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エイル達を乗せた竜巻はマリーの下へと到着した。
マリーの下へ辿り着くとエイルはマリーの方を見た後、意を決した表情でマリーに言った。
「……私はもうあなたの言いなりになんか絶対にならない!私はお母さんとちゃんとするって約束したから……だからあなたの事だけは絶対に許さない!」
「何ですって⁉︎……エイル、あなたもしかして私にそれを言ってるの⁉︎」
「そうよ!私はあなただけは絶対に許さない!あなたを許すような事はしない!」
「くっ……!……。」
マリーはエイルの異変を察したのかエイルの言葉にすぐには返事をせず、その場でしばらく何が起きたかを考えていた。
(……まさかあの精霊が何か言ったの?……だとしたらまずいわね……今ここにいるのはエイルの仲間達ばかりだわ……。)
するとエイルが間髪入れずにレイドの方を見て言った。
「レイド!その人を殺して!あなたは私の仲間なんでしょ⁉︎その人はお母さんを……私のお母さんを殺したんだ!」
「殺す⁉︎……あ、ああ……ちょっと待ってくれ。ちゃんと説明してくれ。まずはそこからだ。」
「くっ……!」
するとマリーは突然走り出し、その場から逃げて行った。
エイルはマリーを追うように必死にレイドに訴えた。
「レイド!早くあいつを追いかけて!あいつが私のお母さんを殺したんだ!早く追いかけて!早く!」
「……お、おお……追いかければ良いのか?分かった。」
そしてレイドがマリーを追いかけようとした時、シルフがレイドの事を止めて言った。
「……もう良いよ、エイル。君はあの人から解放されたんだ。……あの人を許せない気持ちは分かるけどそれはやっちゃいけない事だよ、エイル。……君がどれだけあの人の事を許せないとしてもエミーはそんな事は望んでないと思うよ。エミーは君に幸せになって欲しいんだよ。……エイル、どうしたら良いか分からないかもしれないけど今は前を向いて進む時だよ。エミーもきっとそれを望んでる。」
「……でも……あいつは……!……私はあいつの事だけは許せない……!」
「……エイル……ゴメンね……私は君のパートナーだから……君が間違った事をしようとしたら止めなくちゃいけないんだ。……ゴメンね、エイル。君のその願いは叶える事が出来ないよ……。」
「……うっ!うっ!」
エイルは悔しさのあまり泣き崩れて、その場に座り込んでしまった。
その様子を見ていたレイドがシルフに何があったかを聞いた。
「……何があったんだ?詳しい事を教えろよ?」
「……うん、ちょっと待って……エイルに聞いてみるから……エイル、話しても良いの……?」
「うっ!うっ!……う、うん!……。」
エイルからの了解を得てシルフは何があったかをレイド達に説明し出した。
「……そうか……そんな事が……。」
「うん……でも私はエイルがそんな事をするのは反対だから絶対に止めるよ。そんな事をしてもエイルは幸せにはなれないよ……。」
「うっ!うっ!」
「……。」
レイド達はエイルにかける言葉が見つからず、ただ黙ってエイルが泣き止むのを待っていた。
一方、その頃マリーは必死にエイル達から逃げる為に走っていた。
「……くっ!……もうあいつには利用価値は無いみたいね……これからどうすれば良いというの……?……あいつ等がノートを倒すのに期待するしかなさそうね……とりあえずどこかに身を隠さないと!あんな奴等に捕まりでもしたら本当に殺されてしまうじゃないの……!」
マリーはエイル達がいる場所から離れる為に、必死に走って逃げて行った。
そしてエイルは泣き止むと立ち上がって皆んなの方を見て言った。
「……皆んな、待たせてゴメン……早くノートを倒しに行こう。私ならもう大丈夫だよ。」
「……本当に大丈夫なのか?無理しなくていいんだぞ?」
