
「さっさとしろ。ぐずぐずしていると本当にお前の命は無いぞ。」
「待ってくれ!ちゃんと話すから!ハァッ!ハァッ!……この研究所の中にはいない。城の地下の牢の中に閉じ込められている。この城にはここ以外にも地下へと繋がる階段があるんだ。おそらくその地下牢に閉じ込められていると聞いた事があるが……。」
「そうか……ではお前に案内してもらおうか?さっさと立て。」
「ちょっ⁉︎何故私がそんな事を⁉︎それに私はちゃんと話したじゃないか⁉︎もう勘弁してくれ!」
「言う事が聞けないのか?いいからさっさと立つんだ。」
「……ぐふっ!」
ノートが男の首を掴んで男を持ち上げると白衣の男はノートの体よりも高い所まで持ち上げられた。
ノートが男から手を離すと男は地面に落ちた後またのたうち回っていた。
「ゴホッ!ゴホッ!ハァッ!ハァッ!ま、待ってくれ!案内する!だから……殺さないで下さい!」
「最初からそう言っておけば良かったものを……そうすれば手荒な事を受けずに済んだのにな……さっさと案内しろ。」
「ハァッ!ハァッ!はい!分かりました!」
白衣の男は呼吸を整えた後急いで起き上がり、ノートに言われた通りリオーネが閉じ込められている地下牢へと向かった。
白衣の男の案内でノート達は地下牢へと辿り着いた。
地下牢に辿り着くと地下牢の中にリオーネの姿があった。
(リ、リオーネ!おい!あれが俺の妹だ!早く、早く助けてやってくれ!)
(……あの娘か……待っていろ。今助けてやる。)
ノートはリオーネが閉じ込められている牢の前まで行くと鉄格子を無理矢理横に引っ張った。
するとリオーネが閉じ込められている牢の鉄格子がみるみる横にこじ開けられていき、人が通れるスペースが出来上がった。
ノートは自分が牢の中に入る為に鉄格子を更に横に引っ張った後牢の中に入って行った。
「その様子を見ていたリオーネは驚いていたがノートの姿がロートだと気付くと不安がりながら話しかけてきた。
「……お兄ちゃん……?」
するとノートは笑みを浮かべながらロートのふりをして言った。
「ああ、そうだ。お前を助けに来た。早くここから逃げるぞ。」
「……う、うん。分かった。ちょっと待って……。」
リオーネはその場から立ち上がった後ロートの方を見た。
リオーネは先程の信じられないような光景を見ていたのでノートに恐怖を感じていたが、見慣れた兄の姿だったからかその恐怖も次第に和らいでいき、大人しくノートの言う事に従っていた。
しかしリオーネのスピードに合わせるのが面倒だと思ったのか突然リオーネの方を見て言った。
「おい、私に捕まれ。」
「……え?」
すると突然ノートがリオーネの体を抱き抱えた。
「お、お兄ちゃん⁉︎一体どうしたの⁉︎」
するとノートはリオーネを抱き抱えたまま物凄いスピードで走り出した。
「きゃー!ちょ、ちょっと待って!お兄ちゃん!」
だがノートはリオーネの言う事を聞こうとはせずそのまま走り続けた。
ノートはリオーネを抱き抱えて走り出すとあっという間に城の外まで辿り着いた。
(さぁ、お前の望みは叶えてやったぞ。これからどうするんだ?)
(あ、ああ……とりあえずルヴァンの人間に見つからない場所まで移動してくれ。その後リオーネを自由にしてやってくれ。)
(……そうか、分かった。ではそこまで行くとするか。)
するとノートはまた物凄いスピードでルヴァン王国から離れて行った。
「きゃー!待ってお兄ちゃん!早い!一体どうしたっていうの⁉︎」
ノートはリオーネの事など意に介さずにルヴァン王国から離れて行った。
そのスピードは凄まじくルヴァン王国からノートの姿はあっという間に見えなくなった。