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ノートを封印したレイド達はクララの手によってマナサ高原の山頂まで送り届けられた。
そしてマナサ高原に辿り着くとクララがレイド達に話しかけてきた。
「……皆さん、本当にありがとうございました……本当に皆さんには何とお礼を言ったら良いのか分かりません……。」
するとレイド達が笑いながらクララに言った。
「よせよ……俺はあんたには感謝してるんだ。あんたのおかげでこうやって元に戻る事が出来たんだからな……。」
「……レイドさん……。」
「……私もだよ!今回の事が無かったら私はずっとあの女の言いなりになるところだった……だから私は今回の事があって良かったって思ってる。」
「……わらわも別に構わんぞ。こうして無事に戻って来る事が出来たんじゃ。そんな堅苦しい事を言うのは無しにしようではないか。な?」
「……ええ、ありがとうございます。皆さん。それにジェンドさんも……ありがとうございました。」
「……よせよ、僕は当然の事をしたまでだ。それに僕はさっさと城に帰りたいんだ。……まぁまた困った事があったら助けに来るよ。その時にまた会おう。」
「ええ。……皆さん、本当にありがとうございました。皆さんはこれから新たな生活が始まると思いますがどうかお元気で……皆さんの幸せを心より願っています。」
「ああ、ありがとう……それじゃここから下りるか?あんたとはもう会う事は無いかもしれないけど元気でな……これまで色々ありがとな。」
「ええ……私の方こそありがとうございました。皆さん、どうか新たな人生を頑張って下さい。」
「ああ、分かった。それじゃあな。」
「はい……さようなら。勇敢な精霊の使い手達。」
クララとの話を終えるとレイド達はマナサ高原の山頂から地上へと下りて行った。
一方、その頃リオーネはノートに怪物に変えられていた者が人間へと戻っていくところを目撃していた。
「……何なの⁉︎怪物が人間に変わっていってる……?……‼︎」
すると何かに気付いたリオーネは急いである場所へ向かって走って行った。
リオーネがその場所に辿り着くと建物の近くでゼックスが中の様子を伺っていた。
ゼックスの事に気付いたリオーネは急いでゼックスの下へと駆け寄って行った。
「ハアッ!ハアッ!……ゼックス!ゼックスじゃないの⁉︎私よ!リオーネよ!」
「ん……リオーネ⁉︎リオーネ様!よくご無事で!一体どうやってここまで来られたのですか?」
「ええ……お兄ちゃんに助けてもらったの。それで随分前にルヴァンからは逃げ出す事が出来たわ。……それよりゼックス、さっき怪物に変えられた人が人間に変わっていくところを見たの!もしかしたらノートが倒されてお兄ちゃんが元に戻っているのかもしれない!」
「何と!……レイド達め……ついにやったか……。」
「……どうかしたの、ゼックス?レイド達って一体誰の事なの……?」
「ええ……話せば長くなるのですが……私の仲間の精霊の使い手達です。彼等は私と別れる前に精霊を全て集めてノートを倒しに行ったのです。もしかしたら本当にノートは倒されたのかもしれません。」
「そうなの⁉︎……それじゃあ……もしかしてお兄ちゃんは本当に元に戻っているのかもしれないの……?」
「ええ……彼等はとても信頼の置ける人物でした。彼等ならきっとノートを倒したに違いありません。さっ、リオーネ様。ロート様を迎えに行きましょう。元に戻って誰もいないとなるとロート様も悲しまれますよ。」
「ええ……分かったわ。それじゃあお兄ちゃんの所へ行きましょう。ゼックス、付いて来てくれる?」
「はい、もちろんです。」
ゼックス達がロートの所へ向かうと、ロートが廃墟の奥の部屋で目を開けて座っていた。
するとゼックス達の存在に気付いたロートが慌てて話しかけた。
「……ゼックス?……リオーネ!お前達何でここへ……?……!あいたた……ダメだ、体中が悲鳴をあげてやがる。」
「ふっ……ロート!元に戻ったのか⁉︎もうお前の近くに行っても大丈夫なのか⁉︎」
「あ、ああ……何故だか分からないがさっき俺の意識の中からノートが消えてな……まぁこんな事言って良いかどうか分からないが俺はあいつに感謝してるんだ……あいつがいなけりゃリオーネを取り返す事は出来なかっただろうからな……。」
「そうか……まぁ無事で良かったよ。お前が元気そうでなによりだ。」
「ああ……すまなかったな、ゼックス。心配かけちまって……。」
「なに、構わんさ。」
するとロートの様子を見ていたリオーネがロートが元に戻ったと思ったのか、泣きながらロートの胸に飛び込んでいった。
「うわぁー!お兄ちゃん!お兄ちゃんなの⁉︎本当に元に戻ったの⁉︎」
「いてて……リオーネ、まだ体中が痛いんだ。勘弁してくれよ……。」
「うわぁー!お兄ちゃんだ!本当にお兄ちゃんだ!」
「ああ……ただいま、リオーネ……。」
「うっ!うん……お帰り、お兄ちゃん……。」
そして、しばらくの間リオーネはロートの胸の中で泣き崩れていた。