「……うん……てもきっとお母さんでもそうしたと思うから……。早くノートを倒してノートに怪物にされた人達を救い出してあげなきゃ。私なら大丈夫……行こう。」
「……ああ、分かった。……じゃあマナサ高原に向かうとするか?精霊も全員揃ったしいよいよ光の国とやらへ行くんだな……。」
するとエイルの様子を見ていたシルフがエイルに語りかけた。
「……エイル、君はちゃんとあの人から解放された。これで君の試練は終わりだよ。……何だか悲しくなっちゃったね……でもこれで私は本当に君の精霊になれたんだね。……エイル、あと少しだから一緒に頑張ろうね……。」
「……シルフ……ううん、大丈夫……。ゴメンね、心配かけて。本当にあと少しだね。早くノートを倒して一緒に皆んなを救おう。」
「エイル……うん、分かった。これからよろしくね、エイル。」
「うん、よろしくシルフ。」
エイル達の話が終わるとレイドが気を取り直して話し始めた。
「……さぁ、じゃあマナサ高原に向かうか?あそこに行けばもうノートの所へ着くのはすぐなんだろ?皆んな、準備は良いか?何か地上でやり残している事があったら今のうちにやっとけよ。」
「……わらわは大丈夫じゃ。すぐにでも出発しても構わんぞ。……それにノートをさっさと倒してアコラに戻りたいんでな……行くのなら早い方が良いじゃろう。」
「ああ、そうか。……お前等は?どうする?お前等の準備が出来たらもうマナサ高原に出発したいんだけどな……。」
「……私も大丈夫だよ。いつでも出発して良いよ。早くノートの所に行こう。」
「……。」
他の全員が準備が出来ていると言ったがジェンドだけはすぐに返事をしようとはしなかった。
しかし、ジェンドは全員の視線が自分に向けられている事に気付くと半ばヤケになりながら言った。
「……分かった、行けば良いんだろ⁉︎行くよ!さっさと行って終わらせるぞ、こんな事!」
「……ああ、分かった。……じゃあ全員マナサ高原に向かうって事で良いんだな。……あ、そうだ。ゼックス、お前はここから先は進めないんじゃないか?どうするんだ?」
「……ああ、俺は1度ロートがいる場所まで戻ってみようと思う。もしお前達がノートを倒せたらロートがどうなるか心配なんだ。……まぁお前とは色々あったけど楽しかったよ。皆んな、頑張れよ。」
「……ああ、お前もな。まだお前の仲間の中にはノートが入っているんだろ?気を付けろよ、ゼックス。くれぐれも無茶はしないようにな……。」
「ああ、分かってる。……じゃあ俺はこれからロートの所に向かってみる。皆んな、達者でな。……レイド、色々世話になったな。」
「ああ……俺の方こそお前には色々迷惑かけちまった……ありがとな、ゼックス。またどこかで会おうぜ。」
「ああ……じゃあな、レイド。またどこかで会おう。」
「ああ……じゃあな、ゼックス。」
ゼックスは話を終えるとロートがいる廃墟に向かう為に去って行った。
そしてレイド達はついにノートを倒す為にマナサ高原に向かう事になった。
「さぁ皆んな、これからマナサ高原に向かうぞ。ここから先はもう後戻りは出来ないからな。気合入れていけよ。」
「うむ、そうじゃな。……では参ろうか!待ってろよ、ノート!今から成敗してやるからの!」
「私も大丈夫だよ。早く行こう、レイド。」
「……ああ、そうか。……お前は?やり残した事は無いか?もう戻って来れないかもしれないぞ?」
「……しつこいなー、僕も良いって言ってるだろ!さっさと行くぞ!そのノートを倒して僕はさっさと城に帰りたいんだ!」
「ああ、そうか……分かった。じゃあマナサ高原に行こう!あそこに行けばもうノートはすぐそこだ!」
ついに全ての精霊を集めたレイド達は、クララに言われた通り精霊達と一緒にマナサ高原の山頂を目指して歩き出した。
果たしてこれから先どんな事がレイド達を待ち受けているのだろうか?
そしてレイド達は本当にノートを倒す事ができるのだろうか?