そしてリオーネが泣き止んだ頃、ロートがゼックスに言った。
「すまなかったな、ゼックス……お前はもうデトワールとは関係無いっていうのに巻き込んじまって……。」
「ふっ……別に良いさ。それよりこれからどうするんだ?どこか行くあてはあるのか?」
「ああ……もうデトワールは滅んじまったからなー……まぁリオーネと一緒にどこか探してみるよ……お前は?これからどうするんだ?」
「ふっ……ああ、俺はしばらくお前達に付き合ってやるよ。何せ世間知らずの元王子様とお姫様だ。危なかっしくて2人だけじゃ行かせられないだろ?」
「ああ……お前はもう俺達と関係無いってのにすまないな……もし嫌だったらお前1人でどこかに行ったって構わないんだぞ?俺はもうお前の事を止める事が出来ないからさ……。」
「なに、気にするな……お前達が2人だけでも大丈夫だと思えたらその時考えるよ。」
「ああ、そうか……じゃあ行くとするか。リオーネ、行こう。今度はもうゼックス意外は助けてくれる奴は誰もいないんだ。しっかり2人で生きなきゃな。」
「……うん、大丈夫。私はお兄ちゃんと一緒ならどんな場所でもちゃんとやっていけると思う……。」
「そうか……じゃあ行くか。良し、とりあえず今晩泊まれる宿を探さないとな……そこでゆっくり休みながら明日からどうするか考えよう。」
「うん!早く行こう、お兄ちゃん。私早く行ってゆっくり休みたい。」
「ああ、分かった。ちょっと待てよ、リオーネ。まだ体中が痛いんだからよ……。」
こうしてロート達は新しい人生を探しに旅立っていった。
一方、レイド達はマナサ高原を下りて地上へと辿り着いていた。
「さてと!それじゃあここでお別れだな。お前達は自分の国に戻るんだろ?」
「ああ……わらわは戻るぞ。そなた達とは短い付き合いじゃったが良き仲間になれたとわらわは思っておる。まぁ何かあったらいつでもアコラまで来ると良い。そなた達ならいつでも歓迎するぞ。」
「そうか……ありがとな。ジェンド、お前はどうするんだ?」
「……僕も国へ帰るよ。まぁ僕は大体城の中にいるからいつでも遊びに来て良いよ。……まぁ、色々すまなかったな……いつでも遊びに来いよ、本当に……。」
「ああ、分かった……ありがとな……エイル、お前はどうするんだ?お前はもうエポルタ修道院には戻らないんだろ?どこか行くあてはあるのか?無いんだったら俺がお前を途中まで送るよ。しばらく経ったらお前はこれからどうするか決めれば良い。それで良いだろ?」
「……。」
エイルはしばらく黙ってしまったが、勇気を出して自分の本心を言った。
「……私はレイドと一緒に行く!私もレイドと一緒に旅をする!……その……もし迷惑じゃなかったらなんだけど……一緒に付いて行っちゃダムかな……?」
「……ああ、俺は別にそれでも構わないさ。お前が行きたい場所が決まったらその時そこに行けば良い。じゃあとりあえずエイルは俺と一緒だな。良し!じゃあ行くとするか?皆んな、元気でな。またいつか遊びに行くからよ。その時またゆっくり話そうぜ。」
「ああ……それじゃあわらわも帰るとするかの……皆、達者での。わらわの顔が見たくなったらいつでもアコラへ遊びに来い。歓迎するぞ。」
「……じゃあ僕も行くよ。元気でな。僕も城でお前達の事を待ってるからいつでも来いよ。……じゃあ僕はもう行くぞ!」
「ああ……じゃあな、ジェンド。」
「ああ!元気でな!」
「……ジェンド、また近いうちに遊びに行くからね!それまで元気でね!」
「……ああ、お前もな!じゃあもう行くぞ!」
「……行ってしもうたか……それではわらわも行くとするかの……2人共達者でな。元気でやれよ。」
「……ああ、お前もな。」
「あの!ありがとう、レイラさん!また近いうちに遊びに行きます!」
「うむ!いつでも来ると良い!歓迎するぞ!それではわらわは行くぞ!元気でな!」
「はい!あの……さようなら!」
「うむ!達者でな!」
レイラとジェンドは挨拶を終えると自分の国へと戻って行った。
「さてと……じゃあとりあえず今晩泊まれる宿を探すか?なに、どうするかはこれからゆっくり考えれば良い。良し、じゃあ行くとするか?」
「うん!これからよろしくね、レイド。」
「ああ、よろしくな。」
こうしてレイドとエイルは2人で旅立って行った。
果たしてこれから先2人はどんな生き方を選んでいくのだろうか?
レイド達がノートを封印した事でノートに怪物に変えられた人々は皆、元の姿に戻った。
しかし怪物に変えられた人々は皆、元には戻ったが怪物になる前には無かったある記憶が残っていた。
その記憶とは地球がこれから先朽ち果てていく姿だった。
そして、かつてノートに怪物に変えられていた人々は1人の呼びかけで皆が集まり出し、皆で集会を開いて世界中にノートに姿を変えられていた事を明かして記憶の事を話す事にした。
そしてノートに姿を変えられなかった人々に、これから地球が無事である為にはどうすれば良いかを一緒に考えるよう働きかけていった。




